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第79話「新人CAトレーニングフライト前半」

新人CAのトレーニングフライト日がやって来た。

カツヒロ達12人にとって、この4週間余り学んで来た客室乗務員の仕事を実際に経験する段階に到達した事になる。どんな事でも同じ事が言えるが、頭の中で理論は理解していても、実際に体を動かして体験を積まないときちんと実行出来ない。

つまり「CAの仕事をわかっている状態から、きちんと乗務員としての仕事出来る状態に成る。」ために、トレーニングフライトが用意されているわけだが、初めてのフライトだから、とても緊張する。

40.空港タイムテーブル

当初は6人ずつブリスベン便とメルボルン便に分かれる予定だったが、メルボルン便の予約状況がタイトだった為、12人、全員がブリスベン便にアサインされる事になった。

なぜ、「予約数が多いメルボルンでないの?その方がトータルの乗務員数が増えるから、お客様により手厚いサービスが出来るのでは?」と疑問に思ったキャシーがインストラクターのミッシェルにそのことを尋ねると、

「訓練生は正式な乗務員ではいから、トレーニングでフライトしているため、制服とIDを身につけていても、あくまで飛行機にはお客様の一人として搭乗する」と言う答えが返って来た。

つまり、メルボルン線は既にオーバーブッキングに近い状態だったので、有料のお乗客様を優先し、代わりに座席数に余裕があるブリスベン線の方に新人12人とインストラクター1人の13名がブッキンされたそうだ。

FA物語:機内で集合6人

オークランド8時発、ブリスベン行きのフライトが、定刻通りオークランドを出発する。そして、飛行機がクルージングアテチュードと呼ばれる高度約10,000メートル付近まで近づくと、シートベルト着用サインが消灯した。

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カツヒロ達は一斉に席を立ち、エコノミークラスのギャレーに向かう。先ずは制服のジャケットを脱ぎ、キャリーバックの中にしまう。それと合わせて、ギャレーバック(エプロンやオーブングローブ、ドリンクバーのカギ、ワインナイフ、懐中電灯など乗務中に使用するもの)を取り出し、素早くエプロンを身に着けた。

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「多分、今日は初めてのフライトだから相当、体が疲れると思うわ。皆、授業で教えた通り、お水をたくさん飲んでね。」

ミッシェルがそう言って、エコノミークラスのギャレーで1.5L入りのお水のペットボトルをトレーニング生に1本ずつ渡した。

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「皆、きちんと名前を書いておいてね。そうしないと、間違ってお役様に誰かが飲んだペットボトルのお水を注いでしまう事もあるからね。」

「へー、そうなんですか?」

「そうそう、あと、クルー同士で間違ってしまうケースもあるから、こうやってマジックで書くか、ファーストエイドキッドの中の白いテープをはがして、それを貼り付けて、そのうえからボールペンで書く方法もあるわ。」

ミッシェルの説明が続く。

「それから、12人が一度にエコノミーのギャレーに入ると乗務中のクルーの邪魔になるから、4名ずつの3つの班に分かれてもらいます。」

「それじゃ、ジェームズ、キャシー、カオリ、レイチェルの4人は私について来て、747のクルーレストやファースト、ビジネス、2階席のギャレーとコックピットに案内するね。」

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「アンディ、アメリア、ジェーン、ジャスティンはエコノミーのギャレー4/5を手伝って。」

「ケイト、勝弘、サラ、スーザンは後ろのギャレー6/7ね。」

「帰りの便と、木曜日の便でまたローテーションするから、しっかり学んでちょうだいね。」

しばらくすると、最初のドリンクサービスが始まりました。

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カツヒロはギャレーとドリンクカートを往復して、先輩達が足りなくなったドリンクはないか?を確認したり、これから始まるミールサービスの準備で、コーヒー、紅茶、エキストラシュガーの準備、ミールカートへのミールの搭載を手伝った。

ドリンクサービスが終わると素早く、ラビッシュビン(ゴミ回収容器)にビニールをかぶせて、空いたカップの回収も行った。

その間、ミッシェル達は機内搭載の備品の確認を兼ねてコックピットを訪問。コックピットには乗客を拘束する際に使用する手錠や棍棒、それから、エマージェンシーなどで使用する斧やエスケープロープ他を確認した。

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又、コックピットクルー用のレストルーム(仮眠室)や交代で食事を取ったり、休んだりする際に使用する椅子なども見学した。想像していたよりレストルームは広くて、カプセルホテルの部屋ぐらいのスペース。

パイロットもCAもロングフライトの際は12時間以上を機内で過ごすわけなので、休憩時間にしっかり休むことは大事だからね。クルーレストは案外寒いから、湯たんぽを持参するクルーもいるとミッシェルが付け加えた。

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「ブリスベン路線はレジャーのお客様も多いから、朝から赤や白のワインをオーダーする人も結構いたね。」

朝食のサービスが始まり、トレーニング生達はいったん、自分達の座席に戻り、機内食を頂いた。それぞれが、今、経験して来たばかりの事をシェアし始める。

「うん、そのおかげで、実際のワインボトルを開ける練習もさせてもらえたから、楽しかったわ。」

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「うちのギャレーの先輩、ミーガンって言うんだけど、まだ、飛び始めて1年ちょっとらしいの。でもね、凄く手際がよくて感心しちゃったわ。さすがって、思ったのは次にクルーが何を求めているか?を事前に察して、きちんとギャレーの見える位置にクルーのお水とか、予備のカップ、回収用のラビッシュビンが用意してある点・・・。すごいなーって。私なんか未だ、しっかりとサービス手順が頭に入っていないから、先が読めなんだよね。」

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「私も同感だわ。例えば、オーブンをセットして、25分でミールが温められるでしょ。そのタイミングを計算して、時々、キャビンに顔を出して、ドリンク担当のヘルプをしたり、機内で困っているお客さんはいないかまで、目を配っているところとか、ホント、感心しちゃったわ。」

朝食のオムレツ、焼きトマト、あらびきソーセージを食べながら、さっきエコノミーのギャレーで自分達が作ったコーヒーや紅茶を飲んでいる事に少しだけ感動した。

やっぱり自分が作ったモノは美味しく感じる。 


つづく。

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・元ライザップイングリッシュで英語コーチをしていました。専門学校を含めると合計7年間、英語を教えていたので、英語のレッスン承ります。英語の勉強が続かない方のコーチング、サポートもします。
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