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好きなアルバム10選

◆愛聴盤セレクション

 今回は特定の曲やアルバムのレビューではなく、筆者の好きなアルバムを10枚紹介する。もうすでに9本の記事を投稿しているので若干の今更感は拭えないが、どういう音楽を好きなのかが分かりやすく伝わる記事を書きたく、このテーマを選択した。ルールは、「昔から聴いているから」などの思い入れや自分の音楽性への影響は考慮に入れず純粋に今好きなアルバムを選ぶこと、そして偏ると面白みがないので1アーティストにつき1枚のみを選ぶことの2つだ。ランキングではなくあくまで10選、アーティスト名を英語表記したときのアルファベット順で発表していく。

『ソルファ』 / ASIAN KUNG-FU GENERATION

 1枚目は、日本のロックバンドの代表格であるASIAN KUNG-FU GENERATIONの2ndフルアルバムである『ソルファ』をチョイスした。バンド最大のヒット作であり、「リライト」や「Re:Re:」などの代表曲も多く収録しているため、アジカン入門にも適したアルバムであると言えるだろう。音作りなどの面でもより洗練された4th『ワールド ワールド ワールド』とどちらを選ぶか非常に悩んだが、今日の気分でジャッジした結果、より激しいエネルギーを感じるこちらに軍配が上がった。
 このアルバムの魅力は、初期の荒々しいサウンドとキャッチーでポップなメロディセンスが絶妙に調和したバランスの良さにあると思う。筆者はロックの音像でポップなメロディを演奏されるのに弱く、このアルバムは好みのど真ん中を射抜いてくる。
 収録曲の曲調はバラエティ豊かで、1曲目からアクセルを思いっきり踏み込んでくる#1「振動覚」のような疾走感あふれる真っ向勝負のロックチューンもあれば、神秘的なリフによって一気に曲の世界に引き込んでくる#6「ラストシーン」のような曲もあり、かと思えば#11「海岸通り」はミドル〜スローテンポで春の情景と感傷をじっくり聴かせてくれる。
 ソルファは2016年に再録版が発売されている。技術も録音技術も初盤と比べ向上し、円熟味を増したサウンドやアレンジは流石の一言。ただ、個人的には海岸通りでしっとりとした後にアップテンポな#12「ループ&ループ」で上げて締める構成が好みなのと、(少ないと思うが)未聴の方がいれば今作→再録版の順番で聴いてもらいたいという想いで、本記事ではオリジナル版を選択した。

Favorite Track: ループ&ループ

"Transatlanticism" / Death Cab for Cutie

 USインディーを代表するバンド、Death Cab for Cutie が2003年にリリースした遠距離恋愛をテーマにしたコンセプトアルバム、"Transatlantiscism"。緻密に作り上げられたサウンドと普遍的なメロディ、イノセントでどこか切なげなベン・ギバートのヴォーカルという彼らの特徴と、先述の本作独自のコンセプトをしっかりと押さえながら、ポップ・バラード・ロックとさまざまな表情を見せてくれる、彼らの音楽を初めて聴く人にもおすすめの一枚になっている。
 筆者が毎年元旦に必ず聴く#1 "The New Year" は冬らしい冷たさを感じる歪みつつ煌びやかなギターの音色とタイトなリズム隊の演奏が印象的で、イントロから物語の始まりを感じさせるような引き込まれる展開になっている。#5 "The Sound of Settling" は彼らの曲の中でもとびきりポップな一曲で、"Bop-ba" と繰り返すサビは一度聴いたら癖になること間違いなしだ。表題曲 "Transatlanticism" は、約8分にも及ぶ長尺の曲だが、神秘性さえ感じるほど切なく美しいメロディに、恋人との距離を大西洋の誕生になぞらえて歌う壮大かつ切実な歌詞、そしてベンの本領発揮とも言える叙情的なヴォーカルが、だれた雰囲気など一切感じさせることなく曲の世界に浸らせてくれる。
 またこれはあくまで余談だが、アルバム内の曲間がシームレスに繋がるというのは割とよく観るが、リピート再生すると最後の曲のアウトロと一曲目のイントロが繋がっているという珍しい工夫が本作には施されている。そういったユニークな仕掛けも面白いが、それ以上にとにかくサウンドの美しさにこだわりが見えるアルバム(というかデスキャブのアルバムはどれも音作りが素晴らしい)なので、集中できる環境で世界観に没入しながら楽しみたいアルバムだ。

