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夏の恋は呪いだった。

終わりの見えない外出自粛に少し飽き飽きしてきた。
毎年恒例の部署のバーベキューは言うまでもなく中止となり、楽しみにしていた夏フェスも花火大会も、軒並み開催が見送られた。

荒くれだった気持ちでTwitterを眺めていると、一つの投稿に目を惹かれた。

♯守りたい夏

アサヒ飲料の「三ツ矢サイダー」による画像投稿キャンペーンらしい。ハッシュタグとともに添えられた過去の夏の写真を眺めていると、「ああ、今までみたいな夏は過ごせないのかもしれない」と改めて実感が込み上げてきた。

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夏というのは、不思議な季節だ。いざ訪れると暑いし蚊に刺されるし、ゲリラ豪雨に遭うしで「早く秋にならないかな」と思うのに、日が短くなり、鈴虫が涼しげに鳴く頃には夏の終わりを寂しく思う自分がいる。

20歳を境に、野球や川遊び、部活に明け暮れた楽しくてたまらなかった夏から、少しずつ変化を始めた。

キャンペーンの趣旨とは異なるかもしれないが、私にとっての大人の夏をここに記しておきたいと思った。

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私は昔から、よく夏に恋をする人間だった。

中学生や高校生の時は甘酸っぱかった。気になる子と一緒に夏祭りに行ったり、夏休み中毎日メールをしたり、恋人の夏大を応援しに行ったり、まさに青春だった。好きになるのも付き合い始めるのもだいたい夏で、夏はこんなにも人との距離を親密にするんだと思っていた。

夏の定番が、部活後に必ず飲んでいたサイダーからビールに変わった20歳の頃から、夏の恋は上手くいかなくなった。

「夏の恋はすぐ終わる」なんて言われているけれど、私の夏の恋は終わらせたくても終わらないものばかりだった。

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大学2年の夏。大学生らしい始まり方をした関係は、私の中でいつの間にか恋になり、同じ年の冬に真っ向勝負で告白してすっぱりと振られたにも関わらず、そこから4年しっかり引きずった。4年間一途に好きで居続けたわけではなかった。でも、別の誰かと付き合っていても、頭の片隅にその人は居続けた。

2度目の夏の恋は、大学4年生の就活が終わった頃だった。そこそこ泥沼な別れ方をした後に思った。

「夏の恋は呪いだ」

もう呪いにはかけられまいと唱えながら迎えた社会人1年目の夏。
性懲りもなく同じ職場の先輩に一目惚れした。「好きだな」と思い浮足だった日の夜、「また夏か」と呆れた。

その先輩には、満を辞して不意打ちで告白して予想どおりに振られた。もう後腐れなく元の関係に戻っているけれど、私は今でも好きだから、今回も立派に夏の呪いにかかったと言えるかもしれない。

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それでも、私は夏が好きだ。
好きな人と2人で歩いた蒸し暑い夜道も、「夏は外飲みでしょ」と近くの公園で飲んだビールとたばこも、好きだった人に会える一年に一度夏だけの飲み会も、誘いたいなと思いつつ結局勇気が出なかったフェスも、夏がくれたものだった。

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今年の夏は、そんなビールも飲み会もフェスも味わえないかもしれない。

私にとって、夏は1年で一番感情が突き動かされる季節だ。1年間の最高も最低も、だいたい夏に詰まっている。

「今年は夏の呪いにかからなくてすみそうだ」と安堵しつつも、寂しく思う自分がいる。歳を重ねるほど、いつの間にか夏が待ち遠しくなっていた。

早く、いつものような最高で最悪な夏が戻ってきますように。

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