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夫には言えない私の秘密

私には、夫には知られたくない秘密がある。
それは、夜な夜な耳かきをしていること。
1日たりとも欠かすことなく、就寝前に自室で、少なくとも30分はごりごり掻いてしまう。この悪癖が、どうにもこうにもやめられないのだ。

健康雑誌などによれば、耳の中の皮膚は、外に出ている肌よりも感覚が鈍いので、多少強く擦っても痛さやヒリヒリを感じにくいため、必要以上に掻いてしまう傾向があるのだという。
あるいは、耳の中はそれ自体が性感帯に近いため、耳を掻くと気持ちがいいと書いてあるものもある。だから耳かきサロンは一定の層の顧客をつかんでいるのであろうか。

(ここから先は若干生々しい表現が含まれるため、敏感な方は読むのをお控えください)

真夜中に訪れる恍惚のひと時

気が付けばもの心ついたときから就寝時間前に耳をかっぽじっていた。
親にも怒られていたし、子供部屋がいっしょだった妹からは「りえぶーのダーティータイムが始まった」と嫌がられていたものだ。
掻きすぎて血が出てしまうこともしょっちゅうだ。
掻き終わった後には、成果物をうっとり眺める。お茶の後で茶器を鑑賞するかのごとく、15分ほど時間をかけて、あらゆる角度から眺めまわす。

私自身、この悪習の気味の悪さは承知していて、ダーティーな一連の行為を夫には知られたくないと、自室で耳をかきながらもビクビクしている。
しかし耳かきは気持ちがいいのだ。掻きながら恍惚としてしまう。その日あった嫌なことなんて、耳を掻いている30分間はなにもかも忘れられる。

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イヤースコープでさらにドツボに

こんなことは止めよう、このままじゃ私の耳がダメになっちゃうと何度も止めようと試みた。
耳かきケースをガムテープでぐるぐる巻きにして、その上に「耳かき絶対禁止」とマジックで書いて鍵のかかる棚にしまったこともあった。
「耳かきは1週間に1度」とスマホにメモして毎朝必ず目を通すようにしたこともある。でも結局誘惑には勝てないで今日に至る。

なぜ耳かきをするのか。それは耳の中が見えないからで、見えないものを探りたいという人間の心理があるからに違いない。だったらイヤースコープで耳の中を見える化すれば、探りたい気持ちがなくなるはずと、イヤースコープを購入したが、これがまたよくなかった。見えるとダイレクトに獲物にたどり着いてさらに快感が増すし、取れそうに取れないものがあると諦められずに何十分でもほじくってしまう。ゲームセンターのクレーンゲームにつぎこむような、あの感じ。
とはいえ、イヤースコープを購入してよかったのは、自分の耳かきの実像が把握できたこと。これまで耳の掃除と思っていた耳かきであったが、実際には皮膚の皮をむいていただけであったことを発見できた。

点耳薬の効果のほどは?

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こんなことじゃいけない、絶対断ち切ろうと、耳鼻科に行った。するとやはり耳の中は悲惨な状態になっていて、外耳部分は傷だらけのローラ。幸い中耳に傷はなかったものの紛れもなく外耳炎だ。先生が「耳に湿疹ができていて痒いから掻くわけ。掻きむしるとさらに痒くなるでしょ、かさぶたも治りかけが一番痒いから余計に掻くんですよ。点耳薬で湿疹を直せば痒くなくなるから掻かなくなりますよ」と点耳薬を処方してくださった。しかし、これがまたすごかった。耳に点耳薬を入れると、プールで耳に水が入った時のような状態になる。その状態で5分放置するとどうなっているかというと、耳の中の皮膚がふやけて、今まで以上にごっそり取れるのだ。それはもう、やるたびに「なんじゃこりゃー」と心の中で叫ぶほどだ。もう何度も点耳薬をもらいに耳鼻科に通っている。先生は「なんで治らないのだろうと」毎回首を傾げている。

もうどうにもとまらない

かくして私は今日も夫に隠れて耳を掻く。
ここから抜け出したいと思いつつ、快感という魔物が私を呪縛する。

そういえば、今は結婚して2人の男の子の母親になった妹が私に言ってきたことがある。
「うちの次男坊、耳を掻く癖があるんだよね。やめろって怒っても、隠れて掻いてるの。すごく嫌なんだ。耳の中が傷つくし、第一気持ち悪いじゃない」と。ああ、甥っ子もあの快感を知ってしまったのか。耳かきって、もうどうにも止まらない。

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