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リリーフ 藤浪晋太郎の記録

 これまで2023年にMLBデビューを果たした藤浪晋太郎選手の,主に先発登板時のデータを見てきました。

  その後は先発での成績は振るわず,4月下旬からリリーフ投手に回ったわけですが,このリリーフでの登板成績を見て行こうというのが今回のテーマとなります。 

月ごとに見るリリーフでの成績 

 最初に見るのは,月ごとのリリーフ投手としての成績です。これを2023年の6/20までのMLBの投手成績と一緒に比較したいと思います。最初にWHIPと防御率のデータを以下の図1-1に示します。

 横の軸にWHIP,縦の軸に防御率を取っています。黄色の〇が他のMLBのリリーフ投手の成績を,緑の〇が藤浪選手の成績を表します。図中には5月と6月の藤浪選手の成績を載せており,〇の横に5月と6月のラベルを示しています。

 5月と6月の藤浪選手のデータを比較すると,6月のWHIPは右寄りになって5月より高く成績は悪化しています。ただ,防御率は半減しており,改善したと見ることができます。

 続いて,防御率とBABIPのデータを以下の図1-2に示します。

 この原稿を書き始めた時点では6/20までのデータを使っていたのですが,藤浪選手の登板が6/24にあったので,藤浪選手のデータにはこの記録も追加しています。6/24は早々にKOされたので成績がだいぶ悪化しました。6/20までの成績ではBABIPは5月よりも6月のほうが低い値だったのですが,たった1試合で大きく成績が変わっています。
 
 もう1つ,対戦打者あたりの三振と四球の割合を以下の図1-3に示します。

 6月のデータを見ると,三振率(三振/打者)が低下し,四球率(四球/打者)はアップしています。ともに成績が悪化したといえるデータです。
 
 以上のように,成績を概観すると,6月のリリーフ投手での成績は,防御率は半減しましたが他の成績は悪くなっているというものです。
 
 良い成績なのか悪い成績だったのか判断が難しいですが,リリーフ投手の場合,走者のいる状況で失点しても,降板前の投手の自責点になるわけで,自身の投球結果と完全には結びついておらず,防御率の低下を良いことと捉えてよいものかは慎重になるべきです。
 
 もう少し詳しくデータを見て行きましょう。

打席結果の比較

 まず,月ごとリリーフでの登板の打席ごとの結果をカウントしてみました。データを以下の表1-1に示します。

 このデータを月ごとの内訳にしたものを以下の表1-2に示します。

 データを見ると,4月→5月→6月とライナーの割合がだんだんと少なくなっていることを確認できます。ライナーは安打になり易いので,これが減っていることは投球内容が改善している可能性が考えられます。
 
 もう1点気になるのが,ゴロのアウトと安打のバランスです。2023年の6/20の段階でMLBにおいてゴロの安打になる確率は.242です。表1-1藤浪選手のデータを見ると,アウトと安打の数はほぼ等しいので,安打になる確率は.500と少し高すぎます。
 
 サンプルが少ない点には考慮が必要ですが,ほぼ2カ月同じような状態が続いているのは,単に不運と片づけることもできません。

藤浪選手が打たれた打球の速度と角度

  それでは,先発投手の分析では藤浪選手の投球のデータを見てきましたが,今回は藤浪選手の打たれた打球を見ることで,ゴロが安打になり易い原因などを調べることができればと思います。
 
 まず,例として4月の先発登板時に藤浪選手が打たれた打球の速度と角度のデータを以下の図2-1に示します。

 久しぶりにこの形式の図を出しましたが,これは打球の速度と角度をプロットしたもので,原点0からの距離を打球の速度で,プロット位置は打球の角度を表しています。
 
 図中の赤の〇のプロットはバレルに分類された打球で,長打や本塁打になり易い打球です。
 
 打球の速度と角度のプロットの図は2つあり,左側は安打やアウトとなったプロットで,左側はファウルとなった打球のプロットです。
 
 ここからが本題のリリーフで登板した際のデータを,4月のものを以下の図2-2に示します。

 サンプルは少ないですが,0度から30度の間のプロットが多く,ライナー性の打球が多いことがわかります。
 
 続いて,5月のデータを以下の図2-3に,6月のデータを図2-4に示します。

 6月はサンプルが少ないこともありますが,4月や5月に見られる0度から30度の間のプロットが少なくなったといえます。この辺りはライナーの減少を示していると考えられます。
 
 このデータの中から,リリーフ登板時のゴロとなった打球の速度と角度を抽出したものを以下の図2-5に示します。

 各月のプロットを色で表しています。一貫して見られるのは,打球の角度が0度付近のゴロが多いことでしょうか。
 
 比較用に,2023年の6/20の段階でのゴロが安打になった場合と,アウトになった場合の打球の角度と速度のデータを以下の図3に示します。

 データ数が多いので,プロットを透過しています。安打やアウトのプロットが多い所ほど色が重なって濃くなっています。
 
 このデータを見ると,安打になり易いゴロは,打球の角度が0度前後であることが分かります。そして,藤浪選手はこの0度前後が多いことから,MLBの全体と比較してもゴロが安打になり易いのではないかと考えられます。

まとめ

 制球の問題が議論されがちな藤浪選手ですが,安打になり易いゴロを打たれているという特徴を確認することができました。リリーフ投手はどうしてもサンプル不足になりがちで,単なる不運な可能性も考えられますが,この原因を特定して改善できれば,投球内容にプラスに作用するのではないかと思います。
 
 次回は,この打球と藤浪選手の投球データを紐付けることができないか検証してみようと思います。なんだかんだと面白いデータを得ることができているので,何とか登板記録をこれからも積み上げていってもらいたいところ。

タイトル画像 いらすとや



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