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【物件探し⇒内見】夢の防音室を作るまで Vol.3

どうも、こんにちは。

オーディオライター、音響エンジニアの橋爪徹です。
ハイレゾ音楽制作ユニットBeagle Kickでは総合プロデュースも勤めています。

前回は、防音室を欲しいと思った理由や、設計会社へ依頼するところまでを書きました。
設計を担当したアコースティックラボさんには、防音室を作りたいお客様の代表的な事例を特別寄稿いただきました。(多謝!)

このnoteでは私が防音室を作るまでを書き残すことで、オーディオファン・映画ファンにとって部屋を作ることを身近に感じて欲しいと思っています。
「別世界の話」「金持ちの道楽」……といった、ある種突き抜けた行為だと思わないで欲しいのです。連載を終える頃には、その意図が伝わっていたら本望です。


防音室を作る。まずは物件を探そう

物件を選び始めたのは、2016年の12月くらいから。引っ越したのは2017年6月なので、スピード勝負でした。
もちろん、どんな値段の物件がどの地域にあるのかは遙か以前から、それこそ2016年はずっと@nifty不動産を見ていたような気がします。
実際に今の物件を決めたのは翌年の3月でした。融資他もろもろの手続きが確定となるまではさらに日数を要しました。
もともと春頃の引っ越しを目指していた私は、遅々として進まない不動産の手続きに「こんなに面倒(複雑)なのか!」と面食らったものです。

まず、防音室を作るに当たって私が想定した物件条件は以下の通りです。

・防音室の広さは最低でも6畳程度
・レコーディング業務を前提とした最寄り駅からの距離(徒歩10分以内)
・住宅ローン減税の適用となる物件

趣味の防音室であると同時に仕事部屋でもあります。
予算がない中でもこの3点は譲れませんでした。

自分が購入できそうな物件を探しながら、掲載された間取り図を見ていきます。
不動産に詳しくなくても「自宅と共用する」という大前提があれば、ある程度チェックポイントは絞られてくるものです。
私の予算ですと、築30年近辺で物件を探すことになり、その時代のマンションは似たような間取りが多くなります。

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画像提供:アコースティックラボ

例えばこんな間取です。窓側にリビングダイニングがある縦長の住まいです。リビングの間口が半分で片側は洋間や和室になっている物件も多いです。

よい響きの部屋を作るには部屋の寸法比が大事なので、正方形の防音室にならないようにリフォームするエリアを考えます。
防音室を作ることで、どの程度生活空間を破壊するかも想像します。
「外に洗濯物は干しに行けるかな?」「採光は十分かな?」「寝る部屋は確保できるかな?」「リビングダイニングの空間を圧迫しないかな?」

画像の物件の場合、バルコニー側の洋室を防音室にするイメージを想像してください。おそらく、部屋の広さを確保するために、リビングの一部に壁が張り出すような感じになるでしょう。入り口のドアは洗面室の近くに設置されると思われます。


いろいろ見ていく内に最低でも3LDKじゃないと生活に無理があるなぁと思うようになりました。
外部の方を招いて収録などをする場合、防音室に案内するまでどの程度生活空間を見せなければならないかも重要です。(リビングを見せないと防音室に入れないような物件は多かったです)

そして、複数の候補から絞り込んでいくときは、理想的な防音室を作るために以下をチェックしていきます。
とても重要なのは階高です。階高というのは、マンションの床下コンクリートから天井コンクリートまでの距離のこと。これは間取り図では分からないので内見などで推測します。(場合によっては実測)
窓を設ける場合の施工イメージもチェックです。私の部屋はコスト面と遮光面から窓を潰してしまいましたが、窓を作る場合は形や幅も現在の窓をベースに考えることになります。(マンションのリフォームでは既存の窓は勝手に交換できないのが普通です。)
また、2つ以上の部屋を解体して1部屋にする場合は、解体と廃材撤去費用も多目に掛かります。予算が足りるか、慎重に吟味する必要があるでしょう。
なるべく築年数が新しい方がいいですね。元来の遮音性能が優れています。
防音室に入るドアは十分な幅を確保出来るかも要チェックです。機材や家具が運び込めるかの分かれ道になります。(私の部屋はとても狭いドアになりました。理由は追って解説!)

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ということで、いろいろ細かなチェック項目を列挙してきましたが、私の場合はとにかく予算がなかったので、選択肢はほぼ無かったというのが実際の所です。
偶然、よい立地にいい感じの間取りの3LDK(横長!)が見つかり、初めて行った内見で「これは運命的な出会いだ!」と確信しました。

いざ、内見!防音室作るならここをチェック!

