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この世界で君と出会う【1⃣7️⃣〜2️⃣3️⃣】


1⃣7️⃣
(パーティー当日、イリヤと椿と飛龍が用意をしている。)


イリヤ「椿くん、こっち手伝ってくれるかい?」

椿「はい。」

飛龍「イリヤさん、こちら廊下の掃除は終わりました。」

イリヤ「あぁ、ありがとう。フレア様のお召し物の用意は出来ているのかい?」

飛龍「そちらのご用意も、すべて出来ております。」

イリヤ「なら、椿くんと交代してくれるかい?」

飛龍「かしこまりました。」

椿「俺は何をすれば…?」

イリヤ「椿くんはローズ様のお召し物の用意をしてくれるかい?ローズ様もきっとお待ちですから。」

椿「わかりました。」


(ローズの部屋の前)


椿「…なぁ、いるか?」

ローズ「なに?」

椿「入るぞ。」

ローズ「椿、なんの用?」

椿「お前のドレス選びとか手伝えって言われたから来た。」

ローズ「そう。じゃあ私にあったドレスを選んでちょうだい。クローゼットの中から選んで。」

椿「……この中から…?すげぇ量だけど…」

ローズ「ソアならすぐに選んでくれるわよ?」

椿「……わかんねぇ、けど、これとか…か?」

ローズ「ふーん…中々いいセンスしてるじゃない。」

椿「そう、なのか…?」

ローズ「このドレス、このパーティーのためにソアが作ってくれたもので、毎年このドレスなの。…私のお気に入り…。」(ドレス抱きしめ優しい表情を浮かべ)

椿「…お気に入り…か。なら、早く着替えろ。…俺も着たところがみたい…。」

ローズ「…え?」

椿「…!な、なんでもねぇ…!早く着替えないとパーティーに間に合わなくなるぞ…!俺は廊下出てるから、着替えたら呼べよ…!」


(椿廊下に出る。)


椿「……あぁ…調子狂う…。なんだよ、あんな表情も出来んのかよ…。」


(飛龍と遭遇。)


飛龍「あぁ、椿さんここにいましたか…。」

椿「っ!飛龍さん…。なんっすか…?」

飛龍「フレア様がお呼びでございます。」

椿「え、俺…?」

飛龍「はい。」

椿「…わかりました。すぐ行きます。」



1⃣8️⃣
(フレアに呼ばれ部屋の前にいる椿。)


椿「…フレア様、お呼びですか?」

フレア「あぁ、椿さん。来てくれたのね。入ってちょうだい?」

椿「…失礼します。」

フレア「そんなに固くならなくていいわよ。会った時みたいに軽い感じでいいの。」

椿「はぁ…。で、俺になんの用っすか。」

フレア「用がないと呼んじゃいけない?」

椿「え?」

フレア「あなたに会いたかったから呼んだの。だって椿さん、お姉様の所ばかりじゃない。私だって、椿さんと一緒にいたいのよ。」

椿「…俺、まだ仕事残ってるんで…。」

フレア「そんなの飛龍に任せればいいわ。」

椿「いや、それは…。」

フレア「ねぇ、そんなことより…。」

椿「…?」

フレア「目を瞑ってちょうだい?」

椿「え?」

フレア「ほら、早く。」

椿「…。」(渋々目を瞑る)

フレア「…ふふっ…。素直でいい子ね。」


(椿の唇にキスをする。)


椿「っ!な、何すんだよ…!」

フレア「あははっ、いいリアクションね。そういう初心な所も素敵だわ。ますます気に入っちゃったわ!お姉様にはもったいないわね。」

椿「はぁ…?」

フレア「私、あなたのことが好きなの。」

椿「え?」

フレア「だから、私のものにしたくて、飛龍に呼んでもらったの。」

椿「っ!」

フレア「でも椿さん、あなたお姉様のこと好きなんでしょ?」

椿「…!なんで…。」

フレア「だってあなた、お姉様を目で追いかけてるじゃない。分かりやすいわ。」

椿「…それがわかってるなら、俺はフレア様の気持ちには…」

フレア「答えられない…って?」

椿「…。」

フレア「どんな答えを出そうと、あなたに断る権利なんてないのよ。」

椿「え…?」

フレア「私を誰だと思ってるの?…この屋敷の王女よ?執事という立場のあなたが私にさからえるとでも?」

椿「っ…。」

フレア「あなたがいくら拒否をしても、必ずあなたを私のものにしてみせるわ。」

椿「…!」

フレア「ふふっ、沢山お話出来て楽しかったわ。今夜のパーティーでまた会いましょうね。」


(フレア、部屋から出る)


