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フラッシュバック

 


記憶の閃光が点滅しながら乱舞している...
乱れた鼓動を弄ぶが如くに、乾いた衝撃波が呼吸を奪ってゆく...

白昼のなかに現れた夜のように... 無明の現世に現れた永遠のように... 脈動しているそれは凝縮された記憶がプラズマを纏って発光し、なにものかが生まれ出る暗号の如くに次々と記憶の導火線を呼び覚ましてゆく...

それはまるで蒼い水底に眠る記憶が見る夢のようでもあり、過去と未来が出遭った時間の綻びが見せる幻影となってこだましている。

冥い無意識の水底に沈んだ記憶は、意識の届かぬ先で眠ることなく生きている...もしかしたら意識とは、無意識という黒子が操っている人形のようなものなのかもしれない...

幾つもの前世をくぐりぬけて引き戻された太古の記憶がバックライトのように今生を照らすのは、何かの暗示なのか… 知のひかりの届かない水底の声を纏いながら、 今生のもう一つの顔を見せようとするのは何故だろうか...

身体の血液が逆流してゆく力に諍いながらも、意識はやがて濁流の渦に吞み込まれてゆく...鼓動の昂まりを遠くに聴きながら、存在の明滅がその源流に還ったようにやがて記憶は点灯し、裏返った地平のなかで息を吹き返した...

反転した意識の地平は足下遠くに在り、頭上には無意識の蒼穹のような深く蒼い世界が拡がっていた...明滅する虚と実との境界面が綾なす振動の重なりのなかに私たちはいるのかもしれない...

幾つもの微細な振動が響き合い、壮大なうねりの昂まりの極限に放たれた一滴がこの世界なのかもしれない...波立つ境界面がそれぞれに放った一滴が… そのどちらもが私で在ることを思い出させようとしているのだろうか...幻影が幻想を呼び、意識と無意識とが互いに繰り広げる舞踏のなかで、転生と輪廻の轍に埋められた時間が踊りだす様を… 私は観せられたのかもしれない...


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