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青天の霹靂

青天の霹靂(せいてんのへきれき)という言葉をご存知でしょうか?突発的な大事件など、予想もしていなかったことが起こることを意味する言葉です。元になっているのは雷で、青く晴れた空に突然起こる雷の意味から、上記ような例えとして使われるようになりました。英語でも同じ意味を持つ言葉があり、Bolt from the Blue を日本語訳すると青天の霹靂になります。似たものに、Out of the Blue がありますが、こちらは突然や予想外を意味する言葉です。

かなとこ雲上部より落ちる雷

雷の発生には積乱雲が必要不可欠であり、青空に雷が起こることはあるのでしょうか?雷は積乱雲内部で発生する静電気による放電現象です。積乱雲内部で雹や霰がぶつかり合って発生する以外に、火山の噴火による火山灰や水蒸気の摩擦で発生することもありますが、雲ひとつない青空で雷が起こることはありません。では、なぜこのような言葉が生まれたのでしょう?

答えは雷の元になる、プラスの電気とマイナスの電気にありました。積乱雲内部では上昇気流により持ち上げられた雹や霰が雲内で激しく上下動を繰り返しながらぶつかり合っています。氷晶と呼ばれる軽く小さな氷の粒はプラスの電気を帯び、上昇気流で持ち上げられて雲の上部に溜まっていきます。一方、雹や霰は氷晶よりも大きく重いため雲の下部に溜まり、マイナスの電気を帯びます。プラスとマイナスは互いに引き寄せ合うため、雲内に電荷が溜まってくると雲の外に向けて放電が始まります。それが雷です。

落雷には正極性落雷(プラス)と負極正落雷(マイナス)があります。夏の関東地方で発生する落雷は、ほとんどが雲底付近から起こるマイナスの落雷です。プラスの落雷は日本海側の冬季雷に多く見られ、一発雷とも呼ばれマイナスの落雷よりも威力が強いと言われます。夏の関東地方でも稀にプラスの落雷が見られます。かなとこ雲の上部から起こる落雷で、雲から離れた位置に落ちてくるのが特徴です。

積乱雲上部からプラスの落雷

勘のいい人ならもうおわかりだと思います。そうです、青天の霹靂の元になった青空に起こる雷の正体はプラスの落雷です。積乱雲の上部で起こり、雲から10数キロ離れた位置に落雷することもあるため、まだ青空が出ているのに雷が落ちた、晴れているのに雷が落ちたとなる訳です。私も何度か経験していますが、まだ雲は遠く日も差しているのに、突然背後に落雷があり肝を冷やしたことがあります。

フレームアウトしたプラスの落雷

プラスの落雷を予測することは非常に難しく、知識や経験値だけで回避できるものではありません。落雷の中でも最も怖いものであり、撮影に関しても出会い頭的な要素が大きくなります。狙って撮ることが難しいため、全体を収められず尻切れトンボになってしまうことが多くなります。積乱雲の全体像が見える離れた場所から、いつ起こるともわからないプラスの落雷を待つのは根気と努力が必要です。

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