Favorite Track: Transatlanticism

“THE THIRD SUMMER OF LOVE" / ラブリーサマーちゃん

 ラブリーサマーちゃんのメジャー2ndフルアルバム、"THE THIRD SUMMER OF LOVE" は、ロック史に燦然と輝く名盤と言えるだろう。彼女の幅広く奥深い音楽的なバックグラウンドの中でも、とりわけUKからの影響が色濃く感じられる骨太なバンドサウンドは、聴く人全ての心を激しく揺さぶること請け合いだ。
 イントロからガッツリ心を掴むダンサブルなロックナンバー#1「AH!」から、ノンストップで名曲だけが続いていく。轟音ギターに圧倒される#3「心ない人」や、ストリングスとバンドサウンドの融合が美しい#6「LSC2000」、この上なく爽やかに音楽への愛を歌った#11「ヒーローズをうたって」など、どこを切り取ってもホームラン級のアンセムであり、かつアルバム全体で見たときの構成も素晴らしい、完璧な1枚。どの曲も思い切り鳴るギターの音が気持ちよく、ロックって最高にかっこいいなと再認識させてくれる。
 詳しい感想は個別記事にまとめてあるのでそちらも是非参照してほしい。

Favorite Track: アトレーユ


"(What's the Story?) Morning Glory" / oasis

 好きなアルバムをたった10枚だけに絞るというのはかなり難しい作業だが、「これだけは絶対に入れる」と迷わずチョイスした数枚のうちの一つが本作。ロックンロールの金字塔といえる伝説の一枚なのでもはや説明する余地などないのだが、まさに音楽の奇跡のようなアルバムだと思う。
 全ての曲がアンセムといっても過言ではないが、やはり#3 "Wonderwall" や#4 "Don't Look Back In Anger" のような代表曲の聴き応えは抜群。可愛らしい内容と抜群のセンスで踏まれた韻が魅力的な#9 "She's Electric" はタンバリンが絶妙な役割を担っていて楽しい一曲。アルバムのラストを飾る#12 "Champagne Supernova" の、幻想的な雰囲気のイントロから徐々に盛り上がりやがて辿り着くロックンロールの超新星爆発とも言えるようなサウンドは、この伝説の名盤を締めくくるのに相応しい。
 力強くシンプルなバンドサウンド、ミドルテンポのキャッチーな歌メロ、まっすぐな歌詞・・・まさに説明不要の横綱相撲。これほど聴く人を選ばないアルバムもないと思うし、普遍的ゆえに永く聴き続けられる一枚だと思う。

Favorite Track: Champagne Supernova

“On My Way Back Home” / OCEANLANE

 日本のインディーロックシーンにおいて不世出のバンドの一つであると自信を持って言えるのがOCEANLANEだ。ブリットポップやUSインディー、エモなど多岐に渡るルーツを感じさせながら、そのどれとも異なる「日本のインディーロック」という独自の音楽性を確かに表現していたバンドだと思う。
 中でも1stアルバムである “On My Way Back Home” は、普遍的なグッドメロディと時に鋭く時に叙情的なギターサウンドといった彼らの特徴がよく現れた一作。
 #1 “Everlasting Scene” と#2 ”Sign” は上述の特徴が凝縮されたような、まさに名刺代わりと言えるような2曲。#1では優しく叙情的にエヴァーグリーンなメロディを、#2では疾走感溢れるエッジィなギターロックサウンドを奏でており、彼らの音楽的な引き出しの多さとそれを高いレベルで表現する確かな実力を、アルバム序盤から早速感じられる構成になっている。続く#3 “Ships and Stars” はバンドサウンドとストリングスが見事に調和した秀作。#4 “Haze in Heart” や #8 “Broken Wings は、内省的な歌詞と美しいメロディが魅力的で、彼らの愛する敬愛するインディーロックの影響が色濃く感じ取れる。
 ツインヴォーカルの片割れ・武井創は、現在 ”The Coastguards” というバンドのフロントマンを務めている。彼らが奏でるのはゴリゴリのハードコアサウンドで、OCEANLANEとは全く違う音楽性であるように思われるが、相変わらずのクリアな歌声と確かなメロディセンスが感じられ、普段ハードコアを聴かない層にも受け入れられる音楽だと思うので、興味があればそちらもぜひ聴いてみてほしい。

