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7月の藤浪晋太郎は何が変わったのか?

 これまで2023年よりMLBでプレーすることとなった藤浪晋太郎選手のデータをあれこれ見てきました。
 

 前回を書き終えてから、にわかに藤浪選手の周りが動き出し、オリオールズへとトレードとなりました。これはパフォーマンスを評価されたものです。
 
 確かに、7月に入ってからは無四球と制球の問題も改善しつつあったと思います。しかし、あれこれ苦労している過程をこれまで見てきましたが、7月にどのような改善があったのでしょうか。
 
 今回は、主に7月のトレード前のパフォーマンスを中心にデータを見て行きたいと思います。

投球成績の推移

 まずは、開幕から8月9日までの投球成績を以下の表1に示します。 

 この表では、先発での登板(4/01 ~ 4/22)と、リリーフでの登板(4/26 ~ 6/30)、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)、トレード後(7/22 ~ 8/09)という区分でデータを集計しています。
 
 7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)では、奪三振率(K/9)がこれまでで最も高く、四球率(BB/9)が0.00と良い成績であることが分かります。
 
 次に、この4つの時期に投げていた球種の内訳を比較したものを以下の表2に示します。

 開幕から段々と球種を絞って行って、7月ではストレート(4-Seam Fastball)が60%程度、スプリット(Split-Finger)あが30%程度と、ほぼこの2球種に絞った結果であることがわかります。
 
 以降は、この2球種のパフォーマンスを見て行きたいと思います。

球速・回転率の分布

 まず、ストレート(4-Seam Fastball)の球速(mile/h)の分布を比較したものを以下の図1-1に示します。

 これはバイオリンプロットと箱ひげ図を合成したもので、図中の赤い部分がバイオリンプロットにあたります。この赤い部分が横に広がっているほど、その球速の投球が多いことを示します。
 
 例えば、一番左の先発での登板(4/01 ~ 4/22)では、だいたい97.0m/h近辺で広く、この辺りの球速が多いことが分かります。
 
 バイオリンプロットの中の長方形が箱ひげ図で、長方形の上端が上位25%、下端が下位25%、長方形中の横線が中央値を示します。
 
 4つの時期の分布を比較すると、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)とトレード後(7/22 ~ 8/09)で、球速がそれまでよりも速くなっていることを確認できます。
 
同様の集計をスプリット(Split-Finger)で行ったものを以下の図1-2に示します。

 スプリット(Split-Finger)では、だんだんと球速が速くなってきていることを確認できます。
 
 この集計をストレート(4-Seam Fastball)とスプリット(Split-Finger)の回転率でもやってみたものを以下の図2-1と図2-2に示します。

 ストレート(4-Seam Fastball)とスプリット(Split-Finger)ともに、リリーフでの登板(4/26 ~ 6/30)の回転率が幅広く評価されていますが、全体的な傾向としては、2球種とも回転率自体は高くなる傾向にあることを確認できます。

リリースポイント

 次に、ストレート(4-Seam Fastball)のリリースポイントの位置を4つの時期でプロットしたものを以下の図3-1-1から図3-1-4に示します。

 横の軸がリリースポイントの水平方向での位置、縦の軸に垂直方向の位置をプロットしてます。水平方向の値が0に近づくほど体に近い位置で投げていることになります。
 
 データを見ると、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)以降、特に水平方向の散らばりが小さくなっていることが分かります。リリースポイントが安定した結果といえます。
 
 同様の集計をスプリット(Split-Finger)でも行ったものを以下の図3-2-1から図3-2-4に示します。

 スプリット(Split-Finger)でも水平方向の散らばりが小さくなり、リリースポイントが安定した結果といえます。

投球の変化量

 最後に、投球の変化量を見たいと思います。先発での登板(4/01 ~ 4/22)でのストレート(4-Seam Fastball)のデータを以下の図4-1-1に示します。

 ボールの変化量は、投球が無回転だったという仮定の投球位置と実際の投球位置を比較したものになります。
 
 横の軸が水平方向への変化量を表し、マイナス方向に大きくなることは、右打者の内角への変化が大きくなることを意味します。縦の軸は垂直方向への変化を表します。これがプラスになることは、投球が無回転だったと場合よりも、どれだけ高い位置に投球できたかということを意味します。
 
 図4-1-1をクローズアップしたものを以下の図4-1-1-2に示します。

 このデータと以降のデータを比較するために、リリーフでの登板(4/26 ~ 6/30)以降のプロットを以下の図4-1-2から図4-1-4に示します。

 変化量に大きな違いはないように見えます。
 
 続いて、同様の集計をスプリット(Split-Finger)でも行い、以下の図4-2-1には先発での登板(4/01 ~ 4/22)のデータを示します。

 このデータをクローズアップしたものを以下の図4-1-1-2に、リリーフでの登板(4/26 ~ 6/30)以降のプロットを以下の図4-2-2から図4-2-4に示します。

  スプリット(Split-Finger)では、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)以降、垂直方向の+1付近の投球が少なくなっています。
 
スプリット(Split-Finger)は沈む変化球なので、それほど沈まなかった投球が減ったと考えられます。

まとめ

 以上、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)を中心にデータを見てきましたが、確かにこの時期は、ストレート(4-Seam Fastball)の球速と回転率がアップし、ストレート(4-Seam Fastball)とスプリット(Split-Finger)ともにリリースポイントが安定しています。
 
 一体何が起これば、ここまで劇的にパフォーマンスが改善するのか気になるところです。捕手が真ん中にだけ構えるようになったとは聞きましたが、それだけでここまで改善するものでしょうか。
 
 次回は、トレード後の成績を中心に、7月のリリーフでの登板(7/01 ~ 7/18)ではそれほど投げていない、カットボール(Cutter)にも注目したいと思います。

 タイトル画像:いらすとや







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