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スタートアップの失敗は何が原因?実際に起業した人に聞いてみる【本当にあったスタートアップ失敗談 vol.02】

Studio ENTREでは、起業を目指す方に役立つ記事を発信しています。今回はあえて「スタートアップのリスク」に焦点を当て、スタートアップで実際に起きた失敗談を取り上げます。

中学生から「起業」を志し、自分の好きな分野でスタートアップを立ち上げたというAさん。しかし最終的にはサービスをクローズし、会社自体もたたむことに。現在は別の会社で業務をしながら、新たな挑戦の準備をしているというAさんに、いま起業を検討している人へのアドバイスを伺いました。


三人で始めた音楽業界でのスタートアップ

ーーどのようなサービスを提供されていたのでしょうか?

WEB上で、音楽アーティストがデジタルグッズを自由に販売できるサービスです。

ーーサービスを始めたきっかけはなんですか?

当時の音楽業界は、音源からの収益が減少している状況でした。その結果、アーティストはレコード会社から十分な制作費をもらえなくなっていたんです。

そのため、ファンがアーティストを直接支援できるサービスがあったらいいなと思いました。株式投資のように「可能性があるアーティストに対して、ファンが早いうちから投資をできる」というのがコンセプトでした。

ーー何名で会社を立ち上げたのでしょうか?

自分を含めて3人です。資金調達が進んでから、メンバーを増やしていこうと考えていました。

中学の頃から起業するのが夢だった

ーーなぜスタートアップを始めたいと考えたのでしょうか?

中学生の頃、卒業アルバムの将来の夢に「小さい会社の社長」と書いてたんです。大学を卒業して会社員になったときも、「将来独立するための近道は何か」を基準に決めました。

それから、人生の大きな目標として「世界をよりよいものにしたい」という思いがあります。自分のとれる選択肢の中から、もっとも世の中に与えるインパクトが大きいものを選んで勝負する、という選択をずっとやっていて、その中のひとつが「起業」でした。

ーースタートアップの立ち上げはハードで、心が折れることも多そうです。

起業というのは、一人でやることではないんですね。立ち上げメンバーや株主の人たちが、つらいときには支えてくれますし、そういうメンバーを集めるのも起業家の重要な仕事の一つだと思っています。

ーー起業をしようと決めた際、成功する自信はありましたか?

根拠のない自信がありましたね。自分なら絶対にやれるだろうみたいな(笑)。

実際にやってみてるとうまくいかないこともたくさんありましたが、「きっとどうにかできる」と信じていました。


続けるためにはモチベーションの管理が重要

ーー開発されていたのは音楽業界むけのサービスですが、音楽業界というマーケットで起業することの難しさなどがあればお聞きしたいです。

市場規模の問題はあります。音楽業界は市場規模が約1兆円だといわれますが、それは物販やイベントなども含めた合計で、音源にしぼるとあまり大きくありません。
「音楽業界の中でも、特にどの部分をねらっていくか」はよく検討するべきだと思いました。

あとは「誰から出資を受けるか」もよく考えるべきだと思います。人脈が重要な業界ですし、人脈のおかげで達成できたことも非常に多かったです。

ーーサービス開始からしばらくして、クローズに至ったとお聞きしていますが、きっかけはなんだったのでしょうか?

主要KPIが思うように伸びなかったことです。
一度勢いを失ったサービスを立て直すのは本当に難しいことでした。

ーー具体的にはどういった点が難しかったのでしょうか?

モチベーションの管理ですね。売上やユーザー数が伸びないと、メンバーのモチベーションが下がってしまうんです。

創業者自身も「このサービスに自分の時間と労力を使っていてよいのだろうか?」という悩みや迷いが出てきますし、創業者以外であればなおさら迷いが強くなります。

ーー数字がうまく伸びなかった要因はなんだと思われますか?

想像ですが、大きな原因のひとつは「サービスがわかりにくかった」ことだと思います。

サービスの新規性を重視しすぎて、ユーザーから見てわかりにくいサービスになっていました。使ってくれているアーティストやファンの評判はよかったですが、ライトユーザーにまで裾野を広げることができませんでした。

ーーライトユーザーに広げられなかったとのことですが、マーケットとプロダクトのどちらに要因があったと思われますか?

両方に課題があったと思います。ただ、「マーケットの選び方にミスがある」と言うことは、つまるところプロダクトの方向性が定まっていないということなので、結局はプロダクトに課題があったと考えています。

ーー最終的にサービスをクローズされていますが、クローズにあたってどういう点に気をつけられていましたか?

ユーザーや関係者に対して、丁寧に説明をし、理解していただくということです。

サービスをクローズするということは、期待してくれていた方を少なからず裏切ってしまうことです。なので、誠実に対応し、関係性が悪化しないようやっていくしかないと思いました。


スタートアップには「課題を磨き込む」ことが必要

ーースタートアップの立ち上げからクローズまでの経験を踏まえて「今ならこのやり方で起業する」と思う方法はありますか?

最初にプロダクトを作るのではなく、少額でもユーザーからお金をもらうサービスにすると思います。

いまもう一度同じことやるなら、「小さなサービスでユーザーの課題を見つけて磨きこみ、より大きなプロダクトに落とし込む」いうやり方を取ると思います。そうすることで、プロダクトの形がより鋭く定まると思います。

ーースタートアップの経験から得たものや、現在に生かされていることはありますか?

得た物はたくさんあります。精神論的にはなってしまいますが「自分自身でリスクをとって挑戦する」ということでしか学べないことは非常に多かったです。

起業前と起業後ではすべての意思決定や行動が変化しましたし、起業を実際にしたことで実感を持って理解できるようになったことも多いです。

ーー現在の状況について教えてください。

現在は別の会社で、音楽にこだわらず新しい挑戦をしています。

お客さんの課題解決をお手伝いしながら、課題を磨き込んでまたプロダクトづくりにチャレンジしたいと考えています。

ーー新しいチャレンジに向けてご準備をされているんですね。

そうですね。ただ「音楽」という縛りは外しました。
世の中に価値を届けたいという大きな目的は変えず、課題に合わせたプロダクトを開発したいと考えています。

ーー起業を通じてたくさんの貴重な経験をされたと思いますが、その経験を踏まえて「スタートアップに人に向いている」のはどういう方だと思いますか?

目的が見出せる人だと思います。目的があると、追い込まれた時にも耐えられると思います。

逆に、能力による差異はそんなに大きくないと思いますね。自分が死なないためのお金を稼げる能力があれば、どんどん起業してやりたいことをやってみればいいと思います。

ーー最後に、現在起業を考えている方へのアドバイスをお願いします。

起業を考えている方にアドバイスするとき、いつも言っているのは「まずはお金を稼ごう」ということです。
自分が提供したい課題解決やサービスで、小さくてもいいからとにかく早くお金を稼ぐのが重要だと思いますよ。

ーー本日はありがとうございました。


スタートアップスタジオ・Studio ENTREでは、起業に興味がある方を随時募集しています。初めてのことばかりでわからないのが起業の怖さ。荒削りなアイデアもかまわないので、ぜひ一度ご相談してみてください。




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