椿「…ふざけるな…。お前の思う通りになるものか…。」



1⃣9️⃣
(パーティー開始。沢山の貴族たちがダンスを踊っている。椿が遅れてくる。)


椿「…悪い、遅くなっ…た…」(綺麗に着飾ったローズを見て思わず見惚れる)

ローズ「椿、遅い。何していたのよ?」

椿「…あ、あぁ、悪い…。ちょっとフレア様に呼ばれてて。」

ローズ「フレアに?どうしてあなたが?」

椿「知らねぇよ…。」

ローズ「…ふーん…。…待ってたのに…。」
(聞こえないくらい小さな声で)

椿「え?」

ローズ「なんでもないわ…。」

フレア「あら、お姉様、椿さん、楽しんでいらっしゃるかしら?」

椿「フレア様…。」

ローズ「えぇ、それなりに。」

フレア「それは良かったですわ。そうそう、椿さん、私と踊ってくださる?」

椿「は?」

ローズ「…!何言ってるの、フレア。彼は執事よ?」

フレア「別に執事と踊ってはダメというルールはないでしょう?」

ローズ「っ、それは…。」

フレア「ほら、椿さん早く行きましょ?」

椿「っ、離せっ…!」

フレア「…私に逆らうとどうなるかしら…?」(小声)

椿「…!」

フレア「ふふっ、行きましょう、椿さん。」


(椿とフレアが行ってしまう。)


ローズ「…なんなのよ…。どうして私と椿の邪魔をするのよ…。…って、何言ってるの、私…。別に専属執事じゃないのに…。」


(広場の真ん中で踊る2人を見るローズ。)


ローズ「…なんなの、苦しい…。あんなの、見たくない…。」



2️⃣0️⃣
(庭園へ向かおうとするローズ、酒に酔った貴族がぶつかる)


貴族A「っ、どこ見て歩いてんだ!」

ローズ「!ごめんなさい…。」

貴族B「!人喰い魔女め!この方は偉い方だぞ!そんな口だけの謝罪で許されると思ってるのか!」(ローズを突き飛ばし)

ローズ「きゃっ…!」


(会場がざわめき始める。)


貴族C「お前がぶつかったせいであの方の特注のお召し物が台無しだ!」

貴族A「弁償、してくれるんだろうな…?」

ローズ「弁償って…洗えば済むじゃない…。」

貴族A「…そうだな…。全員が見てる中で脱ぐか、全員が見てる中で土下座か…。いや、両方する方が面白いか。」

貴族B「それは面白い!」

貴族A「おい、そいつを抑えてろ。」

貴族C「わかりました。」(ローズを抑える)

ローズ「な、なにするの…!や、やめっ…!」


(ローズのドレス。引き裂く貴族たち。)


ローズ「っ…!」

貴婦人A「なにあの方々…下品ね…。」

貴婦人B「あれは女王様が可哀想だわ…。」


(会場のざわめきに気がつく椿とフレア)


椿「…なんだ…?」

フレア「…あら、面白いことになってるじゃない…。ふふっ…無様な姿ね…。」

椿「…!なんだよ、あれ…!」

フレア「あんなの放っておいて、もう少し二人の時間を楽しみましょう、椿さん。」(椿の手に触れる)

椿「うるせぇ。触るな。」(手を叩き落としローズの元へ行く)

フレア「ちょっと、椿さん!………ちっ…。面白くない…。なんなのよ…。」


(貴族達の嫌がらせはさらに酷くなる。)


貴族C「早く立て!」

貴族B「民衆の前へ行って土下座だ!」

貴族A「人喰い魔女の土下座だ!!貴重な物を見れるぞ!!」

ローズ「っ…」(泣きそうになる)


(椿、自分のスーツをローズに被せる)


ローズ「!…椿…。」

椿「立てるか…?」(ローズに聞こえるくらいの声で)

