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宅録erがPC買い換えの時、何に気を付けるといいか考えてみた

どうも、オーディオライター・音響エンジニアの橋爪徹です。

ライターは2015年から、音響エンジニアは2006年からやっております。ポートフォリオは、こちらの記事をご覧下さい。

宅録する人が本当に増えましたね。私もclubhouseをきっかけに宅録のナレーターさんに数多く出会うことが出来ました。声優さんは、私が声優を目指していた2000年代から既にネット声優という言葉があり、ボイスコーポレーターという呼称もあって、存在は確立していました。

宅録をやる方の間で、マイクやオーディオインターフェースは話題になりますが、パソコンはそれほど話題になっていません。宅録に適したパソコンってどうなのでしょうか。

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​映像編集や3Dゲームをやるには、これ! みたいな広告はよく見ますよね。写真編集(RAW現像)などもお勧めパソコンがプッシュされていることもあります。対して、宅録に優しいパソコンは、強く推しているメーカーさんは見かけません。DTM向けのPCを選べばいいの? オーバースペックじゃない?

その辺り、PCにそんなに詳しくない私が15年の経験や浅い知識を元に、「普段使いもする宅録PC、こんな条件ならよいのでは?」というメモをまとめました。いちおうPC販売員(VAIO)を1年ちょいやってました。自作は一回だけ経験があります。自作の世界はマジで難しすぎます。コアな領域に踏み込むと全部宇宙語です。

とりあえず、Windowsノートパソコンについてまとめています。Macは末尾にまとめました。

サイズ・重さ

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自宅で使うなら、15.7インチは必須です。16インチや17インチでもいいでしょう。解像度は、フルHD必須です。ただし、4K解像度とかになると、画面の大きさによっては文字が小さ過ぎてDAWの表示が見えにくいことがあるので、実物確認をお勧めします。液晶は、ノングレアがマストです。テカテカ光る光沢液晶は最近は少なくなりましたが、たまにあるので注意です。

重さは、自宅使用なら2~3kgくらいまでは許容範囲かと。ドライブ無しのモデルなら、2.1kgとかでも十分な性能を保有しているマシンが増えてきましたね。持ち運びなら1.5kgは切りたいところです。1kgを切ったモデルは、スペックに不安があります。

CPU

最近、AMDのRyzenも性能が向上してコスパがとても良くなっているので、インテル一択とは言えなくなってきていると思います。とりあえず、個人でやる宅録ならCPUはCore i-7を推奨します。Core i-9までは必要ないと思います。コア数は、4~8コアのタイプがいいと思います。

低電圧版や省電力版は避けましょう。マシンパワー不足の心配があります。種類は、CPUの型番を見れば分かります。末尾のアルファベットでシリーズを判別できます。最近だと、末尾にUとかYが来てるものは、避けた方がいいと思います。なので、HかHQですね。

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もちろん、Core i-5とかで動かないわけじゃ無いですよ。DAWの推奨スペックを見て、それより十分な余裕のあるCPUを選んだ方がPCそのもののサクサク感が長く続きます。Windowsなんて、ネットを日々やってるだけでいずれは重くなりますからね。また、十分なCPUパワーがあれば、レイテンシー(音声が遅れて聞こえる現象。ハードウェアバッファやサンプル数を小さくすればレイテンシーを短く出来るが、マシンパワーが無いと音切れが起きる。最悪、録音や再生が強制中断する)の影響を緩和できることがあります。

CPUはあとから交換できないので、できるだけハイスペックなものを選びましょう。

メモリ

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CPUが頭脳だとしたら、メモリは作業机の広さです。すごい頭のいい人が作業をするときに、目の前の作業机が広かった方がいろんなデータを並べて作業できますよね。だからメモリは大きい方がいいのです。

音楽をやるわけではない。多くのトラックを使ってマルチトラック編集するわけでもない。音声宅録のためのメモリはどのくらい必要?

