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制球がイマイチな試合での藤浪晋太郎の投球

 これまで藤浪晋太郎選手のデータをあれやこれやと分析してきました。結構な量になったのでこれまでの分析のリンクは末尾に載せておきます。
 
 さて、オリオールズへの移籍後、しっかりとリリーフ投手陣の一角を担っている藤波選手ですが、開幕前にこのようなシーズンになると思っている人は少なかったのではないかと思います。
 
 順調なのは結構ですが、データを見ていく対象としては、成績が良い方向で安定しているとあまり見るべきところが無くなってしまうという難しさがあります。もちろん、上手くいっているときであっても、修正すべき点や将来の懸念点などを見つけ出すことは重要ですが、重箱の隅をつつくような指摘になりがちです。
 
 今回は、そうした重箱の隅をつつくデータを見ていきたいと思います。

オリオールズ移籍後の投球結果

 まずはオリオールズ移籍後に登板した試合ごとの対戦打者との結果を集計したものを以下の図1に示します。

 打席での結果をバーの色で表しています。水色が四球なのですが、8月の後半に入るとほとんどなくなっていることがわかると思います。
 
 一方、対照的なのが図中に注をいれた8/9の登板で、2人を打ち取ったあとに3四球という制球面では大荒れの試合があります。
 
 その後は修正できたといえますが、この試合に何があったのかというのは一つ気になるところです。そこで今回はこの制球難の試合でのパフォーマンスを他の試合と比較してみたいと思います。

制球難の試合での投球内容

 最初に確認するのは、この8/9にどのようなボールを投げていたのか、球種を比較したものを以下の表1に示します。

 データを見ると、8/9の特徴としてはストレート(FF:4-Seam Fastball)の割合が高いことがわかります。確認すると8/9の3四球も、4つめのボールは全てストレートでした。
 
 単純に考えて8/9のストレートには制球の問題があったのかということで、まずは投球位置を確認したデータを以下の図2に示します。

 左側が8/9のデータ、右側が移籍後7/21から9/9までのストレートの投球位置になります。図中のグレーの枠線がストライクゾーンの目安となります。プロットの色は、ストレートの回転率を表しており、色が濃いほど回転率が高いことを表します。
 
 この日の対戦打者は全て右打者で、この図は捕手の視点からのものになるので、右打者はストライクゾーンの左側に立つことになります。移籍後のデータも対右打者のデータになります。
 
 データを見ると、8/9のストレートはストライクゾーンの右半分に集中しており、外角への投球が多いことがわかります。そして、他の試合での投球と比較すると外角に外れたボールが多いかと思います。
 
 プロットの色には8/9では大きな違いがないので、すっぽ抜けて回転がかかっていないような投球はなかったといえます。
 
 次に、同様の集計をリリースポイントで行ったものを以下の図3-1に示します。

 左側が8/9のデータ、右側が移籍後7/21から9/9までのデータとなります。
 
 8/9のデータを見ると、右側よりも散らばりが小さいことが確認できます。リリースポイントが荒れたために制球に苦しんだというわけでもなさそうです。
 
 しかし、図3-1をよく見ると、以下の図3-2に示すように、8/9のストレートには2つのグループがあるように見えなくもないです。

 わずかな差ですが、リリースポイントが少し高い投球と、低い投球のグループが見えるように思います。このリリースポイントの位置は、制球と関係しているのでしょうか?
 
 そこで、リリースポイントのプロットの色を、図2で確認したストライクゾーンの内か外かで分けてみました。データを以下の図4に示します。

 リリースポイントが少し高い投球と低い投球のグループにストライクかボールが偏っていれば、このリリースポイントの僅かな違いが制球に影響していたといえますが、図を見る限りストライクもボールも混ざり合っているという感じで偏りは見られないので、影響はないとみてよいかと思います。
 

まとめ

 以上、制球難といえる試合での投球位置やリリースポイントを確認してきましたが、これといって大きな問題は見られませんでした。今回見ていないデータに問題はあるかもしれませんが、3四球というそれなりに衝撃的な結果であっても、それほど大きな問題がなくても起こりうるということなのかもしれません。

藤浪選手のこれまでの分析

 

タイトル画像:いらすとや

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