自営業に向いていなかった夫
夫は人生で一度もサラリーマン経験がない。
私と結婚した時から今までずっと同じ仕事をしている。
個人事業主ではあるのだが敢えて言うならば「日雇い」の仕事人生。
結婚当初夫の仕事は4~5社の仕事を仲介業者を通して受けるという形態だった。
仲介業者に見返りとして10%を渡し残りの90%が夫の取り分。
大抵仕事は前日に決まるので前もって空いている日が分からない為副業がしづらい。
それでも収入が少なければ普通は副業を考えたりしそうなものだが夫はずっとじっと仲介業者の電話を待っていた。
ちょうど世の中はバブルがはじけた後で4~5社あった取引先はいつの間にか1社のみとなり夫と同業だった「日雇い」の人たちは誰もいなくなった。
何度か副業を勧めたけれどそれをしている時に本業が入ったらそちらを断らなければいけなくなるからそれは出来ないと言われた。
とりあえず待つ。ひたすら待つ。仕事入ったら行く。
なんという時間のもったいないことよ。
何度も会社員への道を勧めた。
結婚当時夫は23歳だったので今ならまだいくらでも巻き返せると思ったのだが夫は頑として転職に傾かなかった。
結婚して15年近く経った頃とある筋から偶然聞いたピンハネの話。
仲介業者に支払っているのは10%だがそもそも仲介業者が提示する金額がすでにピンハネした後の額というありがちな話。
例えばA社から10万円の仕事が来たとする。
仲介業者はそこから2万円ピンハネをして夫に8万円の仕事だと言う。
夫はその仕事を受けて仲介業者に8千円払う。
本来なら仲介業者が1万円で夫が9万円という仕事を実際には仲介業者が2.8万円夫が7.2万円で受けているという現実。
私はその話を聞いて怒り狂った。
仲介業者を通さない交渉が出来ないか夫に打診した。
私の助言通り夫は得意先に働きかけ仲介業者を通さず仕事をもらえるようになり我が家は多少安定した。
それでも職種的に世の中の景気の波がもろにかぶさってくる。
毎日仕事があるわけではないのでプラプラしている日が週に何日か存在する。
私はずっと雇われ人なので月~金まで朝出て夕方帰るという生活をしていた為帰って仕事がなかった夫がのんびり TVとか見てたりすると無性に腹が立った。
忙しい月はまだいいが閑散期で月の半分以上自宅で仕事を待っているだけの夫を見ると心底ガッカリした。
何度も空いている日を有効活用出来るよう話をしたけれど動かなかった夫に具体的に「例えば得意先の同列企業に本業がない時だけシフトに入れるようバイトをお願いするとか」と話すと本当に夫はお願いをして同列企業へのバイトを決めて来た。
本業がある日は本業に行きない日はバイトに行くので夫は毎朝家を出て夕方帰ってくるというスタイルになった。
私の精神は格段に安定した。
結婚以来ずっと仕事がある時だけ出かけるというスタイルだった夫が毎日仕事に行っているというだけでこんなに心が安定するのだと初めて知った。
平穏な日々が長く続いた今年1月半ば。安定していた私の精神がまた崩れた。
夫曰くバイトがなくなったらしい。
え?毎日出かけてたよね?
私に言いづらかったので朝バイトに行くふりをして出て行ってバイト先で本業の仕事が入るのを待っていたのだと。
リストラに遭ったのに会社行ってきますって出て行って公園で途方に暮れているサラリーマンが脳裏に浮かんだ。
この件についてはすぐに話せる雰囲気を日頃から作っておけなかった私にも責任がある。
ずっと気にしていなかったが改めて入金額を確かめた。
昨年の10月からバイト先からの収入がほとんどなくなり12月には0になっていた。
本当に干されたのは今年から?
昨年の10月には話をされ徐々になくなったとのこと。すでにこの時点で3ヶ月も経過している。
これからどうするの?
どうしようかと考えてる。
50歳近い今までサラリーマンをやったことがない人が出来ることってなんだろう。
私も真剣に考えた。
まだ本業を手放す気はないとのことなので毎日出社が必要な仕事も出来ないし予めシフトが決まっているバイトも出来ない。
ネットを使って何かやってみるとか?
夫が探してきたのはとあるサイトのクラウドソーシングだった。
そこダメだよ。私やったことあるから知ってる。時給換算したら数百円なっちゃうから。
と私が言うより実感してもらった方が早いだろう。
最初は仕事を受けたらスカウトが来た!と喜んでいた夫もすぐにちっとも稼げないことに気づいたようだ。
最近クラウドソーシングの話をしなくなったのでもうやっていないと思われる。
バイト先から話をされてすでに5カ月が経過した。
夫はほとんど毎日家にいる。
本業が少ないことについてはコロナの影響だと言っているが果たしてそれは本当なのだろうか。
夫の業界で使われる物を私の会社でも取り扱っているが売れ行きはコロナと関係なく横ばいだ。
夫の話が本当ならその商品の売れ行きが悪くなっているはずなのでもっと違う要因があるのだと思う。
ふとここまでのことを思い返した。
本業でピンハネしていた仲介業者を介さないことを助言したのも私、バイトすることを助言したのも私。
夫は何一つ自分から考えることをせずここまで来てしまったのだ。
仕事ぶりは真面目で誠実だしルーチンワークは得意だが発想力に乏しく自ら考え動くのが苦手で具体的な試算も出来ない夫。
こんな人は個人事業主をやってはいけない。
会社員なら毎日会社に行き言われたことをやっているだけで出世は無理でもお給料はもらえる。
私の会社でもそんな社員は沢山存在する。
昨今は個人事業主が話題になり実際稼いでいる人も存在するがその稼ぎを続けられるのは日々新しい発想が出来時代の波に乗り続けられるほんの一握りの人だけだ。
一瞬稼げたとしてもそれが時代の波から遅れればまた新たな稼ぎ方を模索しなければならない。
悪いことは言わない。
夫のような言われたことを誠実にやり遂げる「だけ」の人はサラリーマン人生を歩むことを強く強くお勧めする。
何だかどん底にいるじり貧のような文章になってしまったが今現在はそこまで大変な経済状態ではない。
この先本業がずっと現在のような調子ならば本気で考えなければいけないにしても1ヶ月スパンで仕事が極端に少ない月というのは今までも何度もあった。
少なくとも現段階ではお互いが健康で働き続けることが出来れば日々の生活には困らない。
お互いが健康で働き続けることが出来れば。
個人事業主には退職金もなければ厚生年金もない。
それはイコール健康で働き続けることが出来なくなれば即お金に困る日々に転落するということでもあるのだ。
どうして私はまだ若かった20代の頃にもっと積極的に夫にサラリーマンを勧めなかったのだろう。
どうして夫のなんとかするという言葉を鵜呑みにしてこんなに長い年月を過ごしてしまったのだろう。
今更引き返せないところまできて自問自答の日々が続く。
妻(私)編。夫より100倍ショボい職歴。どの口が言う!?的内容。
よろしければ合わせてドウゾ。
私の経験や考え方が少しでもお役に立てたなら嬉しいです(◍•ᴗ•◍)