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繋がりすぎてしまう社会に疲弊した私を救ってくれたゲーム

最近、ひどく疲れていた。

自粛という言葉が出始めてから1年が経とうとしている。

Twitterを開けば自由と平等を求めて誰かが怒っていて、好きなアイドルのまとめサイトでは敵なのか味方なのかわからない人たちが運営体制や選抜メンバーに関してケンカを始める。TikTokでは「コロナ禍に不謹慎だ」と叩かれたTikTokerが火に油を注いでいる。最近は新しいSNSが盛り上がっている。

会って話したい人とは会えないのに、見たくもない知らない人のやりとりばかりが入ってくる。人と会えないのに、繋がりすぎている。

せめてもの抵抗で害のないツイートをいいねしていたら、いいね欄は猫と犬と子どもの動画だらけになっていた。

1人でいるのに、1人になりたいと思った。

家で映画を観たり本を読んだりしても、人の感想や考察が気になってしまいスマホを手にしてしまう。何か別の娯楽が欲しかった。意識を別の世界に飛ばせる、没頭できる娯楽が欲しい。

ふと思い出して、棚の奥底に手を伸ばした。


3年前、ライブ後の高ぶったテンションでNintendo Switchとともに購入した『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』だ。

元々はリアルタイムで誰かと一緒にゲームをするのが好きだった私は、2週間ほど熱狂してすぐに飽きてしまっていた。なんとなく取り出したのは、最近ハマっているYouTuberがライブ配信でゼルダをプレイしていたからだ。

そもそも、私はゼルダシリーズが怖くて苦手だった。

初めてゼルダをプレイしたのは、小学校低学年の頃。
我が家初めてのテレビゲーム、ゲームキューブを購入したときに私がねだったのが『ゼルダの伝説 風のタクト』だった。

ゼルダの伝説は、基本的にリンク1人で冒険をする。広野を走り、獣と対峙し、海を渡る。

私にはこれがとても怖かった。

夜深く、リンク1人で船を漕いでいた時に大嵐に遭って大泣きしたし、1人で魔獣島に忍び込むときは怖くて隣に父親を召喚した。当然夜はプレイできず、部屋に日が差し込む真っ昼間のみプレイしていた。ゲームと現実にギャップがないとできなかったのだ。

荒くれた自然と獣が潜む世界に、人ひとりで乗り込む圧倒的孤独感に支配され、怖くて仕方がなかった。

そんな軽いトラウマがあったから、風のタクト以降ゼルダの伝説シリーズはまったくプレイしてこなかった。風のタクトすら序盤中の序盤でメンタルがやられて放棄した。

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ずっと家に閉じ籠っているからか、3年前に触れたブレスオブザワイルドの壮大なオープンワールドが懐かしく感じたことにも後押しされ、久しぶりにソフトを差し込んだ。

ブレスオブザワイルドもだいぶ序盤で飽きてしまったため、ストーリーはほとんど進んでいなかった。そもそも私はターン制のない戦闘ゲームは苦手だった。放置していたボス戦には手をつけず、とにかくまだ訪れたことのない場所に行こうと思った。

地図のまっさらな部分を目指して、とにかく走った。夜中に突然降り出す雨、誰もいない山々の狭間、絶壁の崖、突然現れる獣。他のシリーズはわからないが、このリンクにはマサラタウンのような故郷も、狩りの後に帰るギルドもない。帰るべき場所がないことも、孤独さをより一層引き立てた。

まだ少し怖かったけれど、朝焼けや夕暮れを見たり、小鳥のさえずりを聞いたり、こっちの世界では今なかなか見れないような大自然の中を駆けていると徐々に心が軽くなっていった。

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朝方、村から遠く離れた岩場をせっせと登っていた。

戦うとすぐ力尽きる私は、とにかく獣から逃げていた。逃げるように岩場を登り切ったときだった。

人がいた。

村や馬宿もない、誰もいない大自然の中に、1人の人がいたのだ。

人の姿を捉えた瞬間、一気に身体の力が抜けた。

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孤独を拭い去るために常にSNSをチェックしていた挙句、繋がりすぎて疲れ切ってしまった。1人になりたちと大自然に1人身を放ってみたら、想像以上に1人すぎて孤独感を感じて怖かった。

そして、赤の他人であり同じ冒険者である人と出会い、孤独を拭った。

ああ、こんな狂った世界でも同じように1人で旅している人がいるんだな。

リンクには、マサラタウンのような故郷も、狩りの後にいつも待っているギルドもない。けれど、だだっ広い大地に突然現れる馬宿や、村の日常、リンクのような冒険者に出会うことができる。

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安定的な安心感はないけれど、不意に人出会った時、とてつもない安心感を感じる。あれだけ苦手だったゼルダの伝説の孤独感も、この出会いのためにあると思うと悪くないなと思えた。孤独は、新たな出会いのスパイスなのかもしれない。

灯りや狼煙が見え、BGMが切り替わる瞬間が私は大好きだ。


繋がりすぎて疲れてしまった2021年の冬、部屋よりも小さな箱の中に広がる壮大な世界に、心地良い孤独感と出会いの感動を味わえた。


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