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連載『損得を超えた誠実を求めて』

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シリーズを通して、「近代の延長」を生きる我々が先の時代に進むために、認識しておいた方がいいことを書いていきたいと思っています。全体を見た話をする相手が増えてほしいなあと思い、書く… もっと読む
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記事一覧

第六話『生に帰した誠実は何処に』

あなたは「なに」ですか? これまで、「脱近代」「自然観の再発見」「脱主観」など、いろいろなことについて書いてきましたが、この連載も今回が最終回となります。「損得を超えた誠実を求めて」というテーマの下で進行してきたこの連載ですが、最終回は「誠実」について、これまで考えてきたことを心に置きながら、深く探っていきたいと思います。  第二回の『近代の足跡を辿る』で、「人間」という概念も近代以後に欧州で確立された概念であることを述べました。  では、ここで質問です。  あなたは「

第五話『脱主観と共にある未来を』

「脱近代」から見えてきたこと これまでの連載を通して、「脱近代」のための道筋を書いてきました。その過程で、「物事をどの視点から見るのか」ということ自体が非常に重要であることが、だんだんと分かってきました。  第四回の「近代を超克せずしてどこへゆく」では、「良い」「悪い」は視点次第で全ての事象に存在するし、たいしてそこに我々の存在そのものを支え得るほどの意味や力はないのだということを述べました。  しかし、善悪二元論や宗教や何かのイデオロギーのような分かりやすい「意味」たち

第四話『近代を超克せずしてどこへゆく』

「脱近代」への道のり 第二回の「近代の足跡を辿る」で、「近代」を形作った様々な概念たちを見つめました。「人間」「大衆」「主体」「個人」「社会」「幸福」「国家」「自由」「平等」など、これらの概念たちは、近代以後の「社会」を支えるとともに、私たち一人一人の心や思考にも大きな影響を与えています。  「近代」のこういった概念たちは「幻想」に過ぎず、人間が作ったフィクションでしかないという話はこれまで十分してきました。これらの「幻想」が時代に合わなくなって、多くの人を苦しめていること

第三話『日本古来の自然観の再発見』

「豊かな自然」が生んだもの ふと歩いている時に足を止め、あたりを見回すと、綺麗な川が流れているのを見つけました。ふと、視線を上にあげると、大きな山が悠々と腰を下ろしています。そして、後ろを振り返ると、地平線が左から右へ、青ーい海が、そこには広がっているのです。  私たちが生きている、この日本という「島」は、世界の中でも特に豊かな自然環境が存在しています。そして、私たち日本人はその島で、一度も他国に支配されることもなく、脈々と自然と共に生きる文化を受け継いできました。  「

第二話『近代の足跡を辿る』

「近代」を形作った枠組み ヨーロッパでは、17世紀から18世紀にかけて、たくさんの市民革命が起こりました。市民革命は他の言い方だと、「民主主義革命」や「資本主義革命」などと言ったりもします。これは、産業の発達で市民階級の一定数の人々が豊かになり、被支配者からの脱出及び政治参加の意思を表し始め、封建的な社会を打破して、近代社会の構築を求める運動でした。  その後、資本主義社会の成立が進み、社会契約論や自然権が誕生し、この時期は今に至る様々な概念の画期となりました。  資本主

第一話『近代を引きずる現代を見つめる』

現状の大枠を認識してみる 私たちは、小学校・中学校・高校という小さな小さなコミュニティの中で育ってきました。今もまだ、学校では近代の成功体験を引きずって、全体主義に基づいた教育や、社会での「成功」や「幸せ」「勝ち負け」という幻想を追い求め続ける教育をしています。  日本が経済的にも世界的に戦えなくなり、変化が激しく先を読むことが困難になってきたこの時代で、日本は岐路を迎えています。借金は増加の一途を辿り国家の財政は逼迫し、相対的貧困の問題は大きくなってきています。  一極