第66話「ライフラフト・脱出用イカダ」
午後の授業は、ライフラフトの実物を使ってのトレーニングが行われた。
ライフラフトとは、一部の飛行機で羽根の上の部分から脱出する際に使うもので、一般的なスライドラフトとは異なる。スライドラフトは非常口のドアが開いたら自動的に膨らむ脱出用の滑り台とイカダが兼用になっている。
B747やB777,B787など、大型機の場合、スライドラフトが使われているが、B767は300、200機共にオーバーウィング付近に、ライフラフトが備えられている。水上着陸の場合、米俵のような楕円の形でコンパクトに収納されているこのライフラフトを取り出し、更に脱出用のドアを取り除いたスペースから、それを外に投げ出し、ロープを引っ張るとライフラフトが自動的に広がる仕組みになっている。
インストラクターのラリーが質問を投げかけた。
「皆は、飛行機に乗る際にきちんと、安全のしおりを読んでいる?」
「はい。もちろん。」
即座に訓練生たちが答える。
「それは、素晴らしい。それでは、B767のライフラフトがどんな形をしているか、知っている人は手を挙げて。」
ケイト、キャシー、レイチェル、ジェームズが手をあげた。
4人はとても自信があるようだったが、それ以外の6人は、一瞬、固まった。カツヒロも安全のしおりは大体見るようにしているけど、しっかりと細かな内容まで覚えていない。
ラリーは少し、ニンマリして、
「客室乗務員を目指していた君たちにしては、少し人数が少ないね。」
と茶化した。
「じゃあ、ケイト答えて、君はUKエアーのFA経験者だっから、分かって当然だろうけど。答えて」
「はい。前の会社でも、767の乗務していましたから、知っていて当然です。形は8角形で大人が40~50人程度、乗れるようになっています。」
「おー、さすがケイト。」
一同が彼女に拍手をおくると、ケイトは「まあね。」とそっけなく返した。
・・・。
「それでは、今から実際のライフラフトに乗り込み、キャノピーと呼ばれる日よけ屋根を皆で取り付ける実地トレーニングを行います。筆記用具を持って私の後について来て。」
ラリーの合図と共に一同は教室を後にた。EP(Emergency Procedure)トレーニング施設もハンガー(航空機の格納庫)に隣接していて、非常に大きなスペースになっている。
既にライフラフトが出来上がっている2階の一角に進み、早速、全員がラフトに乗り込んだ。
※ライフラフトのイメージ写真(実物はもっと大きいです)
実地訓練は、先ずサバイバルキットが入った袋から、空気入れ、キャノピー(屋根)になるカバー、それを支える支柱、空気入れなどを取り出す事から始まった。
ジェームズとアンデイが交代で空気入れを使って、真ん中でキャノピーを支える支柱に空気を入れ込む。
残り11人は屋根にカバーを広げ、ラフトの外脇でステンレスのポールを差し込む位置に、ポールを差込んだ。それが済むと順番にキャノピーを取り付けた。
「フライトアテンダントにとって、最も必要な要素は何か?それはやっぱり、チームワークだろう。」とカツヒロは思った。13人が力を合わせて一つのゴールに向かう、この感覚が非常に心地よく、仲間を信頼し助け合う素晴らしさに浸っていた。
このキャノピーは日中の強い日差しから乗客を守ると共に、雨水を貯める事も可能となる。サバイバルキットは、カッター、酔い止め、サングラス、手鏡、水につけると明かりがつく、懐中電灯、笛、浮き輪、ロープ、バケツ、位置情報を伝える花火、などが、入っており、それぞれの役割をラリーが説明した。
その後、キャノピーとサバイバルキットを元の袋の中に戻し、教室に戻りった。それから、エアクラフト・マニュアルの復習、主に脱出用ドアの操作やスライドラフト(滑り台とイカダ一体型)とライフラフトの設置方法など座学で学んだ。
「明日は767のドア操作とエマージェンシードリルを行うので、しっかりマニュアルを予習してきてください。それと、木曜日に767のエイマージェンシー・イクイプメント(道具)の場所とドリルのテストを行います。」
ラリーは、その日の授業の終わりに宣言した。
「うわー、いよいよトレーニングで最も大変なEPドリルがまっている。」このドリル試験は、常に100%が求められるから、一文字一句も間違えられない。今日から必死に覚えよう。
全員がそう思いながら、帰宅した。
つづく。
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