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出社率2割だからできる、大企業の大胆な本社移転

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記事の要約:

東京都心部からの本社機能の移転が相次いでいる。

富士通が2022年11月22日、2024年に東京都港区の汐留シティセンターから川崎市内の自社ビルとJR川崎タワーの2拠点に本社機能を移転すると発表した。富士通は2020年7月にコロナ禍を受けてオフィスを半減する計画を立てており、現在も出社率は2割程度にとどまっている。

東京商工リサーチの調査によると、2020年4月から2023年3月の間に本社・本社機能を移転した企業は約10万5000社にのぼり、2017年から2020年の3年間と比較すると6割も増加した。小田急電鉄や横浜ゴムも都心から神奈川県内の市に本社を移すなど、郊外への移転が目立つ。

背景にはテレワークの定着がある。日本生産性本部の調査では、2022年7月のテレワークの実施率は15.5%と、コロナ前の水準を大きく上回っている。テレワークを取り入れた企業にとって都心の高額オフィスのメリットは低下している。

一方、自治体は企業の本社誘致に積極的だ。横浜市や群馬県は、本社移転に対する補助金や税制優遇を設けている。いすゞ自動車や日本ミシュランタイヤがすでに移転を決めるなど、成果が現れている。群馬県は首都直下地震のリスクが低いこともアピールポイントにしている。

しかし、都心エリアのオフィス需要は根強い。ライフコーポレーションは2022年に品川区への本社移転を発表。スタートアップなどの企業イメージも都心部を選好するケースがある。2023年と2025年には大規模オフィスビルの供給が控えており、不動産業界では需要確保が課題となっている。


都心離れは本当に進むのか

コロナ禍でリモートワークが普及し、大手企業が続々と本社機能を都心から地方に移転させている。富士通や小田急電鉄などの大手が相次いで発表を行った。背景には、テレワークが定着し、従業員がオフィスに出社しなくても業務が回ることが確認されたことがある。

しかし、都心のオフィス需要は根強い。ライフコーポレーションが2022年に品川区への本社移転を発表するなど、今もっとも経済活動が活発な都心を選ぶ企業は多い。スタートアップ企業にとっては、都心にオフィスを構えることが企業イメージの向上につながる側面もある。

加えて、2023年と2025年には大量のオフィスビルの供給が予定されている。建設投資の判断がなされたのは都心オフィスに対する需要が高いと見込まれた時期だ。逆に供給過多になるのではないかと、不動産関係者からは不安の声が上がっている。

思い切った本社移転を決めた企業も、一部の部署や機能は都心に残しているケースが多い。完全に都心を捨て去るという全社的な決断は、現時点では困難なのが実情だ。今後も巨大都市東京の経済的重要性が損なわれることは考えにくく、オフィス需要の東京一極集中は依然として続くのではないだろうか。

テレワークで変わる通勤

東京23区から神奈川県や千葉県、埼玉県などに本社を移転する例が後を絶たないという。本社移転によって通勤経路が変わることは、以前なら社員に大きな影響を与えた。しかし、テレワークが定着した現在、移転に伴うストレスはかつてほど高くないのではないだろうか。

東京23区外への移転は、家賃負担の軽減やBCP対策などの理由から決定される。しかし、実際にはテレワークを活用すれば、社員が毎日出社する必要がなくなった。週に1、2回程度の出社であれば、1時間以上の通勤時間の増加もそれほど苦にならない。

むしろ、長時間の移動時間を業務時間とみなす「移動労働時間」を認める企業もある。電車の中で資料を読んだり、メールを送ったりと、移動中も仕事ができる。都心から遠くなる分、ゆとりある職住環境を手に入れられるメリットも大きい。

過度な集中はリスクもある。今後は職住近接を志向する社員も増えていくかもしれない。地方移転が進む一方で、テレワークは通勤の負担感も軽減する。大胆な本社移転が実現できた背景には、柔軟な働き方がすでに受け入れられていることが見逃せない。

オフィスは住宅やホテルに

2023年と2025年に東京都心で大量のオフィスビル建設が完了する予定だ。需要が追いつかず、空室が増えるのではないかとの不安の声が上がっている。その対策として、設計を変更し住宅やホテルに転用することが考えられる。

インバウンド需要はコロナ前の水準まで回復していないものの、堅調に増加している。2025年頃には訪日外国人客が大幅に増えると予測される。その需給を捉えるためには、オフィスより宿泊施設のほうが望ましいのではないか。

外国人によるマンション購入も活発だ。資産運用目的で中古マンションを購入するケースが多い。新築の賃貸住宅にして外国人居住者を募集する手もある。単身赴任の駐在員向けシェアハウスなど、外国人ニーズに合わせた住宅形態も求められる。

余剰となりそうなオフィスビルを企業借り上げ住居に転用することもできる。UIJターンで入社した社員のために活用するなど、企業城下町を形成する動きが出てくる可能性がある。用途変更には多額の費用がかかるが、社会変化に合わせた柔軟な対応が重要だと思う。


今日の問い

  1. 自社のオフィスが都心から移転する可能性が出てきたら、あなたはどう対応しますか?テレワークを活用して通勤の負担を軽減することはできるでしょうか。

  2. 自宅から会社までの通勤時間が1時間以上増えることを考えると、ストレスは大きいでしょうか。移動中も仕事ができる環境が整えば許容できる範囲でしょうか。

  3. 職住近接を実現するために、会社周辺に社員向けの社宅を用意することに賛成ですか。UIJターン社員の居住支援にもなると思いますが、どうでしょうか。

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