初めての内見は、2017年2月の上旬。場所は都内某所の閑静な住宅街。小雪の降る寒い日でした。
私は早めに現地に入り、あちこち生活圏を巡りながら物件を目指しました。
マンションの周りがどういう環境なのか、付近に大きな音を出す工場などがないかチェックします。鉄道との距離や実際の音も確認します。建物裏も含め近隣の様子は念入りに見た覚えがあります。

アコースティックラボの担当さんも内見に同行いただけました。
スケジュールが合ったのは偶然でしたが、正直とてもありがたかったです。
事前に不動産の資料をお渡しし、図面を見てもらって当日に望みました。

一般的なマンションの内見については全部省略します。
ここでは防音室のために行う内見を細かく見ていきましょう。

まず階高を推定するために風呂場の天井裏を開けてコンクリートから床までの距離を測ります。各部の高さを合計ないし差し引きして階高をおおよそ推定します。
次に分電盤の位置を確認。偶然にも防音室に近い場所に存在しました。とても運がいいです。専用回線でオーディオグレードのケーブルを使う場合、コストが抑えられます。

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右上に1個空いている回線(ブレーカー設置箇所)を発見しました。ここに防音室のオーディオ回線を設けることができそうです。

防音室を施工する部屋は、玄関から廊下を通って一番奥の約7畳の部屋。

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窓の外をチェックするアコースティックラボの担当者

隣接するウォークインクローゼットは簡易録音ブースにしたいと伝えていました。

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約2畳くらいのウォークインクローゼット。このハンガーを撤去すれば1人の録音は十分できそうです。

本当は、間取り図をお見せしたいのですが、家バレ対策ということでご勘弁ください。

施工する部屋は以下の項目を見てもらいました。

・間取り実寸(間口や奥行きなどの他に、コンセントを開けて壁コンクリートがどの位置にあるか)
・窓の位置、設置高さ、ガラスの仕様(ペアガラスorシングルガラス、ガラスの厚み)
・窓の外:冷媒管の配管位置、エアコンの室外機はどこにあるか、周辺の暗騒音、近隣住戸との距離
・給気排気の経路
・天井にある梁の位置の推定、壁や床を叩いて内部構造を推測

この他にもエレベーターや通路周り、工事車両を停める場所があるかなど様々な項目をチェックしてもらいました。
実にスムーズに無駄なく進めて下さって、さすがプロだと感心してしまいました。防音工事だけではなく、一般家屋の建築についても詳しいのでいろんなトリビアが聞けました。

私のケースでは人が居住している中古のマンションでしたが、物件選びや内見において他のケースはどうなるのでしょうか。
アコースティックラボに伺ったところ、コラムをご執筆いただけました!

=====ここから=====

上記のような調査は、中古、新築の区別なく行っている項目ですので、ここでは新築マンションの場合の一般的な進め方についてご紹介します。
・多くの場合、防音工事ができるのは専有部分の引渡を受けた後ですが、後で工事をしやすいように事前にデベロッパーと交渉をしたり、間取りを変更したりといったことができるマンションもあります。とはいえ、そうした変更ができるのは設計の早い段階であることがほとんどですので、防音室を考えている場合、なるべく早めにその意思を担当者に伝え、対応してもらえるかの確認が必要です。
・建物工事が進むと内覧会という機会があります。そこで物件の見学ができるわけですが、これに同行させていただくことで、より細かい事前調査ができます。
・内覧会が終わって、詳細な見積と図面を作成、その後に契約となります。
番外:タワーマンションの場合
タワーマンションは建物全体の重量を軽くする目的から、同じフロアーの戸境壁がRCではなくボード壁であることが一般的ですが、遮音性能としてはRCに比べて重量が軽いために不利です。上下階はRCスラブですので、遮音性能的には同一フロアー<上下階フロアーという関係になります。
またタワーマンションはスプリンクラーをはじめとした消防設備との絡みが生じることが多く、そうした設備の移設等で意外と費用がかかることがあるので注意が必要です。

=====ここまで=====

そんなこんなで初回の内見は終了。
生活に関する評価はまずまずな感じで、もうこの物件でいいかなと帰りは考えていました。

物件が決まれば、アコースティックラボに設計を進めてもらう段階に入ります。
いわゆるラフスケッチみたいな内容で、売買契約前の段階から進めていくことになりました。
設計が具体的になることで、何を実現し何を妥協するのか、予算も含め厳しいジャッジが始まることになります。

次回は、設計を進めていった過程を詳しくお届けします。
秘蔵の設計図面もバンバン公開します!ご期待下さい!


技術監修:アコースティックラボ

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