7時間かけて飯田線を走破する列車に乗り通してみたら…【後編】
これは「7時間かけて飯田線を走破する列車に乗り通してみたら…【前編】」の続きです。
表情を変える沿線風景
飯田駅発車後に昼食をとりました。上諏訪駅で買った数少ない戦利品の焼きそばをいただきます。
周りの18キッパーらしき人たちはあまり物を食べていない模様。普通列車で食べ物を食べにくい気持ちはわかりますが、一体どうやって7時間生きていくつもりでしょう?
列車は天竜峡駅に到着。天竜川のライン下りが楽しめる観光地で、ここで降りる人・乗ってくる人がいました。ようやっと後半戦です。
飯田線は天竜峡駅から沿線の表情を変えます。起伏があるとはいえ平地にあった住宅街は姿を消し、山や川が主役となります。ここから飯田線の“本領発揮”となるのです。
飯田線名物・秘境駅
飯田線にはいくつか“名物”がありますが、中でも有名なのは「秘境駅」の存在です。飯田線には秘境駅が沢山あります。
秘境駅とは、簡単に言えば無人駅で利用者もほとんどなく、駅周辺が閑散としていてなにもない駅のことです。それゆえ他では味わえないノスタルジーを感じることができ、わざわざ秘境駅に降りる“変態”も少なくありません。
JR東海もこの秘境駅たちを売りにしようと考え、季節臨時の列車として「急行飯田線秘境駅号」を毎年のように運行しています。特急は停車しない様々な秘境駅に長時間停車し、秘境駅の周りを散策できる列車になっています。ダイヤがスカスカな飯田線だからこそ成せる技です。褒めてます。
実はこの臨時急行にRさんと乗る予定だったのですが、僕が大寝坊をしでかしたために乗ることができなかったのです。悪いことをしました(棒)。
この列車はただの普通列車のため、待ち合わせや上下列車の交換がない限りこのような駅はすぐに発車してしまいます。しかしその僅かな時間でボロい駅舎(駅舎すらない駅がほとんど)や周辺に道すらない凄まじい駅を見ることができました。地元の方々には迷惑な話でしょうが、見る分にはとても楽しいですね。臨時急行もいつかリベンジするとしましょう。
「渡らずの鉄橋」を抜けて終盤戦へ
数々の秘境駅を抜けるうちに、豊橋までの残りの距離は100㎞を切りました。長い長い旅も残りあと僅かとなりました。
さて、列車は右手にあります天竜川の支流・水窪川を渡るべく鉄橋に差し掛かりました。
んが、、、
どういうわけか、対岸の集落に着く前に右に曲がってしまいます。
あらら〜!結局対岸に渡りきることなく、再び右手に水窪川が帰ってきてしまいました。これが飯田線のもう一つの名物「渡らずの鉄橋」です。
S字を描いて川を「渡らない」珍しい橋なのですが、これは中央構造線による地殻変動が背景にあります。
昔、この地でトンネルをつくっていた際に中央構造線の地殻変動が起きてトンネルが崩落し、仕方なくそこを迂回すべく架けられたのがこの渡らずの鉄橋です。
この他にも飯田線は中央構造線の地殻変動によって線形を変更せざるを得なかったというケースが多くあります。日本アルプスに挟まれた路線ゆえの苦悩がそこにあります。
町だ、街だ、終着だ(タイトル詐欺)!!
14:10、中部天竜駅に到着。ここでは7分もの間停車します。ちょうど飲み物が無くなったので、駅の自販機で補給することにしました。
中部天竜駅発車時点で、豊橋まで残り1時間を切りました。もう少しでこの苦行も終わります。
ところがどっこい、当のテラヲさんはここまでの6時間を苦しいとは思わず、むしろ楽しんでおりました。やたらと写真を撮っているので苦痛だと思っていなかったのは明白でしょうが、それは単にテラヲさんが“変態”だからです。
飯田線をずーっと乗っていて感じたのは、「沿線に集落が絶え間なく点在している」ということです。
普通秘境駅だらけの路線ならば集落など存在すらしないと思うでしょう。
しかし飯田線沿線には大小はあるものの、人が住んでいる(と思われる)家々が断ち消えることなく見られたのです。どこか人気を感じることで、この7時間は飽きることがなかったのでしょう。宗谷本線とは大違い、アレは発狂ものです。
本長篠駅付近になると山は背後に消え、再び住宅街や小さな町が見えるようになりました。秘境駅ゾーンも終了です。楽しかったぁ!!
15:33、新城駅に到着。この駅では10分停車します。ここが最後のバカ停車です。
駅前にはバスロータリーがあり、タクシーも停まっています。そして交差点の向こうには商店が!感動ものです(失礼)。
この駅から列車の本数は倍以上に増えます。よってここから先の需要も大きく、現にこの駅から十数名ほど乗ってきました。僕はここで長らく占拠していたボックス席を明け渡し、運転台の後ろに立つことにしました。もう長くは乗りませんし、何しろこの先で面白いものが見れるからです。
鉄ネタをかまして終点へ
16:10、小坂井駅を発車。ここで最後の面白ポイントが2つやってきます。
一つ目は「名鉄との共用線に入る」ことです。実は名鉄名古屋本線は終着駅である豊橋からしばらくの区間はJR線と線路を共用しているのです。そしてその境目が小坂井駅の先にあります。
ここからは他社線の車両もやってくる区間、しかし直通運転ではありません。不思議な線区です。
そしてさらにもう一つ。長らく各駅に停車していた当列車ですが、ここでなんと「駅を通過」します!!
小坂井駅を発車して名鉄との共用線に入ると、豊橋までどこにも停まりません。途中の下地・船町の2駅は通過してしまうんですね〜。ここまでのダラダラ停車旅はなんだったのか…。
この列車の乗車中に英語の自動放送が幾度となく流れるのですが、そこで「Limited stop」という聞き慣れないワードを耳にすることになります。普通の各停列車ならば「This train stops all stations」となるのですが、この列車は全て停車するわけではないので「Limited stop」となるんですね。これもこの豊橋行列車の面白いポイントです。
そしてとうとう列車は終点の豊橋駅に到着!!入線するタイミングで、線路を共にしている名鉄の特急列車が対向でやってきました。違和感満載です。
16:16、色々(1616)ネタ要素がありましたが、7時間に及んだ「同一列車乗り通しの旅」がこれにて終了しました。大変長い旅でしたが、周囲にこれを労ってくれた人は誰一人としていませんでした。当然ですけど。
編集後記(?)
さてこのお話の“オチ”ですが、この日は長〜い乗車時間の対策として今年受験する予定の「旅行業務取扱管理者資格」の教本を持参していました。当日は「さて何ページ進むかねぇ」と思いながら家を出たものです。
ところが!!飯田線の旅が予想よりも面白いこと楽しいこと。教本の存在などすっかり忘れ、7時間丸々沿線の景色を楽しんでおりました。
結果的に自身の趣味として大変充実した時間となりましたが、自身の人生にとっては何の意味のないムダな時間となってしまいました。空しい…。
<おしまい>
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