天啓
言葉の稲妻がわたしを貫いた...
身体が梵鐘であるかのように振動している...直視できない言葉の眩しさと、鮮烈な高次倍音に彩られた何かが私を射抜いた… という感触だけが、かろうじて私が私であるということを支えていた...それは意味の地平に沈んだ幻が空を染める残照のように、いまでも私のこころを照らしている。
一眼レフのミラーが跳ね上がる直前に、得も言われぬ何かと眼が合った...という感覚だけが、震える意識のなかによみがえってくる。
撮る者と撮られるもの...自と他を越えてスパークしたような感覚...あれはきっと… 根源的な何かに触れたような、ある種…次元を超えた刹那だったのかもしれない...
それは核心に触れたような衝撃でもあり、また同時に何処か懐かしい香りを呼び起こすものだった。
その不思議な感覚は長い余韻を残しながら、いまでも幽かに響いている...あれは恐らくある種の「 恩寵 」と呼ぶべきものなのかもしれない...
求めようと思えば思うほど遠ざかってゆく蜃気楼のように、現れては消えてゆくまぼろしの如くに意識の天蓋に揺らめいているそれは、もはや私とは別ものではなく、私自身のなかの、私のものではないものを照らし出すひかりのように感じられ、それはまた深奥に在る一弦の絃を思わせる音楽のようにも思えてくる...それは… 一弦で在りながら無数の絃を内包し、無限の倍音に感応する精妙に調律された楽器なのかもしれない...
我執に囚われたこころを破るかの如くに顕現する言葉は、聴く言葉を超越して、身体で感じるものとして伝わってくる。砕かれた自我の鎧を握りしめながら、巨大な柱として現前する一弦の絃に相対するとき、私の表現… 私の個性… 私の… 私の...それが迷妄だったことに気づかされる...
一塊の石は、価値でもなく… 美醜でもなく… 自身の糸を調律せよと語って止まない...それが私たちに贈られた鏡なのだから… と...
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