Favorite Track: Everlasting Scene

『さざなみCD』 / スピッツ

 スピッツのアルバムを入れることはすぐに決まったが、その中から1枚だけ選ぶというのがかなり高いハードルで、もしかしたら今回の企画で一番迷った部分かもしれない。そんな中で選ばれたこの『さざなみCD』は彼らの12枚目のオリジナル・アルバムで、タイトルにズバリ「CD」という単語が入っているところがかわいらしくて好きだ。シングル曲は勿論その他の曲もそれぞれに単独で聴かせるパワーがあり、それでいて各曲が浮いていることはなくジャケットで表現されているような爽やかで清涼感のある雰囲気が全曲に共通している、曲単位で聴いてもアルバムを通して聴いても楽しめる完成度の高さが魅力的な一枚。
 #2「桃」冒頭のフレーズ『切れた電球を今 取り換えれば明るく 桃の唇 初めて色になる』は、こちらの感受性を開いて初めて感じ取れる美しさが世界に溢れていることに気づかせてくれる、スピッツの歌詞の中でも相当にお気に入りな一節。#5「ルキンフォー」はこのアルバムらしい爽やかさを備えながらも骨太なバウンドサウンドが魅力的な一曲で、特に2Aの高いところで鳴っているギターが印象的。#9「魔法のコトバ」は世間的なスピッツのイメージにマッチしながらもそれを飛び越えるような説明不要の名曲だが、ここで触れなければ逆張りすぎるので念の為ピックアップしておく。本アルバムで一番のロックチューンが#10「トビウオ」で、疾走感あふれるサウンドとまさに飛び跳ねるようなサビの歌メロで一気にぶち上がれる一曲。ラストを飾る#13「砂漠の花」は爽やかな音像と泣きメロが絶妙にマッチしており、清涼感があると言っても明るさ一辺倒ではないこのアルバムの懐の深さがよく表れている。
 スピッツの入門アルバムとしても、ファンが繰り返し聴く愛聴盤としても素晴らしい、流行り廃りのない名盤だと思う。

Favorite Track: ルキンフォー

“Grand Prix” / Teenage Fanclub

 グラスゴーの至宝、Teenage Fanclub(以下 ”TFC”)の5枚目のアルバム。ブレイクのきっかけとなった ”Bandwagonesque” などの初期作に見られるノイジーさはやや控えめになり、歪んだギターサウンドのカッコよさは一つの要素として残しつつも、前作までよりも更にポップで甘いメロディを聴かせるようなアルバムになっている。先述の “Bandwagonesque” や、続く “Songs From Northern Britain” も素晴らしいアルバムで、どれを彼らのベストとして選出するか相当迷った(特に “Songs~” は以降のアルバムのスタイルを完全に確立した、キャリア全体で見た時に最も「TFCらしい」輝きを放つ名盤だと思う)が、後述の通りジェラルドの作品が傑作ぞろいで、曲単位で聴くことも多いこのアルバムを推すこととした。
 TFCは3人のメンバーがソングライティングを担当しているが、本作はジェラルド・ラヴの書いた4曲が特に素晴らしい出来だと思う。#2 “Sparky’s Dream” は、とびきり甘いメロディと美しいコーラスワークが魅力的な彼らの代表曲の一つ。#4 “Don’t Look Back” は内省的な歌詞を叙情的に歌い上げるボーカルに絡みつくようなギターリフが印象的。静と動のメリハリを活かした展開が見事な#8 “Discolight” に、イントロから涙を誘うリフが炸裂する極上のバラード#10 “Going Places” と、4曲それぞれがフェイバリットになり得る名曲になっている。ジェラルドの曲は歌メロに絡むリフが美しいのが特徴で、本作はその特徴が色濃く現れている。
 もちろん他の2人の書いた曲もそれぞれに素晴らしい。ノーマン・ブレイク作の#6 “Neil Jung” は、サビでマイナー調になったところにエモーショナルなボーカルが飛び込んでくる展開や、アウトロのギターソロのハーモニーなど、非常にドラマチックでスケール感のある一曲になっている。今作のリードトラックである#1 “About You” はレイモンド・マッギンリーの作曲で、いきなりコーラスから始まる展開は初っ端からアルバムを盛り上げてくれる。
 “Sparky’s Dream” については歌詞和訳の記事も作成したため、そちらも併せて読んでもらえると、より楽しめると思う。

