【がん告知】長くなり申し訳ない。。。
不要不急な外出の自粛と休日割引の中止により高速道路はガラガラだった。
平日深夜のようなトラックの群れにほんの少しの乗用車。
あっという間に妹が手術を受ける病院に到着。
iPhoneのマップナビで来たのだがお約束のように正門へ案内され途方に暮れる。駐車場どこ?
大きな駅前の細い路地をウロウロしながら元来た道に戻り病院敷地を外壁に沿って半周しやっと見つけた。
入口90度。狭っっ!!立駐。狭っっ!!
古い立駐なのだろうか。大きめの車は皆鼻先が線からはみ出ている。
やっとの思いで空いているスペースに停めた。隣のはみ出ている外車に当たるんじゃなかろうかとひやひやしながら。これ出る時どうしよう。。。
うちもファミリータイプのワンボックスカーなのでお約束のように鼻先がはみ出た。
隣の外車も出る時苦労するだろうな。
大学附属病院なので敷地の広さに愕然とする。
どの建物なのか見当もつかないけれどマスクをした老若男女が向かう先が多分そうなのだろう。
目当ての建物に辿りつき平面見取り図で行先を確認しそちらに向かって歩き始めたところで妹と遭遇。
「大きな敷地だね。迷っちゃった」
よし。第一声成功。
妹は近々癌の摘出手術をする。その説明に家族の立会いが必要で体調の悪い母に代わって私が行くことになったのだ。
妹と同居している彼氏も来ているので本来なら彼に任せておけばいいのだが母がどうしてもというので仕方なく。
健康な私が癌告知を受けて落ち込んでいる妹の地雷を踏まないように会話をするのは本当に至難の業で地雷を回避すべく第一声は病気とは関係のないところから始めることに決めていたのだった。
本来なら病院はもっと混雑しているのだと思うがさすがに今の時期ちょっとやそっとの病気の人は自粛しているのであろう。
ソファーには空きが目立ちぎゅうぎゅう詰めになることもなく順番を待つことが出来た。
大まかな経緯は家族LINEで聞いていたので敢えてこちらからは話しかけなかったのだが妹は病気の前情報を更に入れてくる。
ほんと答えられないから勘弁してほしい。辛さを共有は出来ないから。
「そっか」「そっか」と言いながらとにかく聞いた。
執刀医はすごく若そうな女性だった。お肌ピチピチ。
私には20代に見えた。手術の執刀に20代ということがあるのだろうか。18歳から医大に多分6年間通いその後研修医を経て執刀医になるというコースならギリギリ可能か。
順風満帆な人生なのだろうな。ってそこじゃない。妹の方だ。
結果から言うと「開腹しなければ分からない」
そりゃそうだろう。見ないと最終的な判断は下せない。
だから他県の私がはるばる遠路駆けつけて一緒に説明を聞く必要はないと最初から思っていたのに。
4年前健康診断のレントゲンでたまたま引っかかり肺にごく小さな影を認めて摘出手術をした妹。
本来ならもう少し様子を見ましょうといった影の大きさだったのだが我が家は父親が白血病で40歳という若さで亡くなっていることもあったので妹は何でもいいからとにかく先に摘出して欲しいと要望を出しての手術だった。
その後2年に一度再発検査を受けて今回の発見。
当然本人に一切自覚症状はなく癌そのものもごく初期の段階で命に別条のある大きさではない。
2度も癌になってしまった妹には心底同情はするがここまで大騒ぎするほどのことではないと内心私は思っていたのだ。
しかし執刀医の話は私の予想よりも少し悪かった。
癌には良性・部分悪性・悪性の3種類があり今回良性の可能性はほぼないとのこと。
部分悪性かもしくは悪性ということになるが数値の高さからして悪性である可能性の方が高いというのだ。
更に癌になった場所が腫れていて隣の臓器を押している。
こういう場合すでに臓器同士の癒着が起こっている可能性も考えられるらしい。
剥離して癌部分だけを切除するのが理想なのだが上手く行かなかった場合は隣の臓器が傷つくことも充分考えられるし隣の臓器にすでに軽い転移が認められた場合は一緒にそちらも切除することになるとのこと。
その場合今後考えられる可能性としてリンパを介して転移していくということが多々ありそれを回避するべくかなり広範囲にわたってリンパも切除することになるらしい。
これが最悪のシナリオ。
もちろん段階的に命を落とす危険はないけれどこうなった場合日常生活に支障をきたすことも多く今までのような「私健康です」と言った暮らしは難しくなる。
妹は今回それが一番のショックだったようだ。
完全な確定事項として癌の摘出手術がありほぼ確定事項として抗がん剤治療がある。
病院側としては本人のその後の支障より完全な摘出を目指すと言った方針でそれは当然だろうと思う。
手術しました、癌残ってましたじゃシャレにならないだろう。
妹が執刀医に聞く「髪抜けますか」
淡々と答える執刀医「全部抜けます。でも生えてきますよ」
全然フォローになっていないがそれ以上言えることはないであろう。
こういう時健康な家族は無力だ。
私も妹の彼氏も押し黙ったまま口を開くことは出来なかった。
もちろん今後考えられる影響など術後のことで本人が思い至らないことはほぼ聞けたと思うが予想通りの答えしか返って来なかったし現実を突きつけられただけの結果となった。
執刀医の説明が終わり夜勤明けだという彼氏は妹と住む自宅へ帰った。
妹は「お姉ちゃんが行くなら私も実家行く」と言う。
母をコロナから守るべく私がはるばる出向いたのに病院帰りの二人が母の所に行くんじゃ何の意味もないような。
しかし母もまたあまり調子が芳しくない。
かなり病気が進行していて咳で会話もままならない。
数値が高いので新しい薬を今試しているのだがその影響で味覚に障害が出ているらしく何を食べても本来の味とは違う味がするとかで食欲もなくしここ数ヶ月で6キロほど痩せた。
確実に進んでいるのだなと実感する。
コロナに罹らなくてもあとどのくらいの余命があるのか想像に難くない。
コロナじゃないのに家族と会えずにどんどん時が進むのは母にとっていかがなものだろうか。
もちろん母が現在健康であれば年齢を考えて寄らずに自宅に帰るのだが多少のリスクがあったとしても近くに行く用事があれば実家に顔を出しておきたいと思える程度には悪いのだ。
妹が母と夕食を一緒に囲んでくれると言うので私は母の顔を見て早々に帰宅した。
45歳の妹と47歳の私と72歳の母。
永遠に健康で生きられる人なんていないのだからしょうがないのだが完全に健康で皆を見送らなければいけない可能性の高い今かなり精神的にやられる。
もちろん当の本人たちの方がその何倍もダメージが大きいだろうが残される家族も無傷というわけにはいかないのだ。
夫がいて子供がいて辛さを共有出来て本当によかったと心から思った。
いつも読んでくださってありがとうございます。
暗い話ですみません。明日からは通常営業です!
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