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レンタル機能は罠? STEPN運営の甘言を疑え

このnoteでは、STEPNの色々な話題について「ちょっと深読みなんじゃないの?」と思うくらい考察を重ね、運営の意図に迫っていきたいと思います。

〈今回の要点〉
STEPN運営は、靴レンタルの機能を実装したくないのでは?
→実装するとしても、特殊なしくみになる可能性

STEPNにおけるレンタル機能

STEPNでは、靴のレンタル機能が実装される予定です。現時点(2022/05/17)で既にマーケットプレイスに「Rent」タブが用意されていることから、レンタル機能の実装は確定事項と言えるでしょう。具体的にいつごろ実装されるのかについては、今年の9月~年末ごろ(出典:)という見解が主流ですが、もともとは今年の3月に実装される予定だったものが延期になっているようです(出典:)。

まだ使えない「Rent」タブ

レンタル機能の内容についても、いろいろな情報が飛び交っていますが、まとめるとこんな感じでしょう。

・借り手は靴を購入する必要がなく、初期投資なしで始められる
・借り手が稼いだぶんの6割程度を、貸し手が得ることができる
・レンタルには手数料がかかり、貸し手が支払う
(出典:

レンタル機能が実装されれば、高い初期投資なしでSTEPNを始めることができるので、新規参入者が一気に増えると考えられます。また貸す側にとっても、自分が運動しなくても利益を得ることができるためメリットがあります。レンタル機能は、このようにWin-Winな新機能として構想されているわけです。みんなが待望しているのも無理からぬことですね。

理念と矛盾する「甘言」

しかし、ここでよく考えてみてください。ちょっとうますぎる話には思えませんか? レンタル機能を導入することで、それでは運営側にどんなメリットがあるのか、挙げてみましょう。

①手数料収入を得られる
②新規参入者が増え、コンテンツが盛り上がる

恐らくこんなところかと思います。その一方、運営にとってデメリットもあると考えられます。それは次のようなものです。

①新規参入者が急増し、GSTの価格が不安定になる
②ゲーム愛のない「投資家」が増え、格差が広がる
③プレイヤー間の人間的つながりが希薄になる

そして、これらデメリットは運営の理念と真っ向から矛盾しているのです。

GSTのボラティリティ

まず、現状STEPNの参入障壁は「高額な初期投資が必要」ということだけです。初期投資というハードルさえなければ、ただ歩くだけでお金を稼ぎながら健康になれるゲームなので、これまで以上に多くの人がゲームを始めることになるでしょう。レンタル機能が実装されれば、プレイ人口は倍増すると考えます。

さて、しかしこれは良いことなのでしょうか? プレイ人口が増えればゲームが盛り上がり、一見すると良いことのように思えます。しかし、レンタル機能を使おうと新規参入してきたプレイヤーたちは、靴に対して初期投資をしません。つまり、こうした新規プレイヤーがいくら増えたところで、ゲーム内通貨であるGSTが買われることはありません。その一方、プレイヤーが増えればゲーム全体で発行されるGSTの量は増えるわけですから、結果的にGSTの価値が大暴落することになります。

運営は、GSTの価値が不安定になることを望んでいません。実際、

トークンのボラティリティ増大を防ぐことは、チームにとって最優先事項の一つだ。
「Tokenomics at STEPN」より)

と運営の口から明言されているほどです。運営はSTEPNの持続可能性をかなり重視しており、通貨の価値を安定させたい、つまりGSTのボラティリティを最小限にしたいと考えているのです。

「投資家」の脅威

また、先日5月13日に運営が突如として声明文を公開しました。その内容は「ギルド」に関するものであり、次のような内容が述べられています。

彼ら(=初期投資なしでゲームに参入したプレイヤー)は頻繁に利確を行う可能性が高く、ゲームへの投資という点では長期的なビジョンを持っていない。こうした者がプレイヤー層の多くを占めると、トークンの価値が乱高下するのは必然的だ
(中略)
大きななギルドは、NFTを買いだめすることで高いフロア価格を設定することができ、資金力のない新規ユーザーはNFTの購入から事実上除外され、ギルドの奨学生としてギルドに参加するしかなくなる。
(「Guilds — families or governing bodies?」より)

ここで述べられている「ギルド」とは、STEPN内でチームを組んで活動する人の集まりです。そうしたギルドは大きな資金力を持ち、「奨学生」に対して初期投資の援助を行いつつ利益の還元を受けることで、さらに勢力を増していきます。……この仕組み、まさにレンタル機能そのものではないでしょうか? なお、ここで言及されている「奨学生」というのは、過去に「Axie Infinity」というBCGで導入されたスカラーシップ制度のことを指していると見られます。STEPNが「Axie Infinity」をよく研究しているということは、SNSでも指摘されていますね。

