見出し画像

【大人】麦わらのヒンメリ(手仕事)


ある時、クラスの後、ランチをしながらだったか「ヒンメリってなんかいいよね」という話になりました。毎回、持ち回りでリーダー役をするので、自分の番は大変ですが、自分たちで自由にやりたいことに挑戦することができるのです。「じゃあ作ってみましょうよ♪」ということで、次回のクラスは麦わらで作る北欧の飾り、ヒンメリを作ることにしました。

私たちはシュタイナーをメインに学んでいますが、職業につなげたり、学問を追求することが目的ではありません。アタマもカラダもココロも使って、自分を人間として真っ当に育てていくことや、暮らしを充実させていくこと。身近なところからというか、身近も身近、自分が変わることから社会が変わって行くんじゃないか、という思いで学んでいます。

ヒンメリ、誰も作ったことないけど

サラッと「作ることにしました」と書きましたが、実は、誰も作ったことがありません。というより、みんな写真で見て憧れただけ…。実物もちゃんと見たことがないので、最初は「はて、どうしようか??」という感じでした。

でも、まぁ「とりあえず、作り方調べて、また連絡しますね」と、引き受け、図書館やネットで作り方を探してみました。「交代でやってみる」というやり方が成立する一番のポイントは、気軽に引き受けられる関係性作りです。

さて、引き受けたとたんに、不思議なシンクロが起こり始めました。まずは、たまたま母が「アンタこんなの好きそうだから」とヒンメリの個展のチラシを送ってくれました。おおっ!と思ったものの、その日は子どもの試合の引率が入っていて行けません。そしたら、なんと試合の会場が個展会場の近くに変更になりました。しかも3試合の予定が2試合になり、2時間だけカラダが空いたのです。会場まで車で30分、少しだけなら行ける! というあり得ないような偶然がいくつも重なって、ヒンメリ作家さんの個展に行くことができたのです。ミラクル!

その日、15分だけでしたが、個展でたくさんの素晴らしいヒンメリを見せていただきました。そして、そこにいらした作家さんに、本やネットではわからなかった作り方のコツを教えていただくことができました(お世話になりました。駆け足で失礼しました)。

時々、シンクロが起こって驚く事ってありますよね。この度重なる偶然は、「もうカミサマが応援してくれてると思うしかない!」と思う出来事でした。

そこから家に帰って早速試作を重ねます。「日本だから麦じゃなくて米でも良いかも」と、これまた、偶然入手していた、しめ縄用のわら束があったので、その稲わらからストローを取り出してみましたが、それがもう、めちゃくちゃ大変! 慎重にやっているのに、すぐに裂けてしまいます。 

ストローを自作することは諦めて、後日、長さの揃った小麦の麦わらを購入しました。こういうものを作ってくださっている方がいるのですね。ありがたいことです。

稲と麦の違いに文化の違いを感じる

そんなわけで、クラス当日、偶然の巡り合わせのすごさに驚いた話をし、みなさんも、偶然を掴んだ話とか、掴みそこなった話とか、いろんな話をしながら、実際に一番小さなヒンメリを作ってみました。いったん作り出せば、リズムにのった単純な作業の繰り返しなのですが、作り出すまでが結構大変。糸をストローに3つ通して、くるりと結んで、次は2つ通して、また結んで…これはどこにつなげたらシカクになるの!?

稲わらからストローを取り出す大変さも経験し、麦と稲をさわってみて、その堅さの違いなんかも知りました。その硬さの違いから、収穫後のわらを使った飾りが、日本ではしめ縄になり、北欧ではヒンメリになった事にも納得。

年配の人に聞くと、「しめ縄でも草鞋(わらじ)でも何でも、作る前に稲のわらをさらに叩いて柔らかくしてから作るのだ」と教えてもらいました。そういえば、土間で横向きの木鎚みたいな道具でわらを叩いている絵を見たことがあったような…。砧(きぬた)と言うそうです。

柔らかいものをさらに柔らかくして使う日本、堅いものの堅さをそのまま活かして使う北欧。人に寄り沿う文化、個性を磨く文化。身の周りにあるものを最後まで活かす文化、新しくて便利なものを次々生み出す文化。静けさや余白に美を感じる文化、にぎやかな音や色に価値を感じる文化…。日本と北欧の対比なのか西洋との対比なのかはわかりませんが、稲わら、麦わらという2種類のものを手で触ることで、文化や気質の違いまでも感じることができました。

数学的な視点も加わって

そうそう。私など、ただ手を動かしていただけなのですが、お一人、探究心旺盛な方がおられました。糸に通すストローに順番に数字を振って、立方体のどの位置に何番のストローが来るのか、実験されたのです。偶数と奇数の対比や、3の倍数との関係など、数学的なルールを探し、共有してくださいました。一緒にやると、いろいろな個性が色どりを作ってくれてどんどんおもしろくなります。

普通、手仕事をしていると、自然に会話が生まれるのですが、この日は集中がいつしか熱中になり、夢中になり…。思いがけず静かな時間の中で集中した手仕事の時間になりました。

もうすぐクリスマス。それぞれの作ったヒンメリが、窓辺で揺れながら冬の光を暖かく家に、そして心に、呼び込みますように。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オキツ 神戸シュタイナーハウス代表 大人クラス担当
小さな勉強会や書くことに関する仕事、普段の暮らしなどを通して自分の考えを深め、表現する。その結果、自由で愛のある社会に近づけるといいな。
ブログ毎日更新中。https://blog.goo.ne.jp/oneby1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お読みくださりありがとうございました! スキやコメントをいただけると励みになります。 サポートは子どもたちの活動費用に使わせていただきます。