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部活 ④

【佐藤 A】
マネージャーで3年生の佐藤愛凛のロッカーの扉に手を掛け、愛薫はかつてないほど興奮していた。上履き以外の愛凛の匂いを嗅げる…。そう思っただけで愛薫の股間ははちきれそうに膨らみ、パンツにはカウパーの染みが出来ていた。 

カチ…扉は軽い金属音をたてて開いた。同時に何とも言えないホロ苦いような匂いがフゥッと香ってくる。
ロッカーの中にはジャージの上下がハンガーで吊られていて、上の網棚にノートが2冊とペンケース、そして小さなポーチにヘアブラシ。
ポーチはどぎつい紫のヒョウ柄に髑髏マークの不良たち御用達ブランドのものだ。
下の網棚には数枚のタオルと救急箱。さらにその下、ロッカーの底には白いスニーカーが置かれていた。
真っ先にポーチに手を当てた愛薫は、そのフワリとした感触から『中身は確認する必要ないな…未使用品に用はないっつうの』と、隣のヘアブラシを取り出した。
数本の毛髪が絡みつくブラシを愛薫は手で包みこむようにして顔に当て、思い切り嗅いだ。
フローラル系の香りの中に混ざるムッと蒸れたような脂臭さを愛薫は逃さなかった。

『あぁこれが佐藤さんの頭の匂い…』

愛凛は愛薫の事を「田中」と苗字で呼ぶので自然と愛薫も「佐藤さん」「佐藤先輩」と呼ぶようになっていた。
ブラシを顔から離してもう一度よく見ると、毛髪と一緒に小さな白いフケが所々にちりばめられている。
愛凛も他の多くの女子生徒と同じく人気絶頂のアイドル歌手と同じ髪型だったが、髪色はかなり茶色だった。
染めているか脱色かで頭皮も傷んでいるのだろう。愛薫は絡みついた毛をそっと外してフケを包むように畳んで上着のポケットにしまった。

『ブラウスはないのか…』
いつも愛凛が着ている開襟ブラウスはなかった。

部活動中、常にベンチに座ってふてくされた様子で何かノートに書き込んでいる愛凛…折り返されたジャージの裾から見える足首と白い三つ折りソックスを思い浮かべながら愛薫はジャージに手を伸ばす。ロッカー扉の内側には10✕15くらいの鏡と、黒地に金文字のステッカーが2枚。ロック歌手とパンクバンドの名前が漢字で書かれている。
『ほんとにこんなの聴いてるのかな…』
ステッカーを横目に見ながらハンガーごとジャージを取り出してそっと床に広げる。
ズボンの裾が折り畳まれたままなのが艶かしい。
愛薫はジャージの足元に跪き、土下座するように股間部分に顔をうずめた。
嗅覚に全神経を集中させて息を吸い込む…。

『だめか…』

砂埃と柔軟剤の匂いが微かにするだけだった。
裏返して、間違いなく愛凛の性器が当っているあたりも嗅いでみたが同じだった。
ふぅ…とため息をつき、次に腋の部分に顔を埋める。

『あ…』

慌てて上着を裏返して腋の部分を鼻に押し付けた。
汗の匂い…それも腋から出るあの酸っぱいような、ほろ苦いような汗の匂い。
『あぁ、これが佐藤さんの腋の匂い…右のほうが匂いが強い…』
愛薫は夢中で鼻を鳴らす。上着を持ち上げ、正座したまま腋に顔を埋めて堪能する…。
愛薫の股間はすっかりテント状態になっている。
『中にTシャツ着ていてもこれだけ匂いが残るんだな…』

しかし何度も何度も深呼吸しているうちに匂いが薄れてくる気がしてきた。鼻が慣れてしまったのかも知れないが、もっともっと…と嗅いでるうちに匂いを感じなくなってしまった。

『はぁ…』
ため息をつくと同時にロッカー内のスニーカーが、目に入った。
見るからに新しく、ほとんど履きこまれていないスニーカー。
中敷きに指跡すらついていないスニーカーを愛薫は取り出して鼻を入れた。
『ふん、やっぱりな』
新しいゴムの匂いしかしないスニーカーを戻してからジャージを慎重に整えてロッカーを戻し、網棚に置かれた2冊のノートを手に取った。

ピンクと薄いブルーの大学ノート。愛薫はまずピンクのノートを開く。ズボンのテントはすっかりしぼんでしまった。

『おぉすげぇ』

1ページ目には女子部員の氏名、ラケットの重さやグリップサイズ、ガットの種類や張りの好みまで記されており、その後のページには練習試合を含めて全ての試合の日時、天候、コートコンディションからスコア、さらには備品在庫や購入の出納まで細かく書かれていた。

『こりゃぁオニコが佐藤さんをベタ褒めする訳だわなぁ』

オニコというのは女子テニス部の顧問、山崎邦子教諭。保健体育の女教師で、髪はいつも短く刈り上げて大股で歩きながら生徒たちを怒鳴り散らすのでオニコ。
このノートは愛凛が記入し、都度オニコに提出しているのであろう。各ページ末端にオニコの印が押してある。

なにより愛薫が一番惹かれたのは愛凛の文字だ。少し右肩上がりで、はねやはらいの先端がとても繊細に消える綺麗な文字。他の女生徒が書く丸文字とは一線を画した大人の女性らしい文字に愛薫はうっとりした。

『こんな綺麗な字を書く人の腋の匂い嗅いじゃった…』

愛凛の文字をもっと見たくてブルーのノートを開いてみたが、男子部員の氏名が書かれているだけだった。

『プッなんだよ…まぁ書くこともないか。練習も試合もしないからな』

しばらくは愛凛の手によって書かれた【田中 愛薫】という自分の名前の文字を指で撫でていたが、ふと我に返りノートを元に戻して扉を閉めた時…

「すみませんすみません、でもよかったぁ!りぃ先輩残っててくれて」
「残ってたんじゃない!戻って来たの!次はからはジャージで帰りなよ」
「え〜あたしジャージじゃ電車乗れないもん」

2人の話声と同時に鍵か差し込まれる音がした…


つづく…






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