さて、運営はこうしたギルドの存在価値を認める一方、ゲームにとっては脅威となりうることも指摘しています。巨大な力を持ったギルドは、もはやゲームを楽しむプレイヤーの集まりではなく、単なる巨額投資家となり果て、自らの利益を追求してゲーム内の経済を崩壊させるかもしれないからです。5月7日のAMAで告知された新アイテム「ミントスクロール」からも、運営は実際に歩いている(=ゲームをプレイしている)個々のプレイヤーを大事にしたい、逆に言えば、巨額の資産を抱え込んで不労所得を得ているような投資家は大事にしたくない、と分かります。

”メルカリみたいな”感じでいいのか

また、僕は先日公開した記事で
「運営は、既存のプレイヤーが友人や家族と一緒にSTEPNをプレイするのを望んでいるのでは?」
と考察しました。

STEPNは、そもそも「仮想通貨」という形のないものに立脚していながら、「歩く」というたいへん具体的な行為と結びついたコンテンツです。ここにはSTEPN運営の問題意識が現れている、と僕は考えています。つまり、仮想通貨を文字通り"仮想の"ものとしていては、具体的な人間で構成されている社会(Social)と接続することができない、ということです。
(「『6足の谷』の謎 -STEPN運営の意図を読み解く-」より)

これについて、ギルドに関する公式の声明ではこのように書かれています。

STEPNを楽しめるのは、純粋なゲーマーだけではなく、歩ける人、携帯電話を持っているあらゆる人たちだ。STEPNのユーザーは、友人や家族とSTEPNを共有し、STEPNを中心とした小さなグループを形成することがよくある。これは、ミニクランとも言えるだろう。将来的には、STEPNを中心とした様々なアライアンスが生まれるかもしれない
(「Guilds — families or governing bodies?」より)

やはり、「友人や家族」というキーワードが出てきていますね。

ここへきて、レンタル機能はどうでしょう。全く見ず知らずの人から靴を借りることができてしまうなら、別に現実世界の知り合いと一緒にSTEPNをプレイする必要はありません。仮に靴が余っていたとしても、
「家族に貸すよりレンタルに出しちゃった方がラクだしな~」
と考えてしまうことでしょう。なんとも”メルカリ”チックで、運営が目指しているローカルな雰囲気とは真逆な気がします。

ズバリ、レンタル機能を予想する

以上のことを考えると、運営はレンタル機能の実装を望んでいないはずです。もしかしたら、当初は結構やる気だったのが、「Axie Infinity」やトークノミクスに関する研究を進めるうちに
レンタル機能、あんまり良くないかも……
と考えを改めたのかもしれません。その結果として、先日のギルドに関する声明文が突然投稿された、と考えることも出来ますよね。

とはいえ、レンタル機能によるメリットも運営は当然分かっているはずです。それに、大見得を切って導入しますと言った以上、レンタル機能自体は実装されることになるでしょう。ただし、大方の予想を大きく裏切る特殊な仕様になるのではないか、と僕は予想しています。

〈予想①〉手数料がメチャ高い

まず、手数料が当初の予定よりも大幅に高くなる可能性が高いと見ています。これにより、借りる側も貸す側も大した利益が得られなくなることでしょう。

そもそも、靴のレンタル機能がなくても、靴やGSTを知り合いにTransferすることはできます。とすれば、レンタル機能の手数料が高いことによって
「こんなに手数料を取られるなら、友達や家族に貸した方が結局いいじゃん!」
と思うプレイヤーがいるかもしれません。つまり、レンタル機能は運営に用意された噛ませ犬で、実際にはプレイヤーが知り合いに靴を貸す動機を作ることが運営の狙いかも知れません。

〈予想②〉GPS、大活躍

次の予想は少し奇抜ですが、レンタル機能にGPSを使うかもしれません。そもそも運営は、STEPNの中に現実的な社会を作りたいと思っているはずです。だからこそ、家族や友人、もっと広く言えばご近所さんと一緒にSTEPNをプレイしてほしいと考えていることでしょう。

そう、ご近所さんです。レンタル機能では、住んでいる場所が近い人に靴を貸す際に手数料が下がるのではないでしょうか? STEPNはゲームのプレイに大前提としてGPSを用いているので、不可能な話ではありません。ご近所さんからご近所さんへと靴のレンタルが進んでいけば、STEPNが掲げている理念が達成されます。

以上、今回の記事では「靴のレンタル機能」について深読みを重ね、どんな機能として実装されるか予想してみました。
「不労所得をガッポガッポ稼ぐぞ~」と考えていた人は、期待しない方が良いかも知れません。
とはいえ、この記事はあくまで深読み考察。
この考察を信じるか信じないかは、あなた次第です。


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