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第69話「エマージェンシー訓練2週目」

CA訓練生達にとって最も過酷なエマージェンシー・トレーニングも2週目に突入した。

最初の週ではB767-200&300型機のドア操作(Armed/Disarmed)やOver Wing Exits(羽根付近の取り外し型出口)の扱い方、ライフ・ラフトとスライド・ラフト、サバイバルキッド等を学んだ。

そして、先週の金曜日にEmergency Drills(CAの担当ポジション毎の緊急脱出手順)とEmergency Equipment Location(緊急事態用の道具の配置場所)のテストが行われ1人を除いた12人が無事に試験をパス出来た。

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「あー、今日から747か~。とりあえず、半分は終わったけど、早く全てのテストをクリアして開放されたいね。」

カツヒロが教室に入るとジェームスが話しかけて来た。ジェームスはカツヒロと同じ28歳。気さくでとても話やすい。元バーテンダーと言う経歴だけあってアルコールや飲み物の知識が豊富だ。

M4.カツヒロ

「そうだね。まだ、エマージェンシートレーニングも半分残っているから、安心できないね。」

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側にいたサラが会話に加わった。サラは本当にホスピタリティ精神が旺盛で面倒見がとても良い。ショートカットが良く似合い、性格は穏やかで、いつもニコニコしている。時々、カツヒロが英語がわからなくて困っていると、そっと分かりやすい単語や表現に変換して助けてくれた。

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「だけど、無事に747のトレーニングが終われば制服が支給されるから、楽しみだよね。」

近くにいたスーザンも会話に加わった。彼女はストレートのロングヘアが特徴で、明るく元気な性格。どんな事にも積極的で、トレーニングの中も良く手を挙げて発言をする。きっと将来は客室責任者や会社のマネージメントに携わるような気がした。

ロードオブリング号

先週でB767のトレーニングが終了し、今週からはB747の訓練が始まりました。同じボイングの機材でも767と747では、様々な違いがあり、例えばドアの形も操作方法も全く異なる。

65.767 ドアチャレンジ

※B767などのドアイメージ(ハンドルが上下に動く。)ちなみに747だと2階席のドアはこのタイプだか、それ以外のドアハンドルは時計周り、又は反時計周りに約180度回して開け、締めをする。)

脱出ドア

※B747、B777などのドアイメージ。(ドアハンドルは時計周り、又は反時計周りに約180度回して開け、締めをする。但し、B747の2階席のドアハンドルはB767と同じでハンドルが上下に動く)

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Emergency Drillsの基本パターンは似ているが、それ以外の緊急脱出用の道具の配置場所やCAの人数や役割が異なから、これを新人FAが同時に覚えようとすれば、頭の中が混乱してしまう。

やはり別々の週に分ける事が最も効率よいトレーニングのやり方だとカツヒロも感じていた。

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美紀子の姿が見えないのを不思議に思った香織がラリーに尋ねると、ラリーは少し考えこむようなしぐさをした後、ゆっくりと答えた。

「残念だけど再度B767のトレーニングを受ける事になったよ。こう言うケースは稀だけど、これまでも何度かあるので特別と言うわけではないから、心配しなくても大丈夫だ。」

「えー、そうなんですか?もし、私がB747のトレーニングで不合格だった場合は美紀子と同じクラスになるんでしょうか?」

カオリは少し不安になってラリーに質問をした。

するとラリーは、優しい表情で子供に言い聞かすように言葉を伝えた。それはカオリに対してだけでなく、12人の新人クルーの全員に向けてだった。

「エマージェンシートレーニングは航空安全局の規定に従って行われる大事な訓練だけど、会社は新人CAをトレーニングで落とすことを目的としているわけではない。だから、皆は心配せずに残りのトレーニングに集中して、無事に卒業してくれ。」

・・・。

B747のトレーニングは粛々と進みました。B767の時と同じように、非常ドアのドアモードをマニュアルとオートマテックの切り替えや、実際にジャンプシートに座ってハーネスを外し、非常ドアを開けるまでのシュミレーションなどテンポ良く実施して行く。

脱出ドア

※ジャンプシートとドアオープンのイメージ写真

ジャンプシートで行うシミュレーションは7通り用意されている。例えば、地上に不時着した際、担当ドアの外側で火災が発生しているケース。この場合、Door unusable (ドアが使用不可)と判断し、Disarm Door,Remain at door, Redirect passengers(ドアをマニュアルモードにし、ドア付近に待機、別方向へ乗客を誘導)する。

他にはオーバーウィングのドア担当の場合、他のドアの脱出用スライドより距離が長く地上まで確実に届いているか確認する作業が加わったり、「水上着陸の際にラフト(イカダ)として使用出来ない」等の情報を瞬時に判断して乗客を適切に誘導する。

747の滑り台

※B747の脱出用スライドのイメージ

そして、12人全員が金曜日に行われた乗務資格テストを無事にパスし、2週間の緊急脱出訓練が終わった。



つづく

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