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あるタクシードライバーの場合(2) いわなの郷物語



昨日の続きです。



イワナくてもわかるかもですが、フィクションです。

力が入って2000時弱。





釣れない。

全く
どいつもこいつも
イワナまで!

バカにするな!

イワナキャわからないのか!!!

ああ
取り乱してしまった。

まあ
そういう時もあるかあ。


・・・


「ああ!
 それじゃあ釣れないよ〜」

スタッフらしきおじさんが声をかけて来た。

なんだ唐突に!


「餌がまず大きすぎ。小豆粒くらいにして」

そのおじさんが
エサを小さくする。

え、そうなの。
そりゃ釣れないかあ。

そして
竿を投げ入れると


「ウキを浮かせてみて」

ん???
なんだ!?

ウキってこの浮くようにさせるのかあ。


「エサを直接食わせようとすると
 エサばかり見ちゃうでしょ。
 ウキを浮かせておけば
 ウキの反応を見て、食ったかわかるんだよ。」

えええ
そうなの?
そりゃ
イワナきゃわからないよ〜。


ピクン

小さな反応があった。

「今わかった?」

「はい」

「あれで食ってたのよ。」


ほお!
そういうことでしたか!

「ピクンてした時に上げても釣れるよ。」


このおじさん
ホントかなあ。

でも、ちょっと言われた通りにしないとまずそうだから、
とりあえずやってみるかあ。


ピクン

竿をあげてみた。


釣れた!

「ああああああ
 おおおおおお
 〓@∈∂♂↓♂∟?!」


前に聞いた子供の声より
大きな声を出してしまった。

「釣れたじゃない!」
おじさんにほめられた。


「おじさんやるじゃん!」
隣の子にもほめられた。

池を挟んだ向こうにいたスタッフらしき人から
拍手されてしまった。

声出し過ぎちゃったなあ。笑


この歳になってあんな雄叫びをあげるなんて!

なんか俺
やるじゃん!

恥ずかしさより
自分が普段できないことをできた喜びの方が大きかった。


おじさんが
魚の針を外そうとしてたので
待ってもらい
スマホでパシャり。

ちょっとうれしい。
待ち受け画面にしたいくらいだ。


その後は快調に釣れた。
5匹釣れたので終わりにすることにした。

まあ、
流石にお腹空いてても
5匹は食えないなあ。

とも思いながら、
止まらなくなってしまった。


焼くのに40〜50分かかるからなあ。

会計を終え
言われた通り、
さばくところにいく。

スタッフ同士で
ケンカしてる。笑


「もうヤンねえからなあ。」
「・・・」

残されたスタッフは黙々とさばいていた。

よりによって
このタイミングで次かあ。

「焼きますか?」

「はい。お願いします。」


その残されたスタッフに
黙っていられなくなって言っちゃった。

「大変ですね〜」

「いやあよくあることなんですよ〜」

何それ!?
よくあることなの?

なんか驚いちゃってバカみたいだったなあ。笑


さばきを終えて
焼くところに行くと
塩振りますか?なんて言われて
やってみた。

「もこみちみたいにやってくださいね。」

なんて言われたけど、
もこみちってそんなことしてるの???

聞くと
清水もこみちがカッコつけて塩振るのが
お母さんタイムのテレビでやってるようだった。

もお
なんだか
自分の常識とは違う世界だなあ。


「さした場所覚えといてくださいね。
 私たち忘れちゃうんで。」

なに!?
忘れちゃう?

そんなことで仕事してるの???

あまりに驚いたので聞いてみた。

「なんで客が覚えとかなきゃいけなんですか?」

「いやあ
 これだけ数あるとわからなくなっちゃうんです。
 火の前って熱いでしょ?
 もう覚えてられないんですよ〜。
 炭ません。」


なんか
返す言葉もなかった。

そういうやり方もアリなんだあ。

でも
ちょっと面白いかも。


スピリチュアルが好きだったから
いろんな本も読んだし
いろんなセミナーも行ったけど
一脈通じるなあ。


コロナ対応もそうだったけど、
こうじゃなきゃいけないってない。
むしろ
ここはこうだってある程度ルールを商売する側が作ること。

お客はある程度聞いてくれるし、
その責任をお客様は取ってくれないもんなあ。

それに
釣りの時のウキの話は面白い。

エサを釣らせようとしても釣れない。
ウキに集中すること。

これって
お金儲けようと肩肘張っちゃうと
逆にダメ
みたいなことだよなあ。


二宮尊徳のタライの例話みたいなもんだなあ。


そんなことを考えて
近くの川をぼやっと見てると


「つかまえた!」

「おお すごい!
 じゃあ、さばいておいで!」

なになに!
川にイワナ放してるの?

スタッフとの話を聞いていると
どうやら
わざと放しておいて
つかまえたら焼いてあげるようにしてるんだそうだ。

そんなあ
イワナきゃわからないじゃない!

長靴持ってきたのになあ 笑

と思ったら
肌寒い時期にも
大人も案外裸足で入ってる。

ちょっと入ってみるかあ。

うわあ
思った以上に冷たい。

こりゃあ
長くいられないかなあ。



サワガニだ!

つかまえてみた。


「ああサワガニだ!」

「ああいいなあ」

「見せて見せて」

子供たちに囲まれてしまった。

なんか
モテモテな気分。


うれしいわな 笑っ


つづく

ご縁に感謝です。サポート頂いたら、今後の学習投資に使わせて頂きます。