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オタク、寝台特急サンライズ号に乗る。

2023年3月某日。
大好きなバレーボール観戦とバスケットボール観戦を楽しむ夢のような2日間を過ごしたその夜、わたしはJR大阪駅である電車を待っていた。
わたしが乗る予定の電車は、寝台特急サンライズ出雲・瀬戸号である。本記事執筆時点で、唯一定期運行している寝台列車だ。わたしはこれに乗って東京まで帰る。大阪から東京まで6時間半。新幹線と比べると長いけど、夜行バスや鈍行と比べるとちょっと短い旅路となる。

深夜0時をまわったJR大阪駅は、明るさは残っているものの行き交う人の数はそれほど多くない。昼間はあんなににぎやかな場所ということもあり、少し不思議な感覚を覚えた。

終電間際のJR大阪駅の掲示板

この時点でサンライズ号に遅延が発生しているのは把握していたが、まあ3分ってことでちょいと待てば来るんだろうな~と思い、トイレや飲み物の準備を済ませた。
サンライズ号が発着する11番ホームに向かう。ホームの待合室やベンチには、わたしと同じように寝台特急の到着を待つお客さんがちらほら。同志だ!!とちょっと安心した。待っているお客さんは老若男女問わず様々な人がいたので、ビジネスから旅行、その道のマニアまで、色々なニーズに応えている列車であることを改めて再確認した。

そして、サンライズ号がJR大阪駅に発着する予定の0時33分が来たものの…

サンライズが来ない!!!

…まあ遅れてるから仕方ないか。この時点で10分ほど遅れているというアナウンスがあったので、もうちょっと待つことにした。
他のホームでは乗客を運び終えて1日の任務を終了した車両が、回送列車として引きあげていく。大阪駅の最終列車はサンライズなのでまだ駅構内の照明が消えることはないが、他の在来線車両が回送されるたびに寂しさが募っていく。
長い1日を終える車両と乗務員さん、その一方で遅延している最終列車の到着を待つわたしたち。普段は終電で帰る、ということをしない人間なので、やはりちょっと不思議でセンチメンタルな気持ちになった。このままサンライズが来なかったら…?そうなるとわたしたちは大阪で立ち往生である。明日には東京に帰らないといけないのに。

JR大阪駅 11番ホームの乗車口

…そんなこんなで20分ほど待っていたら、サンライズ号到着のアナウンスが流れた。
ついに、ずっと乗ってみたかったサンライズに乗れる!!子どものようにテンションが上がってしまったわたしは、バスケ観戦時に使っているミラーレス一眼カメラを準備する。そして、まわりに並んでいる乗客や運転手の迷惑にならないように寝台特急車両の写真をカメラに納めた。

YouTubeとか個人ブログとかを見て予習していたけど、実際に見たらとてもわくわくした!

今回乗車した寝台の席種は、B寝台シングルである。サンライズ号のなかではいちばん部屋数が多く、スタンダードといえる席種であろう。車両や席はおまかせで予約していた。今回は階下の寝台であった(事前に座席表を見て確認していたんだけどね)。

さっそくサンライズ号の車両に乗り込み、自分の席に向かう。いざ自分の個室に入った最初の感想は、「意外と狭いな」であった。まあ、リュックとハンドバッグ、宿泊用の荷物を詰めたトートバッグに加えお土産を入れた紙袋まで持っていたから仕方ないか…。個室内にキャリーバッグを入れる余裕はなさそうだったので、トートバッグでなんとかなってよかった、と思ったりして。
靴を脱いで、寝台の上に座る。乗務員さんが検札にまわってくるので、検札を済ませる。

個室の中はこんな感じ。カーテンは自由に閉められるし、照明の調整も自由なのは個室の寝台列車ならではの魅力がある!

予想していたよりも列車走行中の振動は感じなかった。これで横になって帰れるなんて楽しすぎる!夜行バスに乗った時は、(リクライニング機能があるとはいえ)座ったまま寝る必要があるのと、バスの振動でなかなか寝つけなかったので、個人的には寝台列車のほうが快適に感じた。あと寝巻があるのもうれしい。着替えてゆっくり眠れるね!!

終電が終わった後の東海道本線の様子を眺めるのもサンライズの楽しみのひとつと聞いていたので、車窓も楽しみながら眠ることにした。驚いたのは、終電が過ぎてしばらく経っても明かりがついている駅が多かったこと。安全面でつけっぱなしなのか、節電のことは想定していないのかは分からないけど、車窓が明るくなると「あっ、どこかの駅を通過したな」とわかるくらいには明るかった。まあ深夜だから沿線の民家も消灯しているところが多いし、余計に目立つよね…。
階下の寝台だったこともあり、駅のホームのすぐ足元を通過しているところを見られたのも面白いなと思った。ホームを降りて線路の上から眺めている感じ。実際にそんなことはできやしないしやったらまずいんだけど、2階建て車両の下の階の大きな窓から眺める不思議な景色であった。

本当は、稲沢とか一宮とかのあたりで東京を発った下りのサンライズ号とすれ違うところを見たかったのだけれども、遠征疲れがたまっていたのか、関ヶ原を越えたあたりで( ˘ω˘)スヤァ…してしまった。

翌朝。熱海駅に到着したところで目が覚めた。
ちょうど朝日がのぼるところであった。熱海の温泉街と朝日がうまくマッチして、それはそれはすてきな風景が広がっていた。「サンライズ」という列車の愛称がついたのはきっとこういう景色が見られるからなんだな。個室の寝台列車に乗った者にしか見られない、特別な瞬間であった。
わたしは小田原あたりまで、朝日と東海道線沿線の景色を眺めていた。

せっかくなので車窓の写真をおすそわけ

(その後、早朝で空腹なのもあって乗り物酔いを起こし、結局横浜あたりまで二度寝した。自由に二度寝できるのもサンライズの良いところである。…まあ、事前に何か軽食でも持ち込んでおけばよかったと反省はしている。)

神奈川県に入ると、サンライズは朝ラッシュ時間の通勤列車の間を縫いながら東京駅に向けて走行していく。向かい側のホームではサラリーマンなどが列を作って通勤電車を待つなか、寝台列車でゆっくりくつろぎながら通過していくわたしたち。向かい側のサラリーマンたちはサンライズをどんな気持ちで見ているのだろう、とふと思った。

…東京駅が近づいてくる。この遠征はもうすぐ終わる。まだ乗っていたいな、って思うくらいサンライズが好きになった。
大阪駅を20分ほど遅れて出発したサンライズは結局、夜中のうちに遅れを取り戻すことはできず、東京駅には定刻より50分ほど遅れて到着した。それでも、予定よりも少し長くサンライズに乗れたのは乗客としては嬉しかった。

東京駅に着いたら、行先表示が「回送」になっててちょっと寂しかった…。

個室の寝台でゆっくり休んでいたら、いつの間にか目的地に着いている。新幹線やスタンダードな夜行バスでは味わえない、ちょっぴり贅沢で楽しい旅であった。
モーニングを食べるお店を探すために、朝の東京駅周辺を歩いたことも楽しかった。…コメダ珈琲店だと思って入った喫茶店は上島珈琲店だったけど、細かいことは気にしないことにした。

上島珈琲店のオシャンティーなモーニング


蛇足
2023年6月2日: 誤字の修正と加筆を行いました。


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