【子ども】九九から数列へ①新しい学びが、今はじまる
九九の糸かけボードが完成した。こんなステキなもの、作っただけで終わるなんてもったいない。ならば、次のテーマは数列にしてみよう。5年生は学校で倍数や約数を習う時期だし、九九からつなげれば4年生も違和感ないはず。大変なのは承知の上で、遊びもお話もオリジナルで作ることにした。
実はまだ九九を覚えていない
そもそも、九九の糸掛けボードを作ろうと思ったのは、九九の美しさに触れて欲しいという願いがあったのは言うまでもないが、実は子どもたちの多くが九九を覚えていないという実態があったからだった。
リズムの時間に九九を使って遊んでみると、なんだかモゴモゴ。2年生のときに転校を経験し、九九を学校で習わなかった子もいる。公立小学校を思い出してみても、3・4年生だからって全員がスラスラ言えるわけじゃない。
リズムの時間の遊びは続けるとして、それだけでは足りない気もする。かといって、ここで100マス計算とか問題演習をやるのはちょっと違う。
だったら、九九の表を毎月作って、それを美しく色づける活動をしたらどうだろうか。繰り返していくうちに、表を作るのが早くなるかもしれない。1カ月に1枚なんて意味ある?っていう声も聞こえてきそうだけど、そんなこと言う人に返すのはお決まりの言葉。0枚よりは良いに決まっているでしょう。0と1の間には、大きな違いがあるんです!って。
工作を通して素数を探す、ってどう?
(↑ 表に色を塗っていく。1番上は2の倍数、その下は3の倍数)
どんな流れでいこうかな?と、数学の先生をしている友人に相談したところ、
「素数なら、エラトステネスのふるいは?」
とのこと。どんなものか簡単に教えてもらうと・・・これは確かにおもしろい!
でも、紙に書いて消していくだけじゃ、そんなに美しくない。美しくないものはやりたくない。残ったところが窓のように開いているような、そんな工作ができないかな。
ものは試しだ。
1から100までの数を書いた表の2の段の答えだけに色を塗ったものと、3の段の答えだけに色を塗ったものを用意。この2枚を重ねると、色を塗っていないところが透けて見えるはず。
見えた!
それなら、1~9の数の倍数を色塗りして、9枚の紙を重ねて透かしてみれば・・・
見えない。
素数だけが(念のために補足しておくと、1は素数ではないし、2・3・5・7は素数)白く浮かび上がると思ったのに。9枚も重ねたら透けない。当たり前か。
ならば、この紙が透けるように油を塗れば・・・
見えた!
と、試行錯誤を繰り返して、エラトステネスの透かし紙が出来上がった。
これをランタンにしたら素敵な作品になりそう。
素数って、こんなにも手を動かして、やっと出会えるものなんだ。なんて貴重で崇高な数なんだろう。
5年生は学校で既に習ってしまったかもしれないけれど、このクラスで再び出会い直し、その喜びを共に味わいたいものだ。
過去の記憶が物語を描き、今の感情が物語を動かす
(↑ 黒板絵を描くときに影響を受けた山々。長野県松川村のシュタイナー療育センターへ行ったときの写真)
今回のお話は、子どもたちを思い浮かべて作ることにした。ざっくりいうと、
主人公は、無人島でおじいさんと二人で暮らす少年。お母さんは病気でなくなり、お父さんは息子を置いて旅に出てしまった。10歳の誕生日におじいさんがプレゼントしてくれた舟で、少年はお父さんを探す旅に出る。
というお話。
(↑ 舟には、九九を形で表したものが描かれている)
冒険へ出るワクワク感は、この年代の子どもたちがみんな憧れるもの。"好奇心旺盛なのに慎重派"の子が多いクラスだ。ちょっぴり不安はあるけれど、お話の中なら安心して旅に出られるはず。ONE PIECE(*1)好きな子がいたので、山や空ではなく海を舞台に選んだ。
自分を置いていなくなった父。仕方のないことだと頭ではわかっているけれど、もっと一緒にいてくれても良かったじゃないか・・・と、どこか腑に落ちない感情を持っているかもしれない主人公。
いつも忙しい、ゲームばっかりしてる、そもそもいないなど、お父さんとの関わりが薄そうな子が多いクラスだ。それに、私にも父がいないので、気持ちを想像するのがたやすい。そんな理由から、この設定にした。
参考にしたのは、大好きな岡田淳さん(*2)や夜麻みゆきさん(*3)の世界観。登場人物とのかかわりは、ドラゴンクエスト(*4)やエルマーの冒険(*5)、魔方陣グルグル(*6)が影響していると思う。そして、脳内BGMはSEKAI NO OWARI(*7)に決まりだ。
(↑ いろんな人と出会い、旅に役立つアイテムをもらう。それを絵地図に描きこんでいった)
まだ話の大まかなラインだけ、言うなれば幹の部分しか考えていないけれど、それだけでもワクワクする。冒険心をくすぐられた記憶が集まって新たな物語となるなんて、子どものころは思いもしなかった。
子どもたちの前で語ればきっと、彼らの感情豊かなフィードバックが枝葉を茂らせ、立派な木に育ててくれる。
当時はそんなことを思いながら始めたわけだが、今振り返ってみると新たな学びがあった。それは、私の作るお話は”過去の記憶”を集めたものでしかないが、子どもたちの”感情は今動いていた”ということ。
表象は過去のもの、感情は今のもの・・・たしか、シュタイナーの著書(*8)にそんな文言が出てくるけれど、いまいちピンとこなかった私。でも、それを私は、授業を通して子どもたちと一緒に体験していたのだ。授業に必死で気が付かなかったけれど・・・。
そう。予想していた通り、毎月お話を作って、覚えて、描いて、必死だった。
次回からは、その大変な思いをしながらも作ったお話を少しずつ紹介しようと思う。
おまけのリンク
お話作りに影響を与えたと思われるもの、いろいろ。
こうやって並べてみると、ゲームや漫画とシュタイナーの著書が同列というのがちょっとおもしろい。
*1 ONE PIECE についてはこちら
*2 岡田淳さん のおすすめ本はこちら
*3 夜麻みゆきさん の著書はこちら
*4 ドラゴンクエスト についてはこちら
*5 『エルマーのぼうけん』についてはこちら
*6 『魔方陣グルグル』はこちら
*7 SEKAI NO OWARI『RPG』の音源はこちら
*8 シュタイナーの著書『一般人間学』はこちら
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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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