見出し画像

第56話「新人CAの機内見学ツアー」

自己紹介が一通り終わると、会社のこれまでの歩みがまとまったDVDを見ることになった。設立当初1940年の頃の白黒写真から始まり、これまで就航した路線、保有機材、会社が目指すビジョンなどがナレーションと共に紹介されて行く。所々、現役の先輩達が登場ながら進むと言った具合だ。

およそ10分のDVDが終わりに差し掛かった所で、CEOのレイモンド・ジョーンズ氏が登場した。彼は「まもなく迎える21世紀に向けて全社員が一眼となって頑張ろう」と言ったような事を力強く述べてDVDが終了した。

キウイエアラインは、ベストエアライン賞とか案外たくさんとっているんだと、改めてカツヒロは思った。ニュージーランドは人口規模でいったら小さい国だけど、ラグビーのオールブラックスやヨットレースの最高峰アメリカズカップでは優れた成績を収めている。

美味しいワインや豊かな自然がもたらす食材、乳製品やラム肉も有名だけど海の幸や魚介類も良いものが取れる。それを上手に調理して機内で提供する。そして、人懐っこいフレンドリーなクルーの存在もキウイエアラインの評価を高めているんだろう。

次にインストラクターのミッシェルが、テーブル毎に模造紙と色付きのマジックを数本ずつ配布した。

「今から、グループワークを行います。ワークのテーマは、①この5週間で各々が達成すべき目標、②良いフライトアテンダントになる為に必要な要素を5つあげて下さい。制限時間は15分間。それでは、スタート」

ミッシェルはそう言うと、ストップウォッチを眺めながら、各テーブルを回り始めた。

カツヒロはケイト、スーザン、サラと一緒のグループ。一つ目の目標は「この5週間で必死に勉強し、素晴らしいFAに成長する事」にした。2つ目の良いフライトアテンダントになるために必要な要素は“Smile”と言う小学生でも思いつきそうな一つをあげた。

15分が過ぎると、グループ毎に前に出て発表する事に。1グループ約5分でワークの結果を発表した。

午前中の授業は11時半に終了。

ミッシェルが全員を施設内のフードコートに案内し、それから約50分のランチ休憩がスタートした。クラスメイトの内、半分近くはサンドイッチやブレークファーストバー、フルーツなどをお弁当を持参していたので、フードコートを利用したのは6名だけ。カツヒロはパスタとフライドポテト、オレンジジュースをオーダーした。周りにはつなぎ服姿のエンジニア達もランチを取っていた。皆、午前中の仕事を終え、ほっとした顔をしている。

彼らがしっかりと飛行機を整備してくれるから、安全にフライト出来る。大切な仲間であり、とても頼りがいがある。俺もフライトアテンダントになって、早く会社に貢献したい。

とカツヒロは思った。

午後のトレーニングはハンガーブリッジに停車中のB747-400型機に内で行われた。

バシネット

クルーになるまでは、殆ど気にする事が無かったバッシネットと呼ばれる乳幼児用の簡易ベットの使い方を学んだ。体重10Kgまでの赤ちゃんが利用可能とメモを取ったもの、体重10kgが生後何ヶ月程度の赤ちゃんに当たるのか・・・?その辺の知識は全くなかったので、後でネットで調べようと思った。

トイレのドアロックを外側から開く方法(セキュリティ上の理由で、飛行機のトイレは内から鍵をかけても、外から開ける方法があります。)や機内放送をするインターフォーンの使い方も実際に練習した。

脱出ドア

意外に感じたのは、400人近くお客様が搭乗する機体でも、ギャレー(厨房)は案外、小さい。もちろん、ギャレーは1箇所だけはないので、B747だとファーストクラスに1、ビジネスクラス1、2階席に1、エコノミークラス2と全部で5箇所あるから、それで十分まかなえると説明だったけど。

JAL B767 ギャレー

※B767のギャレーの写真(会社、機材によって異なる)

初めて見学した、クルーレスト(乗務員用の休憩室)を見たときは、少しだけ鼻高な気分に。飛行機好きな人にとってコックピットの見学も感慨深い物があるかも知れませんが、クルーレストは中々、見る事の出来ない秘密の部屋。自分がCAの候補生になれたのだと、実感した瞬間だった。

機内の様子

実機を使ってのトレーング兼、見学ツアーは約1時間半ほどで終了。

CA経験があるケイト以外は皆、目を輝かせてたが、教室に戻ると、B747-400型機とB767-300型機、B767-200型機のレイアウトシートが渡された。

ミッシェルから信じられない言葉が伝えられる。

「皆、機内見学ツアーは楽しかった?今、配ったレイアウトシートだけど、今週中に全て覚えて下さいね。2日後にB747,4日後にB767-200,300の機内レイアウトテストを行います。90点以下の方は落第だから気を付けて下さいね。」

「え~。こんなにたくさん覚えられないよ~。」

訓練生からの悲鳴が響き渡ると、ミッシェルは、笑顔で付け加えた。

「これは、まだ序の口だから、来週からEP(Emergency Procedure)を始める前の本のウォーミングアップです。頑張って下さいね。」

トレーニングは厳しいと聞いていたけど、やっぱりCAの仕事は楽しいだけでは務まらない世界だから、本気で頑張らないと首になってしまう?

カツヒロは不安を抱きつつ、一日目のトレーニングを終えた。


つづく。

【この物語を映画化やTVドラマ化したい】
そのために活動資金を募集しています。
5,000円で1回分、(「この記事は〇〇さんの提供です」のような感じで)ブログのスポンサーとしてお名前を掲載させていただきます。
※noteのサポート機能からでも開業資金の寄付を募集しています。
※合わせてTV局様や映画プロデューサー様、出版社様、マスメデイア様からの連絡もお待ちしております。
-----------------
【YouTubeチャンネル】
スチュワード物語とはちょっとだけ関係しますが、「現役CAユーチューバー フミ」というチャンネルでCAネタやエアライン業界への就職ノウハウなどを発信しています。是非、こちらも応援よろしくお願いします。
https://www.youtube.com/channel/UCZNKMBiyO9u__fuL3pIGbXw
------------------
【依頼&連絡先】
Facebook:https://www.facebook.com/no1.caconsultant
Twitter:@nz66614
・元ライザップイングリッシュで英語コーチをしていました。専門学校を含めると合計7年間、英語を教えていたので、英語のレッスン承ります。英語の勉強が続かない方のコーチング、サポートもします。
・国際線客室乗務員として50か国ぐらい旅して来た経験やフライト中の面白い話などが出来ます。講演会とかにもお呼び頂けましたら嬉しいです。
・Youtubeでコラボ動画を撮って頂ける方も募集中です。
・その他のなんでもご連絡お待ちしています。

この記事が参加している募集

スキしてみて

あなたのサポートがこの物語が前進するための大きな原動力になります。是非、サポートをお願いします。尚、サポート頂けた方には、物語が映画化した際の試写会にご招待させて頂きます。どうか、応援よろしくお願いいたします。