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竹内佑
2016年9月14日 21:11
■前編はこちら。■次の日の朝、メイコはバイトに行く前にエントランスの集合ポストを確認してみたが、ご飯粒一つ落ちていなかった。念のため202号室のポストの扉を軽く指で叩いてみたが、中からは何の反応もなく、空のようだった。バイトから帰ると、マサノブが部屋の真ん中で腹筋をしていた。買ったばかりの黄色と白のラグマットにマサノブから滴り落ちた汗が染み込んでいく。「今日のご飯は?」腹筋から
2016年9月13日 19:54
――少しでも、ましになるなら。メイコは、そんな風に希望を抱いて、引っ越しを決めた。新しい街で、新しいマンションで、新しい仕事を始めて。全てを新しくすることにより、自分は生まれ変わるのだ。私にはそうする権利があるし、また、そうするべきだ、とも思っていた。岐阜の山奥の実家で母親と二人で二週間過ごし、顔に巻いた包帯が取れるようになった頃、メイコはスマートフォン一台で新しい家と町を手に入れたの