見出し画像

S-V.League 外国人枠増やして大丈夫?(2)

前回のつづきです。お読みでない方はぜひ。

今回はどうやったら外国人枠を増やしてリーグレベルを上げつつ、日本人選手の出場機会を確保できるかを考えてみたいと思います。が、その前に、まずは現行Vリーグを振り返ってみましょう。若手選手の出場機会は十分だったでしょうか?

そもそも、今までのVリーグは十分だったのか?

個人的には全く十分ではなかったと感じます。ろくに試合に出れず、天皇・皇后杯や黒鷲旗、サマーリーグ要員としてキャリアを終えてしまった選手がどれだけいたか、考えるだけでも少し辛いです。ともかく各チームの選手数が多すぎませんか?

1チームあたりの選手数が多すぎる

1チームの最適な人数って何人なんでしょうか。バレーボールは一度に6人しかプレーできませんから、リベロを入れても最小セットが7人。各ポジションに控え選手を用意するとして、倍の14人いれば十分なはずです。2チーム作れる計算ですから練習にも困らないはずです。

微妙にデータが古くて恐縮ですが、イタリア SuperLega 12チームの構成は、2022-23シーズン開幕時点で平均14.0人、配分はセッター2、オポジット2、リベロ2、アウトサイド4、ミドル4といった感じです。これに対して日本では、V1男子(2022-23シーズン開幕時点)で1チーム平均17.5人でした。イタリアは12チームで168選手、一方日本は10チームなのに選手は175人です。いかに日本のチームは選手が多いかわかりますね。

チームの人数が多いと試合に出られない人が増えることが問題です。控え選手でも学生時代には目立った存在だったはずですから、才能に溢れていることは疑いないわけです。そんな選手が試合に出れず、何年もトレーニングだけに明け暮れるなんて不憫でしょうがない。モチベーションの維持も大変でしょう。なんとかならないでしょうか。

日本はリーグ加盟チーム数が少ない

イタリア男子の場合、Serie A1 (Superlega ) = 12チーム、Serie A2 = 14チーム、Serie A3 = 28チーム、Serie B = 14チーム、Serie C = 24チーム、Serie D = 38チームと、各地にたくさんのチームがあります。さらにその下にアマチュアリーグが地方1部、2部、3部とあって裾野の広さを感じます。一方で日本(男子)の場合は、V1 = 10チーム、V2 = 10チーム、V3 = 11チームの計31チームですから、チーム数は雲泥の差です。

はっきり言って、イタリアの下位リーグのレベルはそれほど高くないと思います。レベルの低いリーグに存在価値があるか?と思うかもしれませんが、実はこれが重要なのです。選手が自分のレベルにあったリーグでプレーしてこそ成長の可能性が開けます。そのためにはレベルが少しずつ違うリーグに細かく分かれていることが重要であり、だからこそ選手は細かくステップアップしながら成長していくことができるのです。高い山には広い裾野があるということですね。

成功のカギは、クラブの数

つまり、スモールチーム化クラブ数増加 こそ、リーグが最重要視すべきポイントだと考えます。当然リーグ機構も考えてはいると思いますが「トップチームの売上6億!5000人アリーナ!」の情報が先行してしまっている時点で、情報の出し方を間違えています。

現在、所属選手が20人を超えるチームもあるなかで、それを各地に分散する。各チーム日本人選手が10人いれば十分でしょう。これでチーム数は単純計算2倍弱に増えるはずです。そして分散して質が落ちたところ、足りないところを外国人で補う。これにより世界的に見ても競争力の高いチームがひしめき合うリーグになる、と思います。これにより控え選手枠が少なくなり、より多くの選手が自分のレベルに合った試合での出場機会を得られるはずです。

ただしチームを増やすのは簡単なことではないので、ここでリーグの介入が必要です。絶対やらなきゃいけないこと、絶対やっちゃいけないことがそれぞれあります。これを間違えずにちゃんとできなければいけません。

新規参入障壁は低く!

SVリーグ構想におけるクラブライセンス制度の制定に伴い「より強固な基盤を、より広い規模に展開」とうたっていますが、ライセンス要件を見ると簡単に新規参入できるような内容になっていません。トップリーグであるSVは別として、Vの基準が厳しすぎます。そもそも「Vと」一括りにしないで、もっと細分化すべきではないでしょうか?これでは裾野が広がるどころか、やめてしまうクラブもあるのではないかと懸念しています。なんなら全国のママさんバレーチームも全部傘下に納めてしまおうくらいの勢いで、リーグ規模拡大に取り組まないといけないのでは?

過密日程はダメ!ゼッタイ!

スモールチーム化の弱点は、疲労・負傷による選手の離脱の影響が大きいこと。そこで絶対やっちゃいけないのは過密日程。日程が厳しければ疲労や負傷を見越して控えメンバーを充実させたくなるもの。勝ちに行く強豪クラブほどその傾向は顕著になるため、能力の高い選手が大量にベンチ・ベンチ外に置かれる可能性が高くなります。

残念ながら現状は超過密日程が予定されており、不安しかありません。年間44試合って正気ですか?黒鷲旗を潰す(!?)らしいですが、それでも厳しい。どこかでミッドウィーク開催とかふざけたことを考えているんでしょうか…現状の土日連日開催でも十分地獄だと思うのですが…バレーボールは週に何試合もできるような類のスポーツじゃありませんよ!