Faborite Track: Sparky’s Dream


"The Man Who" / Travis

 oasisのフォロワーとして荒々しいサウンドの1stアルバムでデビューした、グラスゴー出身(TFCと同郷)のバンド "Travis"。そんな彼らが1999年にリリースした2ndアルバムが本作 "The Man Who"。前作からは打って変わって美しいメロディと内省的な歌詞が印象的なこのアルバムは、シングルカットされた#7 "Why Does It Always Rain On Me?" のヒットとともにイギリス中に受け入れられ、全英チャート1位も獲得した。
 とにかく先述の通りメロディの美しさが極まったアルバムで、どんな気持ちの時に聴いても優しく心に寄り添ってくれる。かといってイージーリスニングなわけでなく、oasisの公認を得て "Wonderwall" をオマージュした#1 "Writing To Reach You" は、1番から2番にかけてギターの数を増やしながら徐々にテンションを上げていく展開や2サビ後のソロなど、しっかりとギターロック・サウンドを鳴らしている。ヴォーカルのフランの歌声も比較的落ち着いていることが多いが、#6 "Turn" でのサビの歌唱は非常にエモーショナルで、本作のハイライトシーンのひとつだ。#8 "Luv" はハーモニカとアコースティックギター主体のメランコリックなアレンジになっており、アルバム全体の構成の中で変化をつけてくれる一曲。
 ただただ良い音楽が聴きたいときに手にとって、いつの間にか自然と一緒に口ずさんでいるような、人生の長い友人たり得るアルバムだ。

Favorite Track: Why Does It Always Rain On Me?

『BADモード』 / 宇多田ヒカル

 1998年、弱冠15歳にして1stシングル “Automatic” をスマッシュヒットさせ鮮烈にデビューした天才が、その25年後にリリースした現行最新アルバムがこの『BADモード』だ。デビュー当時から、商業的な成功だけでなく常に音楽的に素晴らしい作品を生み出し続けてきた宇多田ヒカルの、ある種の到達点にして最高傑作の一つだと言える一枚に仕上がっている。筆者の思う宇多田ヒカルの魅力を3点だけ挙げるとすれば、「R&B、エレクトロ、ハウスなど様々なジャンルの魅力をキャッチーなポップソングに取り込み、独自の音楽に昇華するセンス」「作詞における、独特のリズムに絶妙な譜割で言葉を乗せるセンスと、聴いたときに情景が鮮明に浮かんでくる描写力」「技巧の凝らされた複雑な曲も歌モノとして聴かせ、なおかつ歌詞に十二分の説得力を与える、ヴォーカリストとしての技量と歌声の美しさ」になるが、本作はそれら全てを完璧に備えた一枚。
 表題曲でもある#1「BADモード」は、他者を思いやる姿勢とその難しさを素直な言葉で表現し、そこに固有名詞を用いた現代のありふれた生活の描写がよりリアルな体温を与えている。冒頭からのフレッシュで明るいサウンド・曲調が、中盤でしっとりした雰囲気に一変し、さらにそこから次第に音数を増やしながらクライマックスへと向かっていく展開が見事で、アルバムの世界観に一気に引き込まれる。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:|』の主題歌でもある#3 "One Last Kiss" は、喪失も忘れられないこともありのまま受け入れて前に進むイメージを短いフレーズで想起させる最後の歌詞が美しい。#6「気分じゃないの(Not in The Mood)」は、ジャジーなリズムで展開される生演奏の聴き心地抜群のサウンドに、情景描写的な歌詞が淡々と乗せられた、上質な純文学のような一曲。良曲揃いの本作の中でも出色の名曲がラスト(ボーナストラック除く)を飾る#10「Somewhere near Marseiles ーマルセイユ辺りー」。11分54秒とかなり長尺の曲だが、最後まで全くダレることも聴き飽きさせることもなく、快い余韻を残しながら必要十分な長さでアルバムを締め括ってくれる。
 COVIDによるパンデミック下での人々の営みを背景に、自己と他者の関係やそれぞれを大切にする姿勢・方法を様々な角度から描いたアルバム全体の歌詞世界は、適時性と普遍性の両方を兼ね備えている。「パジャマのままでウーバーイーツでなんか頼んで」いる場面に始まり、「オーシャンビューの部屋一つ 予約」して終わりを迎えるところにも、長かった世界的な『BADモード』が終わるまでのストーリーが感じられ、一枚を通して聴く必然性が感じられるところも素晴らしい。

