寅さん観察日記#36「柴又より愛をこめて」

第36作 1985年12月28日 男はつらいよ 柴又より愛をこめて
マドンナ:栗原小巻

棒等の夢シーンは寅さんが宇宙飛行士の日本人第一号に選ばれてロケットに乗せられて発射されちゃうというもの。
(後に調べてみたら、土井さん、向井さん、毛利さんが日本人初の宇宙飛行士に選ばれた年だった。)

タコ社長の娘あけみちゃんが家出。タコ社長がテレビに出て涙ながらに帰ってきてくれと訴える。
タコ社長、娘が心配なだけなのに、テレビでの泣き姿が柴又の恥晒しなどと散々な言われようであった(笑)

満男が、親子との何気ない会話の中で寅さんの存在を的確に表現する。
「おじさんは常識とかないけど、世間体とか気にしないし、おべっかやお世辞を言わないし。」
このセリフが、今の寅さんの立ち位置を決定付けた気がする。
筆者、今まで粗暴な振る舞いが目立っていた任侠者の寅さんがいつから国民に愛されるおっちゃんへと昇華したのかを知りたくてずっと見てきたが、ここで一つ、ストンと腑に落ちた。
満男に受け入れられるなら僕も受け入れようじゃないか。
ナイス満男。

家出したあけみちゃん、下田にいることが判明し、寅さんが急いで下田へ向かう。
あけみちゃん、下田から見える式根島に渡りたいと言い出し、寅さんと二人で島に渡る。
あけみちゃんの保護で来たはずの寅さん、船の中で知り合った若者たちと合流して宴会開始。
まさかのあけみちゃん放置。

あけみちゃんもそんな寅さんに愛想を尽かして別行動。
気が付けば寅さんは、島一番の美人教師にぞっこん。
今度は寅さんが帰りたくなくなり、あけみちゃんが帰りたいと言い出すという逆転の見事なシチュエーションコメディになっている。

お約束の、寅さんが失恋するくだりも、ちょっと複雑な大人の恋愛事情を絡めていて、奥行きのある考えさせられる人情噺になっていた。

それにしてもあけみちゃんが大活躍の話であった。
回を増すごとにあけみちゃん(美保純)の存在感が増していて面白い。
満男(吉岡秀隆)も良い感じに大人びてきており、ストーリーに参加しだした。
今後の更なる活躍に期待。

ロケ地:伊豆下田、式根島
主題歌:キーG。最近定番の過去の録音音源だと思われる。

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【寅さん観察日記】
男はつらいよの第一作目を見て、寅さんが頭の中の印象よりも随分と粗暴な性格で驚いた。そこでいつ頃から皆に愛される寅さんへと変化していったのかに興味が湧き、一作目から順に見ていくことにした。
あらすじ紹介が目的ではない。
順に見て思った事、雑感を書き連ねていく。順に見なければ分からない感想が紡ぎ出せればと思う。

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