このままではむしろ今よりも多くの選手を確保しようとするクラブがあってもおかしくありません。カレンダーはぜひ見直していただきたい。

移籍の活発化・多様化

現在、各チームが大量の選手を抱え込んでいる要因のひとつに、若く才能のある選手を早いうちに囲い込んでしまい、という狙いがあると思います。移籍市場が活発になれば「自分で育てるより育ってから買った方が効率的」と考えるクラブも増えるはず。選手側からみても、SVリーグ後はこれまでのように引退後は親会社にお世話になるという感覚はなくなるでしょうから、チームを離れることに躊躇いはないでしょう。移籍が活発になる下地は整い始めています。

それでも有望選手を囲っておきたいチームにはレンタル移籍をどんどん活用してもらったらいいでしょう。強豪は若い選手をどんどんレンタルに出して育った頃に戻す、を繰り返すことで、トップチームは常にスリムな状態を保つことができ、若い選手も自分に合ったレベルの相手と試合を通して成長することができます。さらに下位クラブにも才能のある選手を格安で確保できるメリットがあります。実業団スポーツではレンタル移籍は難しかったですが、これからはより容易になるはずです。この点は、今のSVの枠組みのままで効果を期待できるかもしれません。

これに関連して選手契約制度の多様化も検討してほしいと思います。レンタルに出す全ての選手のパス(保有権)を確保しつづけるのは負担が重いですから、複数チームでパスをシェアするなどの仕組みも導入してほしいですね。(サッカー日本代表の久保建英選手がそんな感じでしたよね)

ともかくリーグ・クラブ・選手たちには「SVでベンチよりもVでスタメン」という意識でキャリアを考える必要があります。特にクラブには「保険で多めに選手を囲っておく」という実業団的発想から転換しなければなりません。

登録選手数の上限を設定

てっとり早くスモールチーム化を進めたければ、登録選手数に上限を設けることが有効です。プロ野球では支配下選手登録に上限があり、選手を過度に囲い込みすぎないよう制限されています(育成選手登録という抜け道もありますが)。実業団スポーツの感覚とは真逆ですが、限られた枠をいかにうまく使って勝つかを競うというのも、それはそれでおもしろいと思います。これは次項の編成スタッフの腕の見せ所になります。

編成スタッフの育成

実業団スポーツやプロ野球では、ゼネラルマネージャ(GM)やスポーツディレクター(SD)は(言い方悪いですが)お飾りのような存在です。現状、VリーグチームのGMやSD(というか部長?)は本社から出向してきた人って感じですが、ここにホンマもんの編成のプロを配置する必要があります。

しかしスモールチームでは毎年選手がごっそり入れ替わるので、編成をミスると優勝争いしていたチームがいきなり次の年に降格、なんてことになります。まじでなります。これはGM・SDの責任とされ、海外リーグでもJリーグでもBリーグでも、監督と同じくらい、編成スタッフのクビが飛んでいます。今までのVリーグでGMのクビが飛ぶなんてなかなかないですよね…

じゃあバレーボールチームの編成のホンマもんのプロって誰って言われると、正直浮かびません。つまりバレー界はこれまでいなかった種類の人材を新しく育てないといけないということです。ちなみに欧州サッカーでは、コーチ・監督だけでなくGM・SDなどのクラブスタッフになるためにもライセンスが必要な国もあります。編成スタッフライセンスの制度を整備する、あるいはそこまでいかなくても講習の受講を義務付けるなどして、リーグ主導で人材育成を進める必要があります。

現行の枠組みでは、実現可能性は極めて低い…

スモールチーム化クラブ数増加 で外国人枠を増やしつつ日本人選手の出場機会を確保できるとは思います。とはいえ、現行のクラブ運営のあり方を根本から見直す必要があることから、実現可能性はというと、かなり低いと思われます。

ともかく時間がかかりすぎる

この案の問題点はともかく時間がかかりすぎることです。いきなり全国にポコポコと新クラブが生えてくるはずないのです。実際、JリーグもBリーグもこれに10年近くかかっています。10年後にはよい未来があるかもしれませんが、バレーボールにはサッカーやバスケとは大きく異なる事情があります。

サッカーとバスケは、今でこそ世界での競争力を身につけていますが、リーグ整備計画の時点では弱小国でした。したがって混乱期が多少あってもそれほど問題にはならなかった。しかしバレーボールは、現時点で比較的強いという状況にあります。未来も大切ですが、今を犠牲にするわけにもいかないというジレンマを抱えています。少なくとも10年は待てませんね。したがって(ここまで散々書いてきておいてなんですが)もっと現実的な、速効性のある方法を考えないといけません。

もっと現実的な解決とは?

カギとなるクラブ数増加を実現しつつ、現行リーグの枠組みを踏襲するにはどうしたらいいのか。次回は今回の論点を踏まえつつ、より現実的な(来年からすぐできる)方法を考えたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?