見出し画像

関節脱臼

皆さんこんにちは。ストリングスメンバーの無量谷です。

今回のテーマは「関節脱臼」です。

その中でも、野球で起こりやすい「肩関節脱臼」を中心に投稿していきます。
皆さんも脱臼という言葉は一度は聞いたことがあると思います。

そんな脱臼だからこそ、病態や対応などを理解しておかないと適切な対応が出来ず、一生後悔する可能性があります。

肩関節脱臼とはどんな状態なのか、どう対処するのがいいのかなどためになる内容を投稿していきますので気になる方はチェックしてみてください!


■関節脱臼

まず、それぞれの用語を整理します。

捻挫:骨と骨を繋ぐ関節包や靭帯が損傷をうけさ状態
亜脱臼:関節包や靭帯の損傷により関節面が乱れているが関節面は一部は接触している状態
脱臼:骨同士の関節面が完全にずれ、接触がない状態

スライド4

肩鎖関節、手関節では脱臼と亜脱臼を認められるが、肩関節(前方)と肘関節、股関節には脱臼はあるが、亜脱臼はみられません。
一方、肩関節(後方)、膝関節、足関節、指の関節は亜脱臼は認められるが、脱臼は起こりにくいです。

また、2011年度中高生部活動における外傷統計によれば肩関節脱臼の年間発生頻度を10万人あたりの件数で表すと、ラグビー(652)、柔道(148)、野球(34)の順であった。
つまり、コンタクト、コリジョンスポーツは、競技特性上脱臼などの外傷発生頻度が他の競技と比べ高い特徴があります。
(参考:奥村透:日本におけるスポーツ外傷サーベイランスシステムの構築(第2報))


スライド5


■肩関節脱臼

肩関節の脱臼は前方が98%〜99%、1〜2%が後方脱臼です(高岸直人:後方脱臼.)。
前方脱臼が多い理由としては、肩を水平にして後ろに動かした時と、肩水平+肘90°曲げて後ろに動かした際の可動域が前に動かすより狭いことが挙げられます。

スライド8

また、肩関節は受け皿の上にボールが乗っているような不安定な関節です。
その関節を靭帯や筋肉、溝を深めてくれる関節唇という組織でかろうじて安定を保っています。

スライド7

しかし、初めての脱臼してしまった時に、ほとんどのケースでお皿の端である関節唇・靭帯が損傷してしまいます。
この関節唇は肩関節を少しでも安定させるためにある物なので、それが損傷してしまうと、脱臼がクセになる状態、「反復性肩関節脱臼」になってしまいます。

スライド9

この反復性肩関節脱臼は初めて脱臼する年齢が若いほどなりやすいと言われています。


■野球での脱臼例

野球で多い脱臼の場面は、ヘッドスライディングの時、ダイビングキャッチの時、スライディングで手を後ろに着いてしまった時になります。まれに投球時にも脱臼は起こります。

スライド11

最近では、メジャーのタティスjr選手が走塁時に手を後ろに着いて脱臼を起こしています。タティスjr選手は今シーズンで3回目の脱臼ですが、脱臼したのが非利き手(左)であるため、早期復帰をしているのではないかと思います。

しかし、例え脱臼したのが非利き手であっても原則あそこまで早い復帰は、組織の回復が完全にできておらず、再脱臼のリスクを高くしてしまうと思われます。

■脱臼時の対応

画像13

これは脱臼時の対応の流れになります。

一番大切になるのが、三角巾固定と当日の医療機関への受診です。

脱臼時は通常、関節の変形と強い痛みを伴います。
しかし、訴えが痛みだけで見逃されやすいものもあります。
脱臼は脱臼か他の怪我かを判断するのが非常に難しいため、一番最悪なケースを想定しながら症状の悪化を防がなければいけません。

脱臼を戻す(整復)資格がない人が行えることは、医療機関を受診するまでどれだけ痛みを緩和できるかです。
そこで重要になるのが三角巾での固定です。

三角巾の固定方法はこちらの動画を参考にしてください!


■脱臼時の注意

脱臼時に注意しなかれば行けないことは何でしょうか。
それは、整復の知識がない無資格の人が脱臼の整復を行うことです。

スライド15

脱臼をもとに戻す(整復)を行えるのは医師や柔道整復師の資格がある人のみになっています。
資格がない人が整復を行った場合、骨折や組織損傷の悪化が起こる可能性が高く、無資格の人が整復を行い、症状が悪化した場合は傷害行為に当たる可能性もあります。

つまり、無資格で脱臼の整復を行うことは、無免許で車を運転するのと同じようものなのです。

また、脱臼かと思ったら骨折であった場合や脱臼と併発している場合があります。そのような時に無理に整復しようとすると骨折を悪化させてしまう可能性があります。

スライド16

■治療原則

保存療法はどれか一つを行うのではなく、時期を考えながら方法を変えて行きます。

まず、脱臼の整復後、肩の関節が動かないように三角巾で約3週間前後固定します。
次に固定期間中から痛みや不安定感を考えながら、肩の動きが悪くならないように可動域練習、筋力、機能的安定化の改善を行います。
その後、段階的に競技復帰を目指します。
復帰を目指す中で、肩の可動域が良くならないや肩が外れそうになるなど不安感が大きい場合は手術になります。

スライド18

手術の目的は主に再脱臼しないこと、及び早期復帰です。
野球選手の肩関節脱臼の手術報告を見てみると、やはり非投球側群の方が復帰までの期間が短いのがわかります。
また、守備位置別を見ると試合での投球数が多い投手。捕手は復帰率がかなり低いことがわかります。

スライド19

鏡視下バンカート縫合術:バンカート病変(関節唇損傷)に対して行う手術
ラタージェット法:ラグビーやアメリカンフットボールなどコリジョン(衝突)アスリートに対して行われます。
レンプリサージ:上記2つの保護手術として行う。

スライド20

また、生活動作にも注意が必要です。なにげなく行う動作に危険は沢山潜んでいます。

■最後に

スライド22

まとめです。
皆さんに一番理解していただきたいことは、

・脱臼をした際、無理に整復しないこと                     ・原則即日医療機関へ受診

以上の2点になります。

無資格の人が整復を行い、試合に復帰し、勝利を収めるなどは美談になりません。
正しい対応を行い、選手を守っていきましょう。

チームストリングスメンバー 無量谷 裕哉

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もし、この記事が役に立ったという方は
いいねやフォローお願いします。

またチームストリングスの投稿や活動に興味のある方は
ぜひセミナーにも参加してみてください!

セミナーの案内は随時行っておりますので
フォローの方よろしくお願いいたします。

お問い合わせは各SNSのDMまたはメールで宜しくお願いいたします。

チームストリングス
E-mail: strings.baseball@gmail.com

■チーム紹介
『全ての野球選手が満足してプレーできるように』
野球界をより良くするために集まった
予防と強化のプロフェッショナル集団
主に【指導者の方が知っておいて欲しい事】を発信していきます!
選手や保護者、トレーナーの方もフォロー大歓迎!
■SNS
ストリングスはSNSを通じた発信を行っております。
指導者の方はぜひフォローをして情報収集をしてください
Instagram
Twitter
Facebook
note

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?