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第4章 トリックスター、デヴィッド・ハリス

初めてここにたどりついた方へ、
できれば、プロローグから読まれると、登場人物やストーリーが理解できて楽しめると思います。よろしければプロローグからどうぞ💕

第4章 トリックスター、デヴィッド・ハリス


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深夜の都市の雑音が窓からこぼれ入る中、エミリーのデバイスが震えた。

未知の番号からの着信。彼女が通話ボタンを押すと、深みのある男性の声が流れてきた。

「エミリー・ローレンス。私はあなたが調べているマーク・ハリスの兄、デヴィッドだ。会って話すことがある。明日、ローズ公園のベンチに昼までに来てくれ。待っている」
通話はそこで切られた。

エミリーはしばらく呆然としたままでいたが、彼女の中には新たな疑問が芽生えていた。

マークの兄であるデヴィッド・ハリスは、彼女の過去にどのように関わっていたのだろうか? 彼は何を知っているのだろうか? なぜ、今、会いたがっているのだろう。

彼女は気持ちを落ち着けて、アイリスGPTにデヴィッド・ハリスについて調べてもらうように頼んだ。

そして、翌日に備えて、心を固めた。

未知なる人物との対面が、エミリーの旅路に新たな章を刻むことになるとは、その時の彼女には、まだ想像もつかなかった。


デヴィッド・ハリス

ローズ公園は陽の光で美しく彩られていた。
散歩する人々、鳩たちがパンくずをつつき、子供たちが笑顔で遊んでいる。

普段なら平和で穏やかな場所だが、エミリーにとっては運命の出会いの場となる。ここは彼女が記憶を失った場所・・・。

公園の中央にある大きな噴水のそばのベンチに座っている、一人の男性が目に付いた。

身長は高く、スーツ姿で、黒い髪はきちんと整えられている。その男性がこちらを見つめている。彼こそがデヴィッド・ハリスだ。

彼女は彼の方へ歩き寄り、不安と興奮でギリギリの笑顔を作り上げた。
「デヴィッド・ハリスさん、ですか?」

彼は頷き、
「そうだ。待っていたよ、エミリー」
と、冷静ながらもやさしい声で返答した。

エミリーは彼の隣に座り、自分の中で渦巻く疑問がぐるぐるとめぐるのを感じた。


混乱の種: デヴィッドからの情報

「あなたが調査しているマークは、私の弟だ」
とデヴィッドは言った。

彼の口からはじける言葉の一つ一つが、エミリーの心に深く刺さる。

「あの事故前の夜、君は我々と一緒にいた」
と彼は言い続けた。
「マークが何をしていたのかは、残念ながら私にも詳しくはわからない。しかし、君が目覚めたときに君の傍らにいたのは、私たちだった」

エミリーは彼の言葉を理解しようとするが、頭は混乱に陥っていた。
「でも、なぜ? 私はその記憶がない」

デヴィッドは彼女の手をそっと握りしめ、やさしく微笑んだ。
「それが君が探し求める答えだろう。そして私も知りたいことがあるんだ」

エミリーは心の中で混乱が渦巻いていることを感じながらも、デヴィッドからの情報を一つ一つ、アイリスGPTに伝えた。

情報と混乱: デヴィッドの迷宮入り

デヴィッドから得た情報は、エミリーの頭の中をさらに混乱させた。

彼の言葉を繰り返し思い出しながら、エミリーは彼が何を意味しているのか、何を隠しているのかを理解しようとした。

「何もかもが混乱している」
とエミリーはつぶやいた。
「でも、これは私の過去を取り戻す鍵かもしれない。」

アイリスGPTはエミリーからの情報を受け取り、それを分析し始めた。
「デヴィッドが言ったことが事実であれば、あなたは彼らと何らかの関係があった可能性が高いです。しかし、その具体的な内容や目的については、明らかではありません。さらに情報が必要です」

エミリーは深呼吸をした。
「一緒に解き明かしていこう、アイリス」

デヴィッドとの出会いは、エミリーの心に新たな混乱をもたらしたが、同時に彼女の記憶を取り戻すための新たな希望ともなった。


物語の転換点: デヴィッドとの対立

デヴィッドは謎めいた表情でエミリーを見つめ、彼女が自分をどう受け取るのかを見極めているようだった。

彼の挑発的な態度と対照的に、エミリーは落ち着きを保つように努めた。

「なぜ、そんなに私の過去に興味があるの?」
エミリーが尋ねた。

「それは…」
デヴィッドは言葉を探し、ついにはただ肩をすくめた。
「お前も、真実を知る権利があるから」

その言葉に、エミリーはどう答えていいのかわからなかった。

彼の言葉の中には、一部でも真実が含まれているように感じられたが、その真意をつかむことはできず、その日は別れるしかなかった。


公園からの帰り道、エミリーは覚悟した。
真実を知るため、そして自分自身を取り戻すためには、デヴィッドと対話し続けるしかない。

エミリーの視線は固く、デヴィッドの後ろ姿を捉えた。
「私は自分の真実を知るためにここにいる。それが何であれ、全てを知る覚悟ができている・・・・」

                      —— つづく


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