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仕事と素描料理

素描料理家の宮本しばにです。
創作野菜料理家として仕事をはじめてから今年で22年になります。
紆余曲折の道を歩みつつ、「素描料理家」と名乗るようになったのは2020年頃から。2021年まで9年間、手仕事の台所道具の販売をしていましたが、料理家という原点に戻り今は、執筆、ワークショップ(スローペースですが)を通して「料理の真意」について研究をしています。

オフィシャルサイトはこちら。


素描料理家って何?と思われる方もいらっしゃると思いますので、素描料理のことを少しお話します。

素描料理のこと


この言葉は、私が作った造語で、ひと言で表すのはなかなか難しいのですが、3つが基本です。

Back to the basic. (基本に立ち返る)
Simplicity(簡素に)
Creativity(創作性)

となります。

見えないところをみようとする(味、音、香)
余計なことをはせずに、飾らないひと皿(作為がない)
ごまかさない
簡素に努める
今ここにある食材を生かす
自身でMy料理文化を作っていく

料理って画を描くようなものだと思うんです。

絵画を描くときは、まずデッサン(=素描)をしますね。鉛筆で骨格を描き、そこから絵の具で色をつけていきます。鉛筆で描いた画は見えなくなってしまうわけですが、この見えない部分をどう描くかで、完成画は決まると言っても過言ではありません。デッサンは絵画の土台ですから、とても大切な工程です。

白洲正子さんが「たしなみについて」(河出書房新社)で、こんなことを語っています。

素描は、いわば絵画の骨とも云える様な、地味ではえない仕事です。しかも、油絵に向かう場合、何としてもまず目にふれるものは色であり、まず描きたいものも色であります。それは、私達が結果だけを見て、その背後にある地味な生活、長い長い歴史を忘れるようなものなのです。

料理も同じことが言えると思います。「目には見えない部分」が本当は大切で、裏(台所)でやったことの結果が表(ひと皿)に表れる。裏の見方が「おいしい」を作り出すわけです。

「表裏一体」という言葉があります。
表と裏、この相反する2つは密接につながっていて切り離せないことを意味しますが、まさに料理は表裏一体。食卓に並んだ料理は今の自分の鏡と言っていいでしょう。

台所仕事の小さなひとつひとつをちゃんと素描していくこと。それがおいしさにつながります。

例えば、味噌汁を素描していくとしましょう。
味噌汁の「base(土台)」は何だと思いますか?

だしと味噌がbase(土台)となりましょうか。とすると、
だしをどう取るか、味噌は何を選ぶか、そういうことを素描していきます。おいしい味噌汁にするにはどうするか...それを考えるんです。顆粒とかインスタントに頼らず、自分だけの味噌汁を作るということです。下手くそでいいのです、最初は。でもそこで諦めない。素描を続けます。するとそのうちに「おいしいポイント」が分かってきますから。できあがった味噌汁は自分だけの「宝」となりますね。

たったひとつでも自分の手で「おいしいもの」を作ったときは、大げさと思うでしょうけれど、世界が変わってしまうこともあります。

みんなそれぞれ好みが違う。=レシピがすべてではないということ。そして、料理はルールなんてないのだから、自由であるというのも忘れてはいけないと思います。
だからレシピに書かれたことを鵜呑みにせず、自分でおいしい味にしていこう!という提案が、素描料理です。

料理を素描するってことは、今日は何を作ろうか 〜 ひと皿になるまで、を素描しながら、おいしくなるにはどうしたらいいかを考え、手を動かすこと。

素描料理については、アノニマ・スタジオのウェブ連載「宮本しばにの素描料理」をお読みください。

素描家・しゅんしゅんさんとの対談をはじめ、台所で考えたことや、毎回レシピを載せています。


また、2023年1月に「無印良品 暮らしのラジオ」に出演させていただきました。
素描料理のこと、台所道具のこと、森の暮らしと料理、など、3回に渡って話をしています。よかったらぜひ、お聴きください。

下記それぞれの再生ボタン(右端)でお聴きいただけます。


今までの出版物

焼き菓子レシピノート(旭屋出版)


野菜料理の365日(旭屋出版)


野菜のごちそう(旭屋出版)


おむすびのにぎりかた(ミシマ社)


野菜たっぷり すり鉢料理(アノニマ・スタジオ)

↓しゅんしゅんさんの素描画が装丁に!



台所にこの道具(アノニマ・スタジオ)



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