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【米国企業】セクター別にみた営業キャッシュフローの使い道

ある企業のIR資料をみていたところ、興味深いデータがありました。

本業で稼いだ営業キャッシュフローの使い道です。

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出典は最下段にあります。

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1.標準的なS&P500社の場合

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■まずは図表の見方です。

・営業キャッシュフロー(営業CF)額を100%とし、①設備投資(CAPEX、灰色)、②配当・分配金(Dividends/Distribution、紺色)、③自社株買い(Equity Repurchase、水色)に使った金額を営業CF対比でパーセント表示しています。

・標準的なS&P500組入れ企業の場合、設備投資に営業CFの19%を使い、配当として21%を使い、自社株買いに12%を使っています。

・計算上、営業CF(100%)-設備投資(19%)-配当(21%)=48%が余ります。この金額の使い道は、①買収(設備投資以外の投資CF)、②負債の返済、③現金の積み増しが考えられます。

2.設備投資に使う企業

■設備投資に多く使っているセクターTOP3

1.公益企業(電力会社等):146%!
2.エネルギー:87%
3.不動産:85%

3.配当に多く使う企業

■配当・分配金に多く使っているセクターTOP3

1.不動産(REIT含む):69%
2.MLP:57%
3.エネルギー:38%

4.自社株買いに多く使う企業

■自社株買いに多く使っているセクターTOP3

1.IT:31%
2.ヘルスケア:14%
3.産業:13%

5.設備投資が多い例(Nextra Energyの場合)

Nextra Energyはアメリカの公益企業(電力・ガス会社。再生エネルギーの最大手)です。設備投資TOP1のUtilitiesに属しています。

稼いだ営業CF=$7,983百万ドルに対し、
 -設備投資:$14,610百万ドル(183%)
 -配当・分配金:$2,743百万ドル(34%)
 -自社株買い:$19百万ドル(0.2%)
に使っています。

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営業CFでは$9,389百万ドル足らないので、事業を売却したり($2,365百万ドル、30%)、負債($14,562百万ドル、182%)や新株発行($2,042百万ドル、26%)で調達しています。
負債調達、負債返済とも多額で、調達した負債$14,562百万ドルのうち$9,168百万ドルは返済に使っています。別の言い方をすれば、返済期限がきた借金返済のために借金を借り替えたということです。借り替えがきちんとできているうちは良いのですが、業績悪化等によって借り替えが出来ない場合は、最悪なケースでは企業破綻につながる場合もあるので注意が必要です。

5.配当が多い例(Exxon Mobileの場合)

高配当でよく名前があがるExxon Mobileです。

稼いだ営業CF=$14,668百万ドルに対し、
 -設備投資:$17,282百万ドル(118%) -配当・分配金:$14,865百万ドル(101%)
 -自社株買い:$405百万ドル(3%)
に使っています。

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2020/12期はコロナ禍でエネルギー需要が落ち込み、営業CFが低下しました。その状況下でも、設備投資・配当も営業CFの100%をそれぞれ超えています(合計219%)。したがって当然資金調達が必要です。やはり負債調達しています。

6.自社株買いが多い例(Appleの場合)

稼いだ営業CF=$80,674百万ドルに対し、
 -設備投資:$7,309百万ドル(9%)
 -配当・分配金:$14,081百万ドル(17%)
 -自社株買い:$75,992百万ドル(94%)
に使っています。

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営業CFでは足らないのはNEEやXOMと同じですが、負債調達・負債返済を合わせると、借金はほぼ増えていません。その代わり、手元に潤沢に持っている現金を使っています。

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7.雑感

今回は「営業キャッシュフローの使い道」に焦点を当ててみましたが、そもそもの営業キャッシュフロー額をみるとAppleの『圧倒的な稼ぐ力』がわかります。

Nextra Energy :$7,983百万ドル
Exxon Mobile :$14,668百万ドル
Apple :$80,674百万ドル

もちろん、業種の違い、ということでもありますが、Appleは公益企業やエネルギー企業に比べて設備投資もそんなに要らない・それほど高配当でなくても投資家は許してくれる・手元に潤沢なキャッシュがあるので、自社株買いで株主に還元している。Appleの財務上の自由度が改めてよくわかりました。

出典


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