上野動物園でアート鑑賞
上野動物園でパンダを見るために70分待ちの行列に並んでいて、ふと気づいたことがあった。パンダ舎はアートの宝庫なのだ。
上野動物園に行ったことがある方はご存知だと思うが、入園するとそのままの流れでジャイアントパンダ舎の最前列通路で2017に生まれたシャンシャン(香香)を見学できる。2020年に生まれた双子のシャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)+母親のシンシン(真真)の見学は西園の「パンダのもり」で行われていて、閲覧は抽選制。この親子パンダの見学は、なかなか当たらない。
東園ジャイアントパンダ舎の最前列の通路は、ほぼ並ばずにパンダを見学できるかわりに、立ち止まったり、撮影をしたりすることは禁止されている。が、一目でもパンダを見てしまったら、2列目の通路で、少しでもいいから立ち止まってパンダを見たい、写真を撮りたいと思うのは人間の常ではないだろうか。だからこそこパンダ2巡目は60〜120分待ちは当たり前の大行列になるのだろう。
東園ジャイアントパンダ舎で見た半立体のモザイク作品
私が上野動物園に友人4人で訪れた日は、幸いにも120分待ちではなく70分待ちという状況だった。「何がなんでも並んでもう一回見ようよ」と4人の意見が一致して2巡目行列の最後尾に並んだ。70分並んでいると、さすがの中年女性グループも井戸端会議のネタが底をつき、途中からはパンダ舎をしげしげと眺めることになる。すると1巡目では全く気にも留めなかったことなのだが、パンダ舎の壁には複数のパンダが、なんとも精巧なモザイクで表現されているではないか。
表象も材質も秀逸なクオリティ
しかもこのモザイク作品が見事なのは、パンダのお腹や顔の丸い感じが絶妙な立体的で表現されていることだ。パンダが輪っかに座ったり、つかまったりしていて、身悶えたくなるほどに可愛い仕草を的確に捉えている点も見逃せない。材質は陶器質タイルなのであろうが、黒は黒曜石のような奥深い光沢を放ち、白はボーンチャイナのような気高さのある質感で、アート性のみならず、材質のクオリティも高いことが窺える。
いったい全体このパンダモザイクは誰が企画して、誰が制作したのであろうか。
トラ舎の木彫、ゴリラ舎の鋳造、アフリカの動物舎の壁面モザイク
パンダ2巡目を終えて上野動物園を回ってみると、パンダ舎以外にもあちらこちらにアート作品的なディスプレイがある。さらにこれまた不思議なことだが、トラ舎の木彫作品、ゴリラ舎の鋳造彫刻、西園アフリカの動物舎の壁面モザイクと、材質も表現手法も、表象もそれぞれの場所で異なっていることも興味深い。
上野動物園の職員にアートの真相を尋ねたい
叶うことない願いだろうが、一度、上野動物園のなかの人に、これらのアート作品は、誰が企画して、誰が制作作したのか聞いてみたい。あくまで妄想だが、「隣にある東京藝術大学の美術学部の学生たちがボランティア価格で作ってくれたんです。制作時には学生でしたが、卒業後に有名なアーティストになられた方もおられます。もしこの作品をオークションにかけたら、とんでもない値がつくでしょうね。もちろんそんなことはしないですけどね」などという回答になったらいいのに。
動物の影に隠れてどこまでも脇役の上野動物園のアート作品たち。いつか日の目を見せてあげたい。