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白髪記念日
分け目から ぴよんときらっと 光るから
2月16日は 白髪記念日
洗面台の鏡越しにそれを発見した時、頭の中に「おおっ」という音が響き渡った。
なんと白い毛が生えているではないか。
ハツモノである。人生におけるハツモノ。
これは西を向けばいいのか東をむけばいいのか、と妙にソワソワしながらも
私はなにかめでたいものとしてソレを眺めていた。
もちろん抜いても西に向かって食べてもいないし、お赤飯を炊くこともない。
30代半ばごろからいつかは生えてくるだろうとは考えていたが、
その時の自分のリアクションについて、かねがね
「ああ年をとってしまった。。。」とかショックとかうけるのかなぁ、などと想像をめぐらしていた。
ところが実際に発見したときの私のリアクションは意外にも「感動」であった。
感動というと語弊があるかもしれないが、
コロンブスなら私の気持ちをわかってくれるかもしれない。
(メキシコを愛してやまない者であるため、歴史上の「発見」は「出会い」と呼ぶことはここでは割愛する。ってしてない、言っちゃった。)
そしてその後、想像していた自分の反応と実際の反応のギャップの整合性を図る目的で、脳内国会議事堂における閣僚級話し合いが始まった。
防衛大臣 「ちょっとキミ、困るんだよ。世間的にはこういう時女性は『うわっ、最低』と言うもんだ。しかもその声はちょっとヌメッとしたものでなくてはならない。でないと国の威厳にかかわるんだよ。」
文部科学大臣 「抜くべきか、抜かぬべきか、それが問題だ・・・。」
経済産業大臣 「抜く場合と抜かない場合の経済的打撃について現在省をあげて計算させております。明日には概算が出る予定です。」
財務大臣 「ごほっ、ごほっ」
外務大臣 「現在他国との関係は安定しておりますが、このまま増え続けたときに我が国が毅然とした態度を示せるかどうか、早々に方針を固めるべきだと存じ上げます」
と全員が同時に喋るものだから非常にうるさい。
ちなみに参加しない閣僚や居眠りもいる。そろそろ戒告処分しようと思っている。
普段は議員たちの会合だが、今回は何故か閣僚級であった。
元首である私としては、彼らの意見に耳を傾けながらも、どうも腑に落ちない。彼らの視点からは私が最初に感じた「新鮮な驚き」はごっそり抜け落ちている。
毛だけに。
たかだか一本の白髪に国家を揺るがす議論が巻き起こる時点で、そろそろ少しのコンサバだけ残して総選挙を行うべきかもしれない。
コンサバも必要なのは我が国では多様性も重視されるからである。
だが彼らの言に従って、本来の自分の感覚とは反対のことを行ったところで
残るのはいつも自己が矛盾することへの後悔や罪悪感だ。
整合性を大事にするのであれば、その最初に感じたことを大切にすることこそこの国には必要なことかもしれない。
そんなことに気がついた2月16日。
自分の感覚を信じること。
一本の白髪はミドルエイジに突入しつつある私のこれからの人生におけるそんな大切なことを教えてくれた。
だから私にとって2月16日は白髪記念日。
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