ローズ「…。」(頷く)

貴族A「おい、お前は誰だ!」

貴族B「邪魔をするな!」

椿「…うるせぇ、てめぇらは檻の中のチンパンジーか。吠えるな、動物園に帰れ。」

貴族C「なっ…!」

貴族B「お前っ、誰に向かって…!」

椿「あ?」(貴族たちを睨みつける)

貴族A「っ!!く、くそっ!」

椿「…部屋に戻るぞ…。」
 

(貴族たちを無視してローズを連れて部屋に戻る)



2️⃣1⃣
(ローズの部屋、椿と2人のシーン)


椿「…待ってろ、すぐ着替え用意する…。」

ローズ「……ごめんなさい。」

椿「……なにがだよ。」

ローズ「迷惑、かけて…。」

椿「…………。」(着替えのドレスを無造作に椿に投げる)

ローズ「っ!」

椿「話は後だ。先に着替えろ。身体弱いんだから、また風邪ひくぞ。」

ローズ「……ありがとう…。」


(椿1度廊下に出る)


椿「……。」(お気に入りだと言っていたローズを思い出し)

椿「…俺がそばにいてあげられなかったせいだよな…。」


(どうしてあげたらいいのか考えていると、中からローズの声が聞こえる)


ローズ「…もう入っていいわよ…。」

椿「…あぁ。」


(椿部屋に入る。破れたドレスを見つめているローズ)


椿「…ごめん。俺がそばにいてあげられなかったせいで…。」

ローズ「あなたのせいじゃないわ…。」

椿「…なんで、嫌だって言わなかったんだよ…。」

ローズ「…私は女王よ…弱い部分は見せられない…。見せてはいけないの…。」

椿「我慢する必要ねぇだろ…!」

ローズ「…!」

椿「嫌なら嫌って、自分の気持ち伝えないと、この世界は変わんねぇだろ!いつまで経っても、お前の理想とする世界にはならねぇよ!」

ローズ「…椿…。」

椿「女王だからとか、姉だからとか関係ねぇ。お前も一人の人間だ…。」

ローズ「ダメなのよ…。人間だけど国の頂点に立つ人間は強くないといけないのよ…!強い人間が上に立つから、この国も素敵なものになる…。父様はそう言っていたわ…。私にも、強い人間になれと…。だから私は…!私は…っ…!」(椿に抱きしめられる)

椿「じゃあ俺の前では強がるな…。お前の弱い部分も見せろ…。」

ローズ「椿…。」

椿「…俺には甘えてくれよ…。」 

ローズ「…っ…。」

椿「今は俺しかいねぇ…。」

ローズ「…椿…私…嫌だった…怖かった…。」(泣きながら)

椿「ん…。助けるの、遅くなってごめん…。」

ローズ「…人が、嫌い…。怖いのよ…。」

椿「…そっか。頑張って大勢の人がいるパーティーに参加して、凄いな…。」

ローズ「…あそこには、もう戻りたくない…。」

椿「ん。イリヤさんたちにも言っておくから、今日はもう休めよ…。」

ローズ「…椿…。」

椿「ん?」

ローズ「…ここにいて…。」

椿「…わかった…。だから、ゆっくり休め…。おやすみ、ローズ様…。」



2️⃣2️⃣
(数時間後、ソアが仕事から戻ってくる。)


ソア「ローズ様、失礼しまぁ〜す。…って、あれ?椿さん。」

椿「ソア。おかえり。」

ソア「あ、ただいま戻りましたぁ〜。」

椿「ソア、話がある…。ちょっといいか…?」

ソア「?いいですよぉ〜?」

椿「…まず、今日の出来事から…。」

ソア「…何かあったんですね…。」

椿「…まず、フレア様に部屋に呼ばれて行ったら、キスをされて、告白されました。」

ソア「…はぁ?」

椿「話は、ここから…。その後のパーティーでフレア様に一緒に踊れと連れていかれた。もちろん断ったけど、脅された。それで、少しだけだと思ってローズ様から離れたら、ローズ様が、パーティーに来ていた貴族に…。」

ソア「何かされたんですか。」(殺意のある声)

椿「…あれ。」(ボロボロになったドレスを指さし)

