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第0章

「よっしゃ!今日も筋肉キレているぅ!」

きっとまだ朝日が出ていないだろう時間。

いつもこの時間に
このとんでもない筋肉バカな音で、
目が覚めている。

おかげで少し筋肉に興味を
持ち始めたくらいだ。

「筋肉がキレる」って
どういうことだろう。みたいな。

まあ、それは関係ない話で。

”いつも目が覚める”と言ったけど
この場所に来たのは16日前のこと。

この16日間、
筋肉バカな音が聞こえるこの場所、
ぼくが住んでいる場所を
ぼくは「居住スペース」と呼んでいる。

この居住スペースには、
ぼくが生活する為のものが
最低限揃っていて、
特に問題なく暮らしてはいける。

基本的に白い壁に覆われて、
ベッド、机と椅子のセットが1つ。
お風呂もトイレもついているし、
服もある。

食事については、毎食毎食
決まった時間に机の引き出しから出てくる。

しかし、ぼくはまだまだこの場所について
知らないことが多い。

16日目のぼくが、
この場所で知っていることは
たった3つだけ。

1つ目は「ぼくは居住スペースに16日間いること」
なぜ16日間とわかるのか。
それは単純に食事に
「16日目」と書かれているから。

2つ目は「この場所には、
誰かが作った公園というものがあること」

3つ目は「ぼくは何かに選ばれていること」

知っているのは、たったこれだけで、
特に3つ目「何に選ばれたか」は
全く分からない。

ここに来てから6日目までは、
何に選ばれたのかを
考えていたけど、その後はやめた。

ただここに来る直前に
「あなたが選ばれました」
と言う言葉が聞こえて、
次の瞬間には、もうすでに
この場所の前に来ていた。

だから何かに選ばれたのは、
あっていると思う。

んで、もう1つの「公園」は、
広場のようなもので、
この場所に来た時
入り口から居住スペースに向かって
歩いている最中にみた。

そこには、写真でしか見たことがない
「草」や「木」らしきものがあった。

「綺麗だったなぁ。」

こうやって言うのも
読んでいる人からしたら
変に聞こえるかもしれない。

でも、居住スペースにくる前、
ぼくがいた場所には、
茶褐色の地面しかなかった。

「自然?」とされるものはない。
「水」と言うものもなければ、
「木」と言うものもない。

この「自然」と言うのは、
「写真」というものでしか
見たことがない。

まだ子供の頃に見ていた写真からだけ。

でもその写真に写るものは、
素晴らしく綺麗だった。

その写真には、ひたすらに「道」があり、
道の両端には「木」がたくさん
生えている。

たくさん生えている「木」の下には、
「水」と言うものが流れているようだ。

その写真には
「緑が生茂るCH-19にて」と
書かれていたのをはっきりと
覚えている。

最初は、よくわからないものだった。
が、不思議と見れば見るほど
ぼくは興味を持った。

それからぼくは、
「CH-19」という場所に行くことを
目標にして生きてきた。

「その「CHー19」で
「自然」と呼ばれるものを見たい。」

「あの素敵な世界を味わいたい。」

そう思って生きていた。

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