『ワールドダイスター』 感想

『ワールドダイスター』完走直後の感想です。(ネタバレ無し)

本当に面白かったです。

面白かった点

ストーリー面

 ところでこれを読んでいる方で、今までプロの舞台を見たことがある方はいらっしゃいますでしょうか?
 私は劇団四季の『ライオンキング』を北海道の劇場で、『アナと雪の女王』を東京で見たことがあり、『リトルマーメイド』を北海道で見ようか検討しているところです。

 『ライオンキング』を見た時のことはまだ幼かったのであまり覚えていませんが、『アナと雪の女王』を21歳の時に舞台で見ました。

 私はそこで、それが本当にこの21世紀現在に実在していていいのかと頭を抱えるほど、想像をはるかに超えた、本当に魔法としか思えないような演出や演技力を目の当たりにしました。あのときの衝撃は今でも忘れられません。

 さて、ワールドダイスターの話に戻ります。
 『ワールドダイスター』という作品は、『シリウス』という劇団の門を叩いた【鳳ここな(おおとりここな)】と【静香】の2人が、
 世界規模で演劇が大ブームとなった“超演劇時代”において、
 一握りの"ダイスター”たちの頂点に立つ役者である
 “ワールドダイスター”を目指し、
シリウスで『かぐや姫』や『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』、『ロミオとジュリエット』、そしてクライマックスには『オペラ座の怪人』を熱演していく青春サクセスストーリーです。

 この作品のストーリーで最もフォーカスされ、ストーリー上の一番の面白さとなっているのが、キャラクター達各々による舞台のための「役作り」です。

 劇団四季のようにプロの劇団は完全無欠で魔法のような演技力をその身に持っていますが、それを手に入れるためには、自分が演じる役がどんな人間なのかを完璧に理解・解釈し、トレースしきらなければなりません。

 この作品には「ここな」と「静香」の他にも多くの役者が登場し、それぞれが役に対してどのように解釈し、演じるのか。
 どれが正解ということもない、この問いに挑み、自分の解釈の役を魅せる、その過程の苦悩とその先の表現による熾烈な闘いの様子が、この作品のストーリーの面白さです。

作画面・ボイス面

 また、ストーリーとは関係なく、この作品が唯一無二に面白い点が、作画面とボイス面にあります。
 この作品の主人公である「ここな」と「静香」の声優さんはそれぞれ「石見舞菜香(いわみまなか)」さんと「長谷川育美(はせがわいくみ)」さんという方で、

 石見さんは『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の「椎名真昼」役や、『ウマ娘 プリティーダービー』の「ライスシャワー」役、『推しの子』の「黒川あかね」役など、少し精神的に主張が強くなく、曇りがちなキャラクターを演じることが多い方です。

 また、長谷川さんは『ぼっち・ざ・ろっく!』の「喜多郁代」役や、「86-エイティシックス-」の「ヴラディレーナ・ミリーゼ」役など、比較的特徴がはっきりしていて主張の強いキャラクターを演じています。

 このような方々が、アニメ声優としてではなく、舞台役者として演じるならどのように演じるのか。ワールドダイスターの舞台シーンは、声優の皆さんの舞台声優としての本気の演技を見せてくれます。1人でも知っている声優の方が作品に参加しているなら、間違いなく見るべき作品です。

 舞台シーンは声の演技だけではなく、キャラクターの動きも異様に凝っていて、本当の役者のような細かい体の演技を完璧に再現しています。
 ホームページのスタッフの中には「アクション作画監修 網サキ涼子」の役職名がかなり目立つように出ており、こだわりの強さが感じられます。

惜しい点

面白くなるのは中盤から

 ここまでこの作品をべた褒めしてきましたが、惜しい点もあります。それでも私はこの作品をより多くの人に見てほしいと思っています。

 この作品は、ストーリー上勢いづくのが中盤、4話以降で、それまでは意図的に隠されているストーリーの謎に視聴者の思考が偏ってしまい、序盤は「つまりどういうことだってばよ?」状態が続きます。
 それが4話以降徐々に明かされていくようになると面白さが急加速していきます、ですのでどうか序盤で止めないでくださいお願いします。

ストーリー原案「タカヒロ」、キャラクター原案「Mika Pikazo」のハードル

 最初この作品が発表された時、知っている人の中では有名なこのお2人が作品に関わっていると聞いてとても期待していました。タカヒロさんはダークながらも胸熱ストーリーが面白く、Mika Pikazoさんは一目でわかる圧倒的な画力が特徴的な方です。

 もしその期待で胸を膨らませてこの作品を見たならば、少しずっこけるところは多少あります。でもそれはそれとして、アニメとしてストーリーもキャラデザもすごく良いので是非期待してご覧ください。

Pixiv VISIONS 2023 という、今最前線に立つイラストレーターを特集する画集があり、その巻末にMika Pikazo先生のインタビュー記事があります。そこにはMika Pikazo先生がこれからアニメ界隈に携わっていきたいという趣旨のコメントがあり、おそらくこの作品もその時の視野に入っていた作品だと思います。だからこそ私は、この作品、そしてMika Pikazo先生の次の作品に大きく期待を寄せています。)

ワールドダイスターはいいぞ!

 色々よい点悪い点書きましたが、ワールドダイスターはめちゃくちゃ面白かったです!
 惜しい点も知った上で見るからこそ、最大限面白さが引き出せる作品だとも思うので、これを読んだ方はぜひワールドダイスターを見てみてください!


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