ソア「……あんな風にボロボロになるって、わざと破かないとなりせんよね?」

椿「あぁ、破かれて…。俺が見たのはそれだけだったけど、騒ぎ方からしてそれだけじゃないような気がするんだ。」

ソア「なるほど…。」

椿「ソアに、ローズ様に傷がないか見てほしい…。それと…。」

ソア「?」

椿「…目を離して、ごめん…。」

ソア「…私は別に椿さんに怒ってないですよ。」

椿「でも…」 

ソア「男なら、でもはなしですよぉ〜。って、イリヤさんがよく言いますねぇ〜。」

椿「…。」

ソア「そんな顔しないでください。まるで雰囲気がお葬式じゃないですかぁ〜。私は暗いのはきらいなので、いつもの椿さんでお願いしまぁ〜す。」

椿「…わかった。」

ソア「いい子ですねぇ。」

椿「やめろって…。」

ソア「そういえば…。」

椿「?」

ソア「椿さんって、ローズ様のこと好きなんでしょう?」 

椿「っ!な、なんで…!」

ソア「おぉ〜。否定しないということは、図星ですねぇ〜?いやぁ〜わっかりやすい…。」

椿「…そ、そんなに分かりやすいか…?」

ソア「目で追ってますもん。」

椿「っ…。」

ソア「それに、フレア様にキスをされたという話の時、明らかにいやそうしでしたもんねぇ〜。」

椿「俺はあいつが嫌いだ。あいつの思惑通りになんてさせるか。」

ソア「いいですねぇ〜。その気持ち。」

椿「…ソアに聞きたいことがあるんだけど…。」

ソア「なんですかぁ〜?」

椿「…ローズ様はあのドレスがお気に入りなんだって言ってた。でもドレスがあんなことになって、すごく悲しそうだった。…なにか、してあげたいと思ったんだけど、思いつかないし、何が出来るのかもわからなくて…。」

ソア「ん〜。なら、私にいい案がありますよぉ〜。」

椿「!教えてくれ…!」

ソア「ローズ様のこと、好きなんですよね?」

椿「…あぁ…。」

ソア「…こういうサプライズをプレゼントするのはどうでしょうか…?」(耳元で小声で話す)

椿「っ!そ、それって…!」

ソア「…ふふっ。」



2️⃣3⃣
(パーティーも終わり、深夜。ローズは目が覚めてしまい、星を眺めている。)


ローズ「……椿…。」


(椿に助けてもらったことを思い出している。)


ローズ「あれから、椿のことが頭から離れない…。どうしてフレアと踊ったの…。どうしてフレアの部屋へ一人で行ったの…。何をしていたの…。私は……ずっと待っていたのに…。」


(ぎゅっと自分の胸を抑え)


ローズ「…あなたの事を考えると苦しくなる…。これはなんなの……。」


(桜が入ってくる。)


桜「それはきっと、恋ですね…。」

ローズ「!桜…。」

桜「ローズ様申し訳ございません、ノックもなしに…。」

ローズ「…いいわ…。気にしていない…。」

桜「…私にも、そのお話聞かせて頂けませんか?」(隣に座り)

ローズ「…桜は、イリヤのこと、好きなのよね…?」

桜「えぇ、誰よりも愛しています。」

ローズ「桜はさっき、これを恋と言ったわ。桜もこんな風に、苦しくなったりするの…?」

桜「えぇ、私もイリヤと出会った頃は、イリヤのことを考えると眠れなくなったり、苦しくなったりしました。」

ローズ「今はしないの?」

桜「今は、彼のことを考えると心が満たされます。」

ローズ「心が満たされる…?」

桜「はい。もっと一緒にいたい、幸せだなって思えます。」

ローズ「…。」

桜「片思いをしている間は苦しいですが、同じ気持ちだと知った後は幸せな気持ちでいっぱいになりますよ。」

ローズ「…そう。彼も…同じ気持ちなのかしら…。」

桜「同じ気持ちだといいですね…。」

ローズ「えぇ…。」

桜「…さて、そろそろ私は失礼しますね。ローズ様も、ゆっくり体を休めてください。」

ローズ「…ありがとう、桜。」

桜「はい。では、おやすみなさい、ローズ様。」

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