[音楽]自分の音楽史Ⅲ:ジャズスティールパンの演奏論 (後編)
前回のこのトピックの投稿から期間が空いてしまい、申し訳ございません。前回、新しいスティックのことやスティックの持ち方、ジャズでのパンの音の出し方について言及したので、今回はアドリブをする上でどのようなことがスティールパンでは重要か、ということを話していきたいと思う。
さて、そもそもジャズのアドリブというのをどのように組み立てるのかということを簡単に説明すると、元々のテーマの曲のキーとコード進行上からメロディラインを再構築するというのがアドリブだと言える(異論はたくさんあると思う)。この再構築をする上で必要になってくる知識が、ダイヤトニックスケールというものであり、大体のミュージシャンはダイヤトニックスケールそれぞれ7つの上にある音(まあ、全部同じ音)を使ってアドリブをとることをインサイドと言っていて、そこから音を外すことをアウトと言っていると思う。そして、音がアウトできる時というのは、曲にもよるが、マイナーのコードの前にある7th (ドミナント7th)の時であり、その時に♭9や♭13th、オルタードテンションなどの音を用いてアウトさせ、いわゆるジャズっぽい音を作り出していると思う。
まあ、そんな基礎知識はこれくらいまでにしておいて、スティールパンでアドリブをとる上で何が重要か、ということが恐らく多くのスティールパン奏者にとっての難題であると思う。まず、大前提として、パンの音はジャズで使う上で、楽器の特徴的にも「うるさい」のである。そのため、あまりソロの最初から細かいフレーズ、手数の多いフレーズを多用しすぎると、まあ、楽器の特性をわかってないよねってなるわけだ。そして、これはスティールパンだけではないが、アドリブをする上では、細分化されたフレーズの区切りを盛り上がる前はしっかりと出し、後半に盛り上がるにつれて、徐々にフレーズを長くしていくという構成を考える必要がある。自分もよくやってしまっていて反省することが多いが、この、アドリブのフレーズを短く短く切っていき、フレーズの休符をしっかりと聴かせてあげるというのは、非常にジャズでアドリブを取る上で重要になるポイントだ。
そして、これもパンの特性によるものだが、パンは叩いたら余韻が残ってしまい、そして、音を伸ばそうとする時はトレモロが必要となってしまう楽器だ。実は、こういう余韻をコントロールできない楽器というのは、前回も書いたが、ジャズでは非常に不利な楽器の特性でもある。そうしたことを念頭に置いた場合、伸ばす音を出したい時どうするか?となると、トレモロを使わないというのが結構大切になる。トレモロを使わないと音伸びたように聴こえないじゃん、というプレイヤーの声もあるかもしれないが、トレモロというのはどうしても打音が出てしまうため、フレーズの区切れとしてカウントされなくなってしまったり、どうしても人間の耳に残ってしまったりするのだ。そのため、この場合は、伸ばす音=休符くらいのイメージでいることが非常に重要になってくる。
次に大きなテーマとなるのは音選びだろう。パンでソロを取る上で一番簡単なスケールはペンタトニックだろう。もちろん、ペンタトニック自体は、ハマればカッコいいスケールだし、うまくそれを活用して良いソロをとるパン奏者もいる。しかし、そればかりに頼っていては、ジャズっぽい演奏というのは出来ない。そこで、結構使える、というか自分的にはよく多用するようになったのがブルーススケールやミクソリディアン♭9♭13thなどといったスケールだ。もちろん、ハマる曲ハマらない曲は存在するが、こういった自分が多用するスケールというのを何種類か決めておくと自分のパン奏者としての色を魅せられるというわけだ(正直、割と生命線でもある)。まあ、それらだけではアドリブは取れないし、お客さんにそのうち飽きられてしまうため、絶対にたくさんの手数を持つ必要があり、同じスケールの中でも沢山のアドリブパターンを持っておく必要がある。そして、それら以外にもインサイドの中での表現方法をスケール的なもの、アルペジオ的なもの、メロディックなもの、ハーモニックなものなどなど、色々な武器を揃える必要があるわけだ。そのため、やっぱり同じスティールパン奏者の演奏から取り入れるより、他の楽器の名手たちのソロパターンを沢山解析して、取り入れていく必要がある(後半へ続く)。
もし、ここまでの記事を読んで、面白いなと思っていただけたら幸いです。本編自体はここで終了で、この先の有料パートは、現在自分が使っている自分のパンやスティックの話、見つけた最新のテクニックなどの踏み込んだお話が入っている「ちょっと長いオマケ」です。応援という意味で、買って読んでいただけたら本当に嬉しいです…!!
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