見出し画像

戦略”的”PRで、終わらないニュースを作る。【高野修平氏/第一期音楽マーケティングブートキャンプレポート vol.13】


第十三回は、株式会社トライバルメディアハウス Modern Age 事業部事業部長 高野 修平氏を講師にお迎えし、「音楽マーケティングにおける戦略PR」についてお話いただきました。

大まかな流れ
・Modern Ageについて
・戦略PRについて
・戦略PRの実例
・戦略「的」PR
・ケーススタディーTHE NOVEMBERS―
・まとめ

〇Modern Ageについて
高野氏が事業部長を務められている、Modern Age事業部についてご説明いただきました。事業内容としては、
・音楽やエンタテインメントでブランドをデザインする
・マーケティングの力で、エンタテインメント業界を活性化させる

という二つがあります。

〇戦略PRについて
”ヒット作が売れたわけ”を考える所から始まりました。
誰がも知っているアーティストは、なぜ世の中ゴトになったのでしょうか?

○○ゴトには三つ種類があり、
・自分ゴト
・仲間ゴト(仲間事の段階では、話題が散在しているため、仲間外には同様に伝わらない)
・世の中ゴト(世の中誰でも知っている状態)

があります。
そして、この世の中ゴトを起こす方法が”PR”であるといいます。

ここで、エンタテインメントがムーブメントになったかの判断基準についてのお話がありました。判断基準の置き場所としては、ニュースの切り口が多様になった瞬間だといいます。一つのコンテンツに対し、あらゆる切り口からニューズが派生した瞬間が、ムーブメントの始まりです。つまり、仲間ゴトを超え、世の中ゴトになった状態なのです。

また、PRとは、パブリックリレーションズの略であり、パブリシティではないことを頭に入れておいてほしいとのことでした。

ここから本題である戦略PRについてです。
戦略PRとは、仕掛けるPRであり、空気をつくるという発想からきています。商品力や宣伝力の問題ではなく、「商品が売れるための空気ができているか?」の差にあると言います。
                                   つまり、重要なのは、
「話題化」するか?「世の中ゴト化」するか?=みんなの口の端に上る力があるかどうかです。それを実現するために、戦略PRによる「空気づくり」を行います。


ここから、商品を売るために創り出したい空気=カジュアル世論について詳しくご説明します。まず、カジュアル世論が持つ効果としては、

・新たなトレンドへの気づき                         ・新たな価値観への気づき                       ・新たな問題への気づき

の三つがあります。つまり、この三つの要素を意図的に組み込み、仕掛けたものが、戦略PRと呼ばれているのです。


〇戦略PRの実例
戦略PR実施のキーポイントとして「関心テーマ」が挙げられます。
関心テーマとは、
・対象となる商品の便益や社会に貢献できるポイント
・インフルエンサーのそれぞれの立場における関心事
・消費者の関心事とメリット

三つを繋ぐ「架け橋」の様なものだといいます。

そして、カジュアル世論を生み出す時に必要な三要素としては、
・おおやけ(公共性)
・ばったり(偶然性)
・おすみつき(信頼性)

があるそうです。

まとめると、戦略PRとは、PRファーストでそのあとに広告がくるということが定石であるとのことです。

しかし、音楽業界で戦略PRを執行した例は皆無だったといいます。その要因としては、ファクト調査に時間がかかることや企業体力が必要となることが考えられるといいます。
そこで、戦略PRには及ばなくても、戦略「的」PRだったらできるのではないかと考えたといいます。

〇戦略「的」PR
ここから、戦略「的」PRのポイントをご紹介します。

・終らないニュースを作る
・コンテンツの開放/二次創作
・ドライブの越境
・口コミの創出
・社会記号化(事象を一言でまとめたもの)

これらを実践した事例として、高野氏が手掛けたTHE NOVEMBERSの戦略「的」PRについてご紹介いただきました。

〇ケーススタディ:THE NOVEMBERS
一か月間で15個の戦略的PRを行ったといいます。施策を連続展開することで、終らないニュースを作りました。その結果、THE NOVEMBERS史上最高の売上を記録しました。

一部抜粋してご紹介すると、

・tobirdによる全面カラージャケット:既存のアルバムジャケットは白黒で一貫していたが、初めてカラーを入れた。→ファンがターゲット。
・漫画家、上條淳士先生によるアー写:ボーカルに影がないなど裏設定を作り、口コミを生んだ。→両者のファンがターゲット。
・音楽と人で、レターアドの展開:音楽雑誌に、手書き広告を展開。少しでも目に引くような仕掛けを作った。→コアファンと雑誌読者がターゲット。
・ミュージックビデオ「romance」―parallel ver―公開
:MVのノーマルバージョンと区別して、媒体のIPによって色が変わるMVを公開。話題になり、再生回数の増加にも繋がった。攻めたPRによって、バンドの楽曲とは違う観点で興味を持ってもらうことができた。


〇まとめ
人が何かを信じる一つの基準として、同じ情報に三回出会うことがあげられます。15の施策では、コアファンを大事にしながらも、周囲のファン未満の人々とバンドの情報を三回出会わせるような仕組みを作ったといいます。

戦略「的」PRとはカジュアル世論をつくりだすことであり、おおやけ・ばったり・おすみつきの三要素が必要です。商品を真ん中に置くのではなく、規定されたターゲットの中で世の中の関心ゴトを生むことが重要であるということを意識してほしいとのことでした。

そして、本流以外のニュースが生まれた時こそが、エンターテインメントにおけるムーブメントのはじまりであるといいます。エンタテインメントに対しては戦略PRが難しいため、戦略「的」PRで、終らないニュースをつくり続け、UGCの開放や口コミの促進を行っていくと確率を上げていくことができるとのことです。

〇次回予告
次回10月31日は、いよいよ最終回となり、各チームの最終発表を行います。これまでの学びを活かし、多様なマーケティング施策に挑戦してきた受講生の皆様の発表に期待したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?