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忘れられない学校の先生

母がいなくなり兄弟姉妹で暮らしていた頃

児童養護施設に入る前の転校した小学校で
担任になった先生は、名前も顔も忘れてしまっ
たけれど若い男性の先生だった。

私達の生活がどんどん荒み、私が学校を行ったり
行かなかったりしていた時、何度か先生が家に来てくれた事があった。

先生は、私の家の生活状況を知り色々気にかけてくれていたと思う。

ある時、学校行事で遠足があって
お弁当も水筒もお菓子も持たずに参加した私。

クラスで私に話しかける子は誰もいなく
私も誰かに話しかけることもなく
遠足でぽつんと1人きりだった…。

お昼ごはんの時間になり、みんなそれぞれ
レジャーシートを敷いて各自でお弁当を食べた。

その時、先生が私に「おいで」と言って
私を自動販売機まで連れて行って
「何飲みたい?」と聞いてきた。

私はガラナを指さして、先生はガラナを
買ってくれた。

それからみんなのいる場所に戻り
先生のそばに座った私。

先生が「はい」と言って私におにぎりをくれた。

先生の手作りおにぎりだった。

私は、学校でいつも無表情で無口で
いつも黙っていたのでその時もただ
黙って何も話さず無言でおにぎりを食べていた。

おにぎりに味がしなかったのを覚えている。

ある時は、姉から渡された学校の給食費を
先生に渡さず、そのお金でお菓子を買い
先生に給食費の事を聞かれ、お菓子を買った
事を伝えたら「先生の方で給食費出しとくよ」
と言ってくれた。

給食で余ったパンを届けてくれた事もあった。

ほんの数ヶ月しかいなかった学校で
ほとんど不登校だったけれどその先生の事は
今でもふと思い出す。

味のしなかった先生の手作りおにぎり。
正直美味しいと思えなかったけれど
やさしくてあたたかな思い出として
今でも私の記憶に残っている。


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