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S-V.League 外国人枠増やして大丈夫?(3)

前回・前々回のつづきです。おそらく最終回。

このシリーズでは、どうやったら外国人枠を増やしつつ日本人選手の出場機会を確保できるかを考えています。前回は スモールチーム化クラブ数増加 により理論上は解決可能だが、実現可能性は低い(速効性がない)という議論をしました。これを踏まえ、今回はより現実的な解決を考えていきます。

各チームがBチームを作ればいい

おそらく一番手軽に問題を解決する方法はリーグに所属するチームがBチームを作って毎週試合をするリーグを新しくつくることじゃないかと思います。

いままで通り活動し、週末に親子試合をすればいい

ほとんどのチームが2チーム分程度の選手を持っているので、選手が足りないなんてことはないはずです。もし選手が少ないチームはBチームリーグに参加しなくてもいいでしょう、そこは柔軟に。選手登録も柔軟に入れ替えられるようにすればいい。Bチームの試合に出たその日に、Aチームのベンチに入ったっていいでしょう。普段は一緒に練習するなど今までと全く同じように活動し、週末はAチームの前座として、対戦相手のBチームと対戦する。ホーム戦は会場・スタッフを共有し、アウェイ戦は一緒に遠征する。現在のリーグの枠組みを大きく変えることなく、問題を解消できます。

コスパがいいし、チーム運営システムも変えなくてイイ

普通に下位リーグを増やしても、注目度の低いチームは単体で存続させることは難しいですが、Bチームなら問題ありません。試合会場はAチームと共有するので特別に費用は必要ありません。せっかくアリーナを借り切ってタラフレックス床材を用意したりするわけだから、1試合だけで片付けてしまうのはもったいないですしね。アリーナだって機材だって1日借り切ってるんでしょう?変わるのは運営スタッフの拘束時間くらいじゃないですか?運営としてもメインマッチのリハーサルと捉えれば有意義だし、控え選手推しのコアなファンも喜ぶはず。

いや1日2試合は長すぎる、という意見もあるでしょうか。もし時間の問題があるなら、Bチームは3セットマッチにするとか、セット勝利を25点から15点に減らすとか、いくらでも工夫できるでしょう。もし親子試合が無理な時は、普段の練習場で無観客試合を配信すればいい。コロナ禍で映像配信とかリモート開催のノウハウがせっかく溜まってきたところなので、無駄にせず活用したらいいですよね(こういうのは続けないとすぐに失われてしまうので)。

過密日程にも強い

Aチームに離脱者が出たらBチームから上げてこれるので、比較的過密日程にも強いという面もあります。まあそもそも論として、コンディション不良や怪我をさせてもOKという話ではないので、過密日程は避けるべきなのですが、リーグ機構は試合を増やしたくてしょうがないみたいなので…

2クラブ運営ではなく、あえてのBチーム専門リーグ

イタリア SuperLega もそうだし、欧州各国の下位リーグにはトップリーグのBチームがたくさん所属しています。2クラブ運営はそんなに突飛な話ではありません。ただ欧州リーグのBチームは独立した別チームとして、下位リーグに参加しますが、それでは別々に遠征をしたり試合会場を用意する必要があり、運営コストが高くつきます。そこでBチームだけのリーグを作って、日程をAチームと完全に一致させ、親子試合ができるようにする。これでできるだけコストをかけずに、チーム数を2倍近くに増やすことができる。Bチームが所属する下位リーグ、V4(SVのBチームリーグ)、V5(V2のBチームリーグ)、V6(V3のBチームリーグ)をすぐにでも整備してほしい!

Bチーム専門リーグ、どんなイイことある?

若手選手を育てる

実力が拮抗した中で実践経験を積まなければ選手は育たないと思います。そのためには、各選手が年齢や経験に関係なく自分の実力に見合ったリーグに常に所属し、試合に出ることが必要で、そのためには細分化されたリーグ構造が必要です。

Bチームでの出場とはいえ、選手にとってAチームと同じアリーナ環境でプレーできるのはうれしいでしょうし、何より実践経験を多く積むことができる。大事なのはエキシビジョンではなく、公式戦であること。お客さんの前でプレーし、そこで残る公式記録が選手のキャリアを作るのです。

前回議論したように日本のチームがたくさん選手を抱え込む背景には、未来への投資として若い選手を囲い込む必要があるからだと思います(このあたりは日本のトップスポーツである野球の悪いところを真似してしまっているかなあという感じがします)。囲い込んで試合に出さないのであれば、才能を潰しているだけです。下位リーグを整備して出場機会を与えれば、才能を囲いつつ、試合経験を積ませることができます。

中堅・ベテラン選手を支える

もう一つ、バレーボールを見ていて感じる違和感があります。それは「選手寿命が短すぎる」ことです。もちろん競技によりますが、アスリートにとって最高の時期は30歳前後だと思います。ところがバレーボールでは20代前半で引退してしまう選手が多すぎる。20代後半まで続けていれば花開いたかもしれないのに… 20代半ばの中堅選手がどんどん試合に出られる環境は重要です。

初めから出場機会を得られない場合もありますが、試合に出ていた選手でも、怪我をしたり調子を落としたりした時に、立ち直るチャンスがもらえずそのまま消えてしまうパターンも多くあります。また女子の場合は、出産後の復帰もサポートしたいところです。Bチームがあれば、まずは下位リーグで復帰し、段階を踏みながらトップリーグを目指すルートを作ることができます。ベテラン勢を支える舞台としても、下位リーグが果たす役割は大きいと思うのです。

指導者を育てる

さらに、指導者の育成にも役に立つはずです。当たり前ですが監督はチームに1人なので、監督を経験できる人数=チーム数です。選手と同じように、監督も実戦を経験しなければ育たないと思うので、そのための舞台を用意する必要があるでしょう。もし監督を志すのであれば、アシスタントコーチを何年もやるより、下位リーグで監督を経験した方が遥かに有益なはずです。女子の場合、サマーリーグの指揮をアシスタントコーチに任せる場合がありますが、そんな感じのことをシーズン通してできたら素敵じゃないですか?さらにBチームであれば、Aチームに帯同することになるので、それを見て学ぶ効果も大きい。「見て学ぶ」→「実際にやってみる」を繰り返すことができるのは理想的な育成環境といえます。

プロ化の土台作りとして

プロチームとなれば編成予算がよりシビアになり、選手の査定も厳しくなるので、イタリアのように少数精鋭でチームを編成せざるを得ないチームも増えてくるでしょう。そうすると今のように試合に出ない若手選手を囲い込んでおくことができなくなります。そうなれば、自然と スモールチーム化クラブ数増加 が実現されるでしょう。その時の若手育成の舞台としても下位リーグが機能するはずです。つまりプロ化の土台作りとしても下位リーグを作る意義があるってわけです。

中継もしやすい

現在、VTV easysports での試合中継はV1のみですが、親子試合で同じ会場となれば下位リーグの中継も容易になります。

まとめ

来年からすぐにできる、外国人枠を増やしつつ日本人選手の出場機会を確保するための方法は、各クラブのBチームを作ってそのリーグを整備することではないか、という話でした。これにより成長中の若手や復活を目指すベテランに出場機会を与えることができ、かつ各クラブが現在の体制から大きな変更をせずに実現できると思うのです。トップレベルを強化するためにもあえて俯瞰し、土台から見直してはどうでしょうか?

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