Favorite Track: Somewhere near Marseiles ーマルセイユ辺りー


“Be A Girl” / The Wannadies

 スウェーデン出身のロックバンド、The Wannadiesの3rdアルバム。弾けるようなギターがリードする多幸感溢れるパワーポップ・サウンドは、どこまでもエヴァーグリーンで爽やかなメロディながら、同時にどこか北欧らしい哀愁も感じられる。
 映画「ロミオとジュリエット」の劇中歌としても使われたバンド最大のヒット作である#1 “You And Me Song” は、ボサノヴァ調の緩やかな序盤からサビのギターで一気に弾ける展開が魅力的。疾走感溢れる#2 “Migh Be Stars” ではロックバンドの夢を歌っているが、元気なサウンドとは裏腹に夢見がちなだけでなくシビアな目線も持っているところが面白い。
 アッパーな曲だけでなくスロウな泣ける曲もあり、#4 “How Does It Feel?” では理想と現実のギャップに喘ぐ心を、ポップだが泣けるメロディと美しいコーラスで歌い上げている。アルバムのラストを飾る#11 “kid” はシューゲイザーチックなサウンドで、その独特の浮遊感とラスサビの轟音ギターは、エモーショナルであると同時に聴く者の心を浄化するような響きがある。
 どこまでもピュアなグッド・メロディを、力強く聴くものを元気づけてくれるようなギターサウンドで演奏するこのアルバムは、世代や嗜好を問わず多くの人におすすめしたくなる一枚だ。

Favorite Track: How Does It Feel?


◆まとめ

 以上、好きなアルバムを10枚紹介した。この世に存在する膨大な数のアルバムの中で、筆者が聴いているものはほんの一部ではあるが、それでも10枚に絞るというのはかなり苦労を要する作業だった。
 10枚だけ選ぶというのはその時の気分にもかなり左右されると思う。また、今回のラインナップだけを見ても、1994年リリースの”Be A Girl” のような約30年前のアルバムもあれば、2023年リリースの『BADモード』のような新しいアルバムがあることを考えると、今まで聴いたことのなかった過去のアルバムで素晴らしいものに出会ったり、まだこの世に存在していない素晴らしい名盤が今後リリースされて、顔ぶれが大きく変わることも当然あり得る。ただし、10枚だけを選ぶ時にラインナップから外れることがあったとしても、今回紹介したアルバムは恐らく一生大切に聴き続けるだろう。
 今回の企画にあたって今まで聴いてきた音楽を振り返り、今まで自分の人生を彩り、豊かにしてくれた素晴らしい作品の数々をじっくり聴き直すことができた。「10枚選ぶこと」それ自体には大して意味がないと思うが、その過程は価値あるものだと思ったので、この記事を読まれた方はぜひ自分の10枚が何かを考えてみてはいかがだろうか。


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