オリエンタル


その曲をピアノ教室の発表会で弾いたのは
確か小学4年生だったか。

教室の先生が今思い出しても、感性豊かな美人で
発表会の最後に先生が弾く姿が
鮮烈な印象に残っている。

宵闇に浮かぶ孔雀を思わせるような
シックながら妖艶な衣装。
フリルやレースが一切施されておらず、
ラインはシンプルなのに、独特の色香が
子供ながらに感じ取れるような素晴らしいドレス。

その先生が小学4年生の課題に選んだのが
エンリケ・グラナドスのスペイン舞曲
オリエンタルだった。

憂いを帯びたスペインらしい旋律で
子供には正直、曲の解釈は難しかったが
両親はカッコいい曲を選んでくれたと好評だったような覚えがある。

子供にとっては華のあるショパンや
ベートーベンあたりが憧れだったので
あまり感慨もなく、発表会で弾いたきりで
記憶の彼方に忘れ去っていた。

かなりの年月が経ち、
今年に入ってひょんなことから、懐かしい旋律を耳にして、
急に弾きたくなった。
しかし曲名が思い出せない。

血眼(血耳?)になって検索、
曲当てアプリまで駆使してようやくたどり着いた
オリエンタル。

聞いていただけば分かるのだが
これをまともに解釈して弾ける子供は
余程の才能だと思う。

※youtubeで見つけた中でも特に素晴らしいと感じた演奏↓

特に中間の旋律。
演歌で言うところの「こぶし」のような
節回し、スペイン楽曲への深い解釈力、
さらに言えば歴史や人生のもののあはれが
分からないと難しいのでは。

なぜかスペインの古城にぽっかり光る月が
中庭の水面に映る様子が思い浮かぶ。

(画力がいまいちですみません)

紆余曲折通ってきた今、弾いてみたら
自分の内面と如何様な対話ができるのか
譜面を手に入れて試してみよう。

ちなみにグラナドスは19世紀末から20世紀初頭に
活躍した作曲家。
温厚な性格で、
貧しい人に進んで自分の生活費を与えてしまうような
慈悲深い人物だったそう。

最後は嫌いな船旅で夫婦で演奏のため渡米し、
帰路にドイツの魚雷攻撃に遭って
自らは一度助けられたものの
沈みゆく奥さんを助けようと海に飛び込んで
亡くなってしまった。

家族想いの人柄が伝わってくると同時に
戦争は文化そのものを破壊すると
改めて感じる。

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