見出し画像

『"家族のカタチ"を考える 〜ステップファミリー交流会〜』@ごちゃまぜCafeメム

2019年11月17日(家族の日)、「ステップパパの研究会」と「ごちゃまぜCafeメム」の共催で、ステップファミリー(子連れ再婚家庭)のための交流イベントを開催しました。

イベント開催の経緯

きっかけは10月のはじめに書かれた1本のnoteでした。

「ステップファミリー(子連れ再婚家庭)の当事者同士で集まり、普段なかなか話せない悩みや経験を、気軽に共有できる場所を作りたい。」

そんな私の呼びかけに、多くの方がご賛同くださり、今回のイベントを実現することができました。

↓きっかけとなったnote

↓このnoteは、「#こんな社会だったらいいな」投稿コンテストで審査員特別賞を受賞しました!(選んで頂きありがとうございます!)

「ごちゃまぜCafe メム」について

会場となったのは、江戸川で憩いの場として愛されている「ごちゃまぜCafeメム」
ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)をコンセプトに、虐待、発達障害、依存症など、数多くのテーマでイベントを開催されています。(先日、NHKの「ハートネットTV」にも取り上げられていました!)
今回メムさんからお声がけを頂き、共催、会場提供という形でご協力を頂きました。

メムのカレーは絶品だと評判です!

また、子連れでの参加を実現したかったため、当日は2階をキッズスペースとして開放してもらいました。1階のカフェで大人が話し合っている間、子ども達は2階で大はしゃぎで遊んでいました。(おそらく2階の方が盛り上がっていた気がしますw)

画像4

参加者について

会場には、ステップパパ(義父)だけでなく、ステップママ(義母)や、実親の立場の方、他にも、シングルマザーや、同性パートナーで子育てしている方など、本当にさまざまな立場の方が集まりました。(関心を持って駆けつけてくれたテレビ局のディレクターの方もいらっしゃいました)

イントロダクション

参加者の自己紹介を終え、まずはじめに、イントロダクションとして、私おしだから、「家族のカタチ」というテーマの背景についてお話をさせて頂きました。

ロシアの小説家トルストイの「アンナ・カレーニナ」という小説は、このような書き出しではじまります。

「幸福な家族はすべてよく似たものであるが、不幸な家族は皆それぞれに不幸である。」 ー「アンナ・カレーニナ」/レフ・トルストイ

若い頃にこの小説を読んだ時、トルストイの人間や社会に対する鋭い洞察に非常に感心をしました。しかし、ステップファミリー(子連れ再婚家庭)という「普通」と違った家族を自分自身が築くことになり、「家族とは何か?」ということを何度も考えるうちに、私はだんだんとこの言葉に違和感を感じるようになってきました。

画像4

ステップファミリー、シングルペアレント、同性パートナー、国際結婚など、現代の「家族のカタチ」は多様化しています。
固定化された家族観にとらわれない、さまざまな家族のあり方について考える場所を作りたいと思い、今回イベントに「"家族のカタチ"を考える」というタイトルをつけました。

1人目:ステップパパの研究会 おしだ

画像1

スピーカー1人目は、私おしだが務めさせて頂きました。
(私は、シングルマザーの女性と結婚し、養子縁組で息子と親子関係になった、義父の立場の人間です。)

まずはじめに、「ステップパパの研究会」の発足の経緯や、現状の活動内容について紹介させて頂きました。

自分で話していて驚いたのですが、ステップパパの研究会は、イベント時点でまだ立ち上げ1ヶ月半ほどしか経っていませんでした。にもかかわらず、なんとコミュニティメンバーは現在40名(!)近い規模になっています。
この問題に関する世間の関心がいかに高いか、また、このような対話の場を渇望している人がいかに多かったか、伺い知れます。

次に、私の個人的な想いについて共有をさせて頂きました。

お話した内容は、以下のnoteにまとめていますので、よかったら読んでみてください。
会場では、自分の体験と重ねて涙を流す人もあり、想いがつながったと感じる瞬間でした。

2人目:ごちゃまぜCafeメム店長/映像監督 ふじもとあつしさん

画像2

2人目は、ごちゃまぜCafeメムの店長でもあり、映像監督もやられているふじもとあつしさんにお話をして頂きました。

あつしさんは、近々結婚をされる予定ですが、お相手はシングルマザーの方で、初婚でいきなり3歳と5歳の子どもの父親になります。
突然父親になり、責任感が追いついてこないこと、親権の問題などわからないことがたくさんあること、などの不安を語られていました。

中でも印象に残ったのは、「あるべき男性像」についてのお話です。

日本には、「あるべき男性像(男は強くあるべき、弱さを見せてはいけない、など)」というものがまだ根強く残っている
男性は、何かに悩んでも、「弱さ」を外に出すことが許されない。だから、ステップファミリーに関する悩みも相談できず、追い詰められた男性は孤独に陥ってしまう。(虐待の問題はその最悪な結末の一つ)
この問題を、「個の問題」として解決しようとしても、バグるだけ。だから、誰かが声をあげないといけないし、自分は声をあげていきたいと思う

↓あつしさんが監督された「摂食障害」に関するドキュメンタリー映像です。よければこちらもご覧になってください。

3人目:育児ブロガー ぐうたらこさん

最後に、継子の立場から、育児ブロガーのぐうたらこさんにお話をして頂きました。(遠方にお住まいのため、オンラインでの出演となりました)

