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【大人】精神の機械化、魂の植物化、肉体の動物化~『社会問題としての教育問題』より


他人と比べることで、ここが同じとか違うとか、劣っているとか優れているとか言い出すと、なんだか自分が人より劣っているような気になる事があります。

今の時代、他人と比べるどころか、AIやロボットなどが出てきて、もはや「人間が人間である所ってどこなんだろう?」と、考えたくなるような状況になっています。

そこで今回は、今井重孝さんの『社会問題としての教育問題』より「機械の透明性」の章を読んでみました。


人間という種族と、1人ひとりの個性

人間という種族は、あらゆる動物たちと違って、自分で何をするか、考えることができます。なぜそれをするのか、理由や動機が認識できます。そして、とてもきめ細かな感情を感じることができます。しかも、それを自我や理性でコントロールすることもできます。それの積み重ねが、人間の個性です。

一方、科学が相手にしているのは、1人ひとりの個性ではなくて、人類全員の共通点であり、再現性があるところです。物理学や電子工学など多くの学問は科学ですね。人間は身体・心・精神で構成されていますが、その中で言うなら、「医学」の分野は身体に関する科学です。

レントゲンを撮ったら影の部分が病巣だ。ここからここまでを切ればいい。そこを切除したらこの病巣は取り除ける。過去の症例の統計では5年生存率は〇%だ、など、人間の肉体は科学的に処理できる部分がたくさんあります。

ただ、科学で答えが出せる範囲は今のところそこまで。科学の適用範囲が限定されていることを忘れ、人間は少しずつ謙虚さを失っていきました。「技術を突き進めて行ったら、そのうち何でも理解できるんじゃないか」「何でも意のままにコントロールできるようになるはず」と過信していきました。

科学が発展するにつれ、自分の個性の存在価値に自信が持てなくなってきました。自分の実感として「こういうの、すごく好き♪」と、感じていることも、「もしかして、それって単に、脳の特定部位が刺激された電気信号にすぎないのでは?」と頭でっかちに疑い始めたり。

科学の知識が人間を豊かにすることは確かですが、逆に生きる意欲を失わせ、1人ひとりの価値をむなしくさせるように働くこともしばしばあります。充実感を味わいつつ真っ当に生きるのが難しい時代、と言えるかもしれません。

「精神の機械化」「魂の植物化」「肉体の動物化」

この章を読んで一番ショッキングだった言葉は、「精神の機械化」「魂の植物化」「肉体の動物化」という言葉です。この言葉は何を表しているのでしょうか。自分の日常の身の回りの出来事と照らし合わせて、ひとつずつ思い当たるフシを話すことから始めてみました。

「精神の機械化」は、自由であるべき精神が枠にはまって機械的に考えるようになること。
例:「お気持ちはわかりますが、一人だけ優遇すると不都合があるので、申し訳ありませんが一律で禁止とさせていただきます」というような、取りつくシマのない窓口対応。

「魂の植物化」は、喜怒哀楽を細やかに味わえるはずの魂から、感情が乏しくなること。
例:「またお客様怒らせちゃった。こんなだから給料泥棒って言われても仕方ないか。人前でののしられるのも慣れてきたけど、辞めたら暮らせないから仕方ないか」と、気持ちをどこかブロックしないと乗り越えられない状態。

「肉体の動物化」は、本来、自分で考えたことを実現するための身体のはずなのに、衝動的に体を動かしてしまうこと。
例:大して理由もないのに、衝動的に通行人を殺害してしまう、なんてニュースは、まさにこれでしょう。

「もしかしたら、自分もそんな風に変わって行ってるんじゃないか」という警告として受け止めました。そして、「ちょっとあるかも」と思って、ぞぞっとしました。

充実した人生のために

今、力を持っている人たちが、力を持ち続けようと思ったら、自分以外の人は「考えない」方が都合がいい。それぞれが自由に自分で考え始めたら、コントロールしにくくなるもの。いろんな事をあきらめて(=感情を閉ざして)何も考えない(=自分の言葉を発しない)方が都合いい。

だけど、1人ひとりの人が、自分の立っている場所で「もっといい世の中を作ろう」と思ったら、それぞれが考えることが必要です。

「精神の機械化」に抵抗して、自分で何が正しいのかを考えて行動を決めること。「魂の植物化」で「まぁ、こいう時はこういうもんじゃないの?」と諦めないこと。イヤなことは嫌と、きちんと感じること。そして、「肉体の動物化」に反して、人間として自分の肉体を使うこと。

「精神」「魂」「肉体」の3つともを、できるだけ生き生きと保つこと。つまり、自分なりの理想をきちんと自分で掴み取り、自らそれに向かって行動しながら、苦労も達成感も含めて、充実した人生を歩く、というような生き方に、少しでも近づけたらいいな、と思います。

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オキツ 神戸シュタイナーハウス代表 大人クラス担当
小さな勉強会や書くことに関する仕事、普段の暮らしなどを通して自分の考えを深め、表現する。その結果、自由で愛のある社会に近づけるといいな。
ブログ毎日更新中。https://blog.goo.ne.jp/oneby1
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