それほどハイスペックは必要ないと思います。Windows10を余裕を持って快適に動作させるために必要なメモリは8GBなので、さらに余裕を持つなら16GBでしょうか。16GBなら2K映像の編集も問題ありません。

ということで、メモリもあとから増設できない機種も最近は多いから、予算があれば32GB。無難に行くなら16GBです。

HDD/SSD

CPUが頭脳、メモリは作業机の広さ。では、HDD/SSDは? 倉庫の大きさと答えるようにしています。倉庫から資材を取り出してきて、作業机で作業する。倉庫が広い方が、たくさんのプログラムやデータを保管できます。

昔は、CPUとメモリさえハイスペックにしておけば、SSDは最低限の容量でもよかったのですが…… 今は事情が違います。CPUを変えたのと同じくらい、処理によってはそれ以上の恩恵を受けられる技術革新がSSDに起こりました。(写真はHDD)

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すなわち、倉庫からプログラムやデータを取り出したり仕舞ったりする、その速度が爆速になったのです! 具体的には、インストールが早い。保存が早い。アプリの起動が速い。ファイルの読み出しが早い。単一のアプリ使用においてサクサク動作を担うのは、これまでCPUが大きなウエイトを占めていました。それがSSDの速度が飛躍的に伸びたことにより、大きな影響力を持つようになったのです。

数値で示しますと、これまでのSSDはせいぜい読み込みが400~500MB/s(1秒当たりの読込み速度)だったのが、2500MB/sとかに変わったのです! これは体感で分かるくらいの違いを見せてくれます。

とりあえず、M.2 NVMe SSD(NVMeのM.2 PCI Express接続のSSD)を採用しているパソコンを選べばOKです。具体的にリード(読み込み)とライト(書き込み)の数値が書いてる場合がありますが、それが大きい方がお勧めです。書いてない場合でもM.2 NVMe SSDであれば、普通のSATA接続のSSDより遙かにお勧めです。(ファンノイズについては末尾に)

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※マウスコンピュータ― G-Tune H5のカスタマイズ画面より抜粋

AMDのCPUを採用した一部のパソコンは、NVMeのM.2 SSDで最速を実現しています。自作PCの世界では、リード7GB/s越えの製品なんかも登場しているから驚愕です。あのPS5のカスタムSSDが5.5GB/sですから、いかに高速か分かりますね。インテルのCPUを採用したノートPCですと、2.5~3.5GB/sが実行速度として多いです。インテルも既に11世代目のCPUでPCIe Gen4に対応していますから、今後自作の世界で先行して7GB/sのSSDなどが使用可能になり、ノートPCにも追って対応が広がってくると思います。そうなったらAMDとの差は一気に縮まるでしょうね。

ちなみにMacは、詳細な仕様を明らかにしていないので、リードとライトの数値を見て、それを頼りに検討することになります。おそらくMacBookProは、PS5とかと一緒でカスタムSSDなので詳細を公表しようにもできないのだと思います。

なお、NVMeのM.2 SSDは、発熱がSATA接続のSSDに比べて大きくなっています。それは、そのままファンの高速回転に繋がります。実際、私のPCもNVMeのM.2 SSDモデルに買い換えたら、ファンが普段から少しうるさくなりました。なので、宅録の場合は、ファンノイズが悪化すると思って下さい。それを受け入れても、メリットがあると私は思います。PCをマイクから離す工夫をして、ぜひNVMeのM.2 SSDを使ってみて欲しいと思います。

離せと言われてもどうにもならん! 外部録音が多いので、目の前にPCが無いとダメ!、という場合はNVMeを避けるのも選択肢です。

グラフィックス

基本的には、CPU内蔵のグラフィックスで問題ないと思います。つまり気にする必要はありません。3Dゲームやる人は、ゲーミングPCのようなRTX2060とか入ってるモノが今なら売れ線ですかね。僕は3Dゲームはほとんどやりませんが、映像編集を嗜むので、エンコード時間の短縮のためにグラフィックスが高性能なPCを導入しました。CPUだけじゃなく、専用グラフィックスが映像のエンコードを手伝ってくれるんです。

