寅さん観察日記#40「寅次郎サラダ記念日」

第40作 1988年12月24日 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日
マドンナ:三田佳子

冒頭の夢シーンは無く、寅が車窓を眺めながらさくらに語りかけるシーンから始まる。
満男が受験で悩む。
満男「大学落ちたらおじさんの弟子になろうかなぁ」
おばちゃん「ばか、大学行かないからあんなんなっちゃったんじゃないか。」
おばちゃんの苛烈な表現はさておき、大学へ行くことが当たり前となっている。
初期作品では大学へ通っているというだけで末は博士か大臣か、というような描かれ方であった。10数年でこうも変わるのか。
日本の高度経済成長期をこのセリフで一番感じた。
(余談であるが、筆者は満男役の吉岡くんと同い年ゆえ、感慨深い。)

長野県小諸駅前で出会ったおばあちゃんの家に泊まらせてもらう寅さん。
掛かり付け医(三田佳子)が自身の考える人生の終い方を話し出す。
生死感が入ってくる男はつらいよもいいじゃないか。
寅さんの年齢とともに作品の重量感が増していく。

寅さん、もう少しおばあちゃんを隠れ蓑に美人女医さんの近くにいるのかと思ったら、あっさり柴又へ帰還。
女医の姪のユキちゃん(三田寛子)に会いに早稲田大学へ向かう寅さん。満男の進学先の偵察との事だが、美人女医さんにやっぱり近づきたいらしい。
ワットくんの話が出てきたぞ!懐かしい。
中村雅俊(ワットくん)がとらやの2階を爆発で吹き飛ばした名作回であった。第20作だ。→コチラ

今作は全編で俵万智さんの歌がフィーチャーされていて、まるでコラボ作品のようであった。
オープニングの字幕で脚本の横に俵万智「サラダ記念日」と書かれていたから何だろうと思ったが。
最初にサラダ記念日を拝借した短歌が出てきた時には寅さんとのギャップに思わず心でツッコんだが、最後まで見ると爽やかな印象で良かった。
劇中のBGMでサザンオールスターズが流れたり、若い感覚を積極的に取り入れているが、男はつらいよの土台が強固なのでブレない。

それにしても男はつらいよのマドンナはどうしてこうも思わせぶりなセリフを吐くのか。
寅さんが勘違いするのも無理はないのだが、初期の頃は前のめりに引っ掛かっていた寅さんも、次第に一歩引くのが当たり前になってきた。
そこ行けよ!寅さん!とボクシング観戦でもしている気分になってしまう。
寅さんがガッつく作品はこの後あるのか。
全50作。いよいよ大台の40に乗ってきた。

ロケ地:長野県小諸
主題歌:キーG。いつもの音源。

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【寅さん観察日記】
男はつらいよの第一作目を見て、寅さんが頭の中の印象よりも随分と粗暴な性格で驚いた。そこでいつ頃から皆に愛される寅さんへと変化していったのかに興味が湧き、一作目から順に見ていくことにした。
あらすじ紹介が目的ではない。
順に見て思った事、雑感を書き連ねていく。順に見なければ分からない感想が紡ぎ出せればと思う。

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