本気でグラミー賞に挑む。【山内直己氏/第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.7】
第7回は、LIFESOUND, INC.代表取締役/SWEET SOUL RECORDSの山内直己氏を講師にお招きし、「日本人アーティストの海外アプローチ&経験談」についてお話しいただきました。
大まかな流れ
・自己紹介
・SWEET SOUL RECORDSについて
・Nao Yoshioka氏について
・日本と海外(アメリカ)の違い
・海外マーケティングの学びと実例
―PHASE 0~3まで
・音楽デジタルマーケティングへの期待
・音楽デジタルマーケティングへの課題と実情
・日本の音楽デジタルマーケティングの現状と課題点
・受講生に伝えたいこと
〇自己紹介
まず、ユーモアあふれる自己紹介をしていただきました。大学時に、音楽で起業することを決意し、IT系ベンチャーに就職した山内氏の経歴をご紹介いただきました。
山内氏にとってのターニングポイントとして、高校時代のSTEVIE WONDERとの出会いがあります。現在は、Nao Yoshioka氏と共に、本気でグラミー賞を目指しているとのことです。
〇SWEET SOUL RECORDSについて
SWEET SOUL RECORDS(スウィートソウルレコード)は、音楽の持つ本来の魅力を、世界基準の視点と確かなスキルで世の中に訴えかけていく、本物志向のソウルミュージックレーベルです。現在20ヵ国以上のアーティストやマネージメントオフィスにつながりがあります。
SOUL OVER THE RACE (魂の音楽は人種を超えていく)
SPREAD REAL MUSIC(リアルな音楽を拡散していく)
というコンセプトを掲げています。
〇Nao Yoshioka氏について
SWEET SOUL RECORDS様所属アーティスト、Nao Yoshioka氏についてご紹介いただきました。海外で活躍されているNao Yoshioka氏との出会いは、山内氏にとって非常に重要だったといいます。
〇日本と海外(アメリカ)の違い
音楽と生活の距離に着目すると、日本とアメリカには大きな文化差異があります。
例えば、アメリカでは、教会のような宗教というコミュニティがあり、さらに充実した音楽教育、手軽に音楽が演奏できる環境などがあるため、日本と比べて音楽と生活が密接しています。
また、2020年ジャンル別アルバム売上シェアについて日米で比較すると、アメリカではR&Bが10%を占め、ジャンルとしては4位の売り上げになっています。
一方、日本ではJ-POPや演歌、アニメ楽曲が中心です。また、日本の邦楽と洋楽の比率はおよそ9:1だそうです。国内の洋楽比率はここ10年で縮小傾向にあるといいます。さらに、2020年ストリーミング売り上げに関しては、日本の589億円に対し、アメリカは一兆円にのぼります。
このような分析も踏まえ、アメリカ最大の魅力は「音楽の多様性・ミドルグラウンド」だといいます。さらに、グラミー賞など、ミドルクラスのアーティストでも注目を得られる仕組みが作られているとのことでした。
〇海外マーケティングの学びと実例―PHASE 0~3まで
ここから、Nao Yoshioka氏との歩みを基に、海外マーケティングについてご紹介頂きました。各フェーズごとのポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。
PHASE0(2012~2013)
アーティスト性の確立・制作及びデヴェロップメント
<ターニングポイント>
・2012年、USラジオで「Make the change」がAir Playされる。
・2013年、マーケティング調査として、デビュー前にUSツアーを敢行
<手法・学び>
・綿密なキャリア設計
→本人との対話ルール決めで嘘ない無理ないキャリア設計
・現地に赴いて入念なマーケ調査
→アメリカに通用すると実感
PHASE1(2013~2015)
<ターニングポイント>
・自国でも収益確保とファンベースの獲得
・アルバム「The Light」 日米リリース
・「Rising」日本メジャーデビュー
→この時期から、CMタイアップやブルーノートでの異例のステージデビューを果たす
・独自のクラウドファンディング実施
<手法・学び>
・日本での収益確保方法の確立→クラウドファンディングのマッチングがいい
→資金を稼ぎながらUSに行く手法を確立する
・海外でのポテンシャル
→プロモ的にもジャンル的にも日本ではスケールしなさそう
・レーベル契約でアメリカのスタンダードなマーケティング方法を学ぶ
→PR、ラジオプロモーター雇う文化
<課題>
・広告費が不十分
・フェスなどを最大限生かしきれなかった
・デジタルマーケティングの効果が不明
→PR、ラジオプロモーター雇う文化を知る
PHASE2(2016-2018)
アメリカへの遠征、本格活動準備・アルバムThe Truthをリリース
<ターニングポイント>
・本気でグラミー(世界)を目指す。
→グラミーノミネートがアメリカ各地でのツアー動員が一番の近道だと気づいたから
・サブスク解禁
<2018年USのマーケティング>
・PR
・Urban Radio Marketing
・Digital marketing
・Grammy marketing
→Urban Radio Marketing VS Digital marketingがあった。
Digital marketingとしては、
・Social Media Campaigns
・Contents Marketing
・Brand Collaborations
を実施。
この結果、2018年に米国ローリングストーン紙レビューで「非の打ちどころのないネオソウル」と称され、ビルボードUACチャートにて32位獲得。
<手法・学び>
・アーバンラジオマーケティングは効果的
→ビルボードチャートに直結している
→権利収入 + Shazam + YouTubeに 明確なリアクション
<課題>
・デジタルストリーミング強化必須
・ラジオマーケティング後の導線設置できていなかった。
→リスナーが使うプラットフォームに配信ができてなかった
・デジタルマーケティングの効果不明
→ツールや施策は理解したが、分析は?
PHASE3(2018-2021)
アメリカ移住:本場での挑戦/アルバムUndeniableをリリース
<ターニングポイント>
SPOTIFYで突然USのプレイリストに。
<注力したDigital marketing>
・DSP Optimization
・Growth Campaigns
・Social Optimization
・Owned Media Optimization
→やるべきこととそのツールがそろった感覚があったといいます。
〇日本の音楽デジタルマーケティングの現状と課題点
音楽業界自体にIT・デジタルに強い人材の流動が少ない→デジマ会社には音楽マーケットのノウハウを保有している方が少ないといいます。
また、SNSや広告に頼ることは、各プラットフォームの変更に大きく依存してしまうため、オウンドメディアをいかにコントロールできるかが重要だといいます。
今後、デジタル市場はまだまだ成長すると考えると、当たり前のように音楽業界で、よりデジタルやマーケティングの知識が必要になり、別市場の人からもマーケティング人材を雇う時代がやってくるとおっしゃっていました。
〇受講生に伝えたいこと
山内氏は、デジタルだけでなく、リアルで人に会って様々な情報を得る(=グラウンドワーク)を何よりも大事にしているそうです。
アーティストが個性を守って、サステナブルに活動できる手法を手に入れ、日本から世界で活躍するアーティストの軌跡を作りたいと仰っていました。
また、山内氏にとっての音楽マーケティングとは、「アーティスト(表現者)が自己表現をするために作る作品、その情報を届け、顧客がそのアートを最大限に理解し、楽しめるようにする」ことだといいます。
ビジネスのための音楽ではなく、アーティストが創ったものの市場を発見し、創出する音楽ビジネスを大切にしてほしいとのことです。
〇次回予告
次回9月19日は、グリッジ株式会社代表取締役の籔井 健一氏を講師にお迎えし、「#君の虜に~=summertimeから紐解く海外マーケティングについて」についてお話しいただきます。
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