接続端子/カードリーダー

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USB-CとUSB3.1端子が搭載されてるモデルがいいですね。最近は、USB-C対応のオーディオインターフェースも増えてきました。レイテンシーが少ないことを謳っている製品もあります。USBの端子は、なるべく多く搭載されている方が便利です。ハブで増やしてもいいですが。あと、左右にそれぞれUSB3.1端子(or USB3.0)があるモデルがベターですね。宅録だと、機材の配置がUSB端子の向きに左右されることがあるので。

無線マウスで1つ、iLokで1つ、ライセンスを保存したUSBメモリで1つ、コントロールサーフェスで1つ。僕の場合は、4つのUSB端子は必須です。自宅の1台のPCで使うなら、USBにライセンスをアクティベートする必要はないですが、外部で録音する場合に備えて、USBにライセンスを保存してそれを差し替えるだけでどのPCでも使えるようにして置いた方が便利です。

カードリーダーは、あると便利です。ポータブルレコーダーからデータを映す際にいちいちUSBケーブルで繋ぐのは面倒です。なのでSDカードリーダーがあると、挿すだけでデータをPCにすぐコピーできます。

バッテリー

自宅で使うなら、バッテリーは気にしなくていいです。自宅専用はスペック重視にして、バッテリーの持続時間は二の次三の次。停電時のバックアップ電源くらいに思えばいいでしょう。

外部で録音するときは、電源を取れないこともあるので、バッテリー持続時間は、公称値の6~7割程度だと思って、現場で足りるかを計算しておきましょう。

ファンノイズ

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WindowsのPCはMacに比べてファンノイズがうるさい物が残念ながら多い印象です。Macも最近のIntelモデルは、ファンがうるさいのですが、それでもWindowsに比べればマシだと思います。Windowsのやっかいなところは、余計なプログラムが裏で動いていて、それを停止できないことがある点ですね。特に何も重い処理をやってないのに急にファンが高速で回り始めます。こればかりは、買ってみないとなんとも言えません。店頭では、うるささの度合いが分かりません。同一ブランドPCの相対比較ならメーカーのサポートに聞いてみるのもいいでしょう。

MacBookPro

Macなら、MacBookProが宅録には最適です。

13インチでも16インチでも目的に応じて選びましょう。画面が大きい方が作業がやりやすいので、外にあまり持ち出さないなら16インチですね。

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今はCPUがインテルからM1チップに置き換わる過渡期なので、DAWも対応が遅れていたりします。最新OSには対応したけど、M1チップには対応してないとか。Rosetta 2機能ならM1チップでも動くというDAWもあります。USB4の端子が少ない今のM1 MacBookPro13インチは、正直お勧めしにくいです。個人的には、Macを選ぶなら、もう少しM1 Macが出揃って、DAWも正式対応してきたら、検討するといいと思います。

まあ、長い目で見ればMacBookProは宅録にお勧め。というか、プロが使っているマシンはほとんどMacです。DAWのショートカットもMacで覚えているので、Windowsになると途端に作業が遅くなる人もいます。僕もWindowsでは、DAWは使いません。Macの方が安定しているし、変なエラーも少ないし、安心を買っている感じですね。オーディオファイルの変換も最近は、MacでXLDを使ってやってしまいます。僕は、DAW以外のアプリはWindowsと言う風に使い分けていますね。オーディオ的な観点からは、Macは余計な処理をしてないので音がいいという人も居ますが、Windowsも音楽アプリ次第で音は激変しますし、一概には言えないと思います。


おわりに

いかがだったでしょうか。少しでも参考になることがあったら嬉しいです。

貴方のPC選びが面白く有意義な物になることを祈っています!


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