ぐうたらこさんは、シングルマザーの母の元で育てられたそうですが、母の恋人と何人か付き合う中で、継子の視点から、よかったと思うケース(最初の恋人)と、悪かったと思うケース(次に来た恋人)があったそうです。
今回は、それら各種のケースの対比を通じて、継親のみなさんに対して、「子どもたちには、こんな風に接してあげて欲しい」という継子の立場だからこそわかるメッセージを伝えて頂きました。

【よかったこと(1):あたらしい経験をくれたこと】
・最初の恋人は、いつもあたらしい経験を与えてくれた。車で出かけたり、遊園地に連れて行ってくれたり、母と二人でいる限り、できなかったであろう経験をさせてくれた。
・次に来た恋人は、何もあたらしい経験をくれなかった

よかったこと(2):あたらしい視点をくれたこと
・最初の恋人は、いつもあたらしい視点を与えてくれた。プレゼントでもらった、心霊写真の写真集が嬉しかった(当時はオカルトブーム)。「まず最初は、丹波哲郎の本から読みなさい」という彼なりの視点でのアドバイスも、尊敬につながった。(丹波哲郎のくだりで一同爆笑)
・次に来た恋人は、何もあたらしい視点をくれなかった。自分が好きだと言ったものを、言われたままに買ってくれることはあったが、彼自身の視点がそこには存在しなかった

よかったこと(3):私に関心があったこと
・最初の恋人は、私という一人の人間に対して関心があった
・次に来た恋人は、私に対してなんの関心も持っていなかった

また、最後の「対話」の重要性に関するお話も、非常に印象的でした。

画像5

大切なのは、「対話」。とにかく、子どもにとって、安心して意見が言える相手であること。ちがう考えでいいし、いろんな意見があっていい。親としてかまえすぎず、まずは「人」として向き合い、たくさん話をしてあげて欲しい

↓締めくくりはこの言葉でした

画像6

↓ぐうたらこさんのブログ・書籍は、あのドランクドラゴンの塚地さんも絶賛されています!よければこちらもご覧になってください。(自分は笑い転げながら読みました)

参加者の声

後日に配布したオンラインアンケートの中から、参加者の声の一部を紹介させて頂きます。

個別の事情はそれぞれありつつも、ステップファミリーという構造上の苦しみは誰しもが経てきているというのが、情報ではなく、実感として得られたことがとても大きかった。 当たり前のことだが、みんな頑張ってるんだなぁ、と勇気づけらました
他の方のお話を聞けたこと 自分の体験、気持ちを共有してもらったこと なにを話してもいいという空気感 思った以上に良い時間となりました。 このような機会をほんとうにありがとうございました!
安心できて心温まる時間でした。参加された皆さん立場も様々で初対面にも関わらずなんでも言えてしまうような安心感と解放感。子供も気兼ねなく連れてくる事ができ本人も楽しんでくれてすごくありがたかったです。

会場では、参加者のほぼ全員が「こんな話、今まで誰にもできなかった」「自分の悩みを理解してもらえると思える場所にはじめて出会った」と口を揃えて言われていました。
適切な支援や社会の理解が足りていない現状を悩ましく思いつつも、一方でそのような希少な対話の機会を提供できたことを非常に嬉しく思いました。

また、アンケートの結果、「次回も参加したい」と答えた方は100パーセントでした!
イベントは計2時間だったのですが、「2時間ではぜんぜん話足りない!」という声も多数頂きました。みなさんよっぽど積もる話があったのだと思われます・・・(次回イベント設計時の参考にさせて頂きますね)。

最後に

イベントの中で、哲学者・市井三郎さんのこんな言葉を紹介させて頂きました。

「歴史の進歩とは、自らが責任を問われる必要のないことから受ける苦痛を減らすことである。」 ー市井三郎

「血縁主義」は元々アングロサクソンの文化であり、日本は「血縁」よりも「家」を重視する文化だったと言われています。(江戸時代では、養子を取ることは当たり前に行われていたそうです)
カナダ北西部のヘヤー・インディアンの間では、血の繋がった親が子供を育てるという社会規範はなく、「子供は、子育てを楽しめる人が育てる」という考え方が一般的なのだそうです。

このように、歴史学や文化人類学が教えてくれるのは、家族というのはそれが依拠する文化や価値観によって姿を変える「社会的な構築物(その人たちが信じる物語)」でしかないという事実です。
現在この国で支配的な「血縁主義」と呼ばれる価値観も、この場所で、この時代に偶然生まれた、「血の幻想の物語」に過ぎないのではないでしょうか。

「血のつながった親子」「伝統的な家族の形」といった強固な呪縛(古い物語)により、意味もなく苦しめられている人々がたくさんいます。
このような「自らが責任を問われる必要のないこと」から、苦痛を受ける人を、後の世代のためにも少しでも減らしていけるといいですね。

ステップファミリー(子連れ再婚家庭)、シングルペアレント、同性パートナー、国際結婚、事実婚、里親などなど、「多様な家族(共同体)のカタチ」を社会システムレベルで包摂することが、「歴史の進歩」を実現するための一つの答えだと私自身は考えています。

…と、夜中に書いていたため、最後はだいぶ壮大な話になってしまいましたが。。

とにかく、今回イベントに参加してくださったみなさま、参加はできなかったけれど、いつもコミュニティ活動を支えてくださっているみなさま、本当にありがとうございました!!

また、最初のきっかけをくれたsoarのみなさま、「注文をまちがえる料理店」の小国士朗さん、いつも応援してくれた、ゆるゆるお父さん遠足ウィルチェアファミリーのみなさま、コンテストで選んでくださった、ミミクリデザインの臼井さん日本財団のみなさま、それから、メムのみんなに、あらためて感謝いたします。

文章:ステップパパの研究会 おしだ
撮影:karma




この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?