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筋線維組成と持久系トレーニング方法について考える

先日のオンラインカウンセリングで持久系アスリートの(持久系)トレーニング方法に関する質問を受けましたので、それに関連した記事をシェアさせて頂きます。

いわゆる競技力、競技パフォーマンスは、トレーニングによって獲得される後天的な身体能力だけでなく、先天的な資質によって左右されるともいわれています。

特にトップアスリートは人間の身体能力の限界に近い状態で競技を行なうため、そのアスリートが有する先天的資質が競技パフォーマンスを左右する重要なポイントになることが多いと考えられています。

その一方で、近年、トップアスリートには優れた先天的資質が必要であるのは疑いようのない事実であるものの、その関与の度合いは従来考えられていたよりも低いのではないかという見解もみられるようになっています。

特に持久系競技においては先天的資質を有することもさることながら、後天的な能力開発が重要であるといえるかもしれません。

例えば、スプリンターのパフォーマンスと筋線維組成との関係を見ると、速く走るための必要条件として筋線維組成(%タイプⅡ線維)は重要な因子であるとされていますが、長距離ランナーにおける筋線維組成には人それぞれ「ばらつき」が多く、筋線維組成が長距離走競技パフォーマンスを決定する要因であるとはいい切れないとされています。

もちろん、エリート長距離ランナーにおいては高い比率でタイプⅠ線維を有するランナーが多く存在していますが、速筋線維、遅筋線維の割合が半々であっても高いパフォーマンスを有するランナーが存在するのも事実です。

また、アフリカとアメリカの中長距離ランナーにおける持久的身体能力の比較を行なった研究では、アフリカンランナーはアメリカンランナーと比較して、%タイプⅠ線維、最大酸素摂取量が低く、酸化系酵素活性及び疲労耐性が高かったことが報告されています。

これらのことから、先天的にそのアスリートが有する筋線維組成によって強化すべき(持久的)要素が異なることが推察されます。

いい換えれば、筋線維組成の異なる持久系アスリートに対して(持久系)トレーニングプログラムを提供する際には、その内容を変える必要があるといえるのかもしれません。

但し、これはあくまでトップランナー、エリートランナーに対する話であり、持久系競技パフォーマンスを向上させる上で、まず取り組むべきことは最大酸素摂取量を向上させることであるといっても過言ではありません。

参考書籍:
勝田茂(著):運動生理学20講第2版